米国で11月15日(米国時間)より発売されたAmazonの「Kindle Fire」。これまで電子書籍端末だったKindleが、カラー液晶を搭載し、Android 2.3 "Gingerbread"ベースのカスタマイズOSを採用した総合的なメディアタブレットに進化し、199ドルという手頃な価格で提供されている。また、Amazonが日本での電子書籍事業参入を計画しているという噂もあり、日本上陸の可能性も含めて2011年版のKindleは気になる存在だ。そこで米国で手に入れたKindle Fireのレビューを、これから3回に分けてお届けしようと思う。まずはファーストインプレッションから。
これまでのKindle端末と同様、Fireも箱から出して電源をオンにすると、すぐに使えるようになる。通信機能はWi-Fiのみなので、最初にWi-Fiとタイムゾーンを設定する必要があるが、作業はそれだけ。ユーザーのアカウントが登録された状態でウエルカム・メッセージが現れ、すでにKindleを利用している場合はクラウドの本棚の本がホーム画面に並ぶ。
箱のふたを開けて、まず「安っぽくない」と思った。199ドルという価格や、過去のKindle端末からチープな外観を覚悟していたが、そこはうれしい誤算だった。しかし取り出した瞬間に、ずっしりとした重みを感じた。Kindle Fireの重さは413g。同じ7インチタブレットと比べると、BlackBerryのPlayBook (425g)より軽く、GALAXY Tab 7.0 Plus (345g)より重い。ただFireは"Kindle"なのだ。電子ペーパー端末のような"軽量さ"をAndroidタブレットに求めるのは酷だが、Kindleユーザーは「長時間の読書が苦にならない"読みやすさ"」をKindle端末に期待する。表面のガラスは厚く、背面はラバーのような素材で、多少乱暴に扱っても大丈夫そうな安心感はあるものの、この重さとデザインだと長時間の読書や映画・TV番組の鑑賞は、手に持ってではなく、置いて楽しむことになりそうだ。
動画再生でバッテリー連続駆動時間を計測したところ、結果は5時間23分だった。同じ条件でiPadは9時間強だった。バッテリーは内蔵である。まだ第1日目で実際に使い込んではいないが、電子書籍のほか、映画・TV番組、ゲーム、Webも楽しめるタブレット端末としては物足りない数字だ。
iFixitの分解レポートによると、プロセッサがデュアルコアのOMAP 4430で、Samsung製の8GBメモリ、Hynix製の512MB DDR2 RAMと、コストを抑えながら、ある程度のパフォーマンスも引き出せる構成になっている。それでも199ドルは無理のある価格だ。iHSが発売後に行った分解調査によると、Fireの部品・製造コストの合計は201.70ドル。売るほどに、少しずつ損失が積み上がる計算になる。
「200ドル」は米国でモバイルデバイスの売れ行きを左右するラインになると言われている。AppleのiPodも200ドルを切ってから爆発的な成長を遂げた。端末を広く浸透させ、コンテンツで収益を上げる戦略なら、損失覚悟で199ドルという数字にこだわる価値はある。ただFireに関しては、手頃な価格を武器にしようとする余り、AmazonがこれまでKindleでこだわってきた利用体験まで犠牲になっているのではないだろうか。Fireのバッテリー駆動時間やデザインはKindleとして正解なのか、Fireで本や映画、ゲームを快適に楽しめるのか……このあたりを次回は掘り下げようと思う。
【レビュー】Kindle Fireを試す
・第1回 - 199ドル、激安Androidタブレットの第一印象は?
・第2回 - Kindle FireはAndroidコアのAmazonタブレット第1弾
・第3回 - Androidタブレットとして使いものになるか?
(提供:AndroWire編集部)
関連リンク
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・iSuppli調査、Amazonタブレット「Kindle Fire」の製造原価予測は約210ドル (2011年10月03日)
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・Amazon.com