考察

そんなわけで駆け足でCore i7-3960Xの結果をお届けしてみた。ざっくりとした感想で言えば、

  • 概ねコアの性能はSandy BridgeベースのCore i7-2600Kと大差なし。ただし全体的にLatencyがやや増えている。
  • 恐らくはこのLatencyが問題で、IPCが問題となるゲームなどではi7-2600Kにかなり近いスコアは出るものの、追いつくとか追い越すまでは行かない。
  • 一部のMemory Hungryなアプリケーション(例えばLINPACK)などではメモリ帯域の大きさが功を奏するが、これはきわめて一部であって、その他のアプリケーションではあまりその帯域が生きてくることはない。
  • 動画エンコードなどでも既にコア数がOverkill状態。性能を生かすためには、エンコードする側に工夫が必要
  • 消費電力はかなり下がっており、これは好印象

といったところか。

コストパフォーマンス的に言えば、恐らくCore i7-2600KとかCore i7-2700Kを買ったほうが幸せになれるのは間違いない。これはエンスージャストの方にとってもそうである。勿論、ある種の突き詰めたマシンが欲しい人にはお勧めである。たとえばLGA1155だと、メモリは2chまでだから、頑張ってもDIMMは4枚まで。8GB DIMMを買っても32GB「にしかならない」。ところがCore i7-3960XはIntel以外の製品を組み合わせると、8枚の2Rank DIMMを使えるから、8GBなら合計64GBになる。そんな容量を何するんだ? という話は措いといて、そうした構成を手に入れたいというごく小数のユーザーには、この製品はよい選択肢になるだろう。

あるいは最初にも触れたが、400平方mmを超えるダイのCPUが4万後半~5万程度で手に入るというのも、やはりある種の人は非常強い誘惑を感じるだろう。実際Core i7-3960XにDX79SIと水冷キットを組み合わせた場合でも、11~12万程度で収まる公算は高い。これは一昔前のExtreme EditionのCPU単体価格に近かった。水冷とかトップエンドをあきらめれば、7~8万で入手できるのである。

CPUそのものはやはりサーバー向けのワークロードに適したもの、という印象を強く受けるものでデスクトップではたぶん使い切れないだろうが、それでも欲しいという一部の方には最適な製品ではないかと思う。大体このExtreme Edition自身がそうしたニッチ向けの構成なのだから、それはそれで筋が通っていると言える。

以下は余談であるが、Bulldozerの対抗馬としてIntelはずいぶん激しい製品を用意したなぁ、というのが筆者の感じたもうひとつの印象である。Bulldozerもまたサーバー向けのワークロードに適した(というかそっちに最適化しすぎた)CPUなのであって、やはりデスクトップ向けには(3960X以上に)適してないのだが、これはサーバーマーケットでの勝負が楽しみだ、という感じである。難を言えばまだAMDの32nmがぜんぜんこなれてない感じがすることで、これがある程度こなれるとSandy Bridge-E vs Bulldozerは「力技 vs 技」という、ちょっと面白い対決が見られそうに思える。そんな事もいろいろ考えさせる結果であった。

関連リンク

【特集】Bulldozer 世代の8コアCPU「AMD FX」"Zambezi"徹底攻略 - 性能ベンチマーク編 (2011年10月12日)

「Sandy Bridge」完全攻略!! Core i7-2600KとCore i5-2500Kを徹底的に試す (2011年1月3日)

・Intel
http://www.intel.com/