テスト機材とベンチマーク環境

さて、実際の製品である。CPUは当然ながらES品(Photo14)である。パッケージは従来のLGA1367/LGA1155と比べて一回り大きく(Photo15,16)、また厚みもある(Photo17)。Windowsからはあっさり認識され(Photo18)、CPUのPerformance Indexは7.8(Photo19)。ちゃんと仮想12コアが出現している(Photo20)。CPU-Zでもほぼ正しく認識され(Photo21~23)た。ちなみにベースクロックはSandy Bridge同様100MHzになっている。

Photo14: LGA2011から取り付けレバーがデュアルとなった。

Photo15: 一番左のLGA2011は実測で45mm×53mm。中央のLGA1367がやはり実測で43mm×45mm、一番右のLGA1155は37.5mm×37.5mm。

Photo16: 裏面。中央のCore i7-990Xと比較しても、それほどコンデンサの数が増えた気はしないが、大型化しているのが特徴。

Photo17: 厚みの比較。ちょっと判り難いかもしれないが、LGA2011(一番左)のヒートスプレッダは、他の2つに比べて0.5mmほど高さがある。

Photo18: ここでは3.2GHz駆動になっているが、これはBIOS Settingの誤り。このあと3.3GHzに設定した。

Photo19: Memoryは7.9。まぁ当然ではある。相変わらずHDDが足を引っ張っているのはご容赦いただきたい。

Photo20: このあたりは以前のCore i7-990Xと同じく。

Photo21: この画面は正しいのだが、Memoryに関してはSPDの取得などができなくなっている。Core Voltageは1.00V。

Photo22: L1/L2に関してはSandy Bridgeと同じ。L3は20wayというすさまじい物に。

Photo23: こちらはマザーボード情報。正しく取得できている。

これと組み合わせるマザーボードは、「Intel DX79SI」(Siler)である(Photo24)。他に「Intel DX79TO」(Thorsby)という製品も用意される。パッケージは相変わらずSkullを強調したもの(Photo25)。基板はいつもの感じ、に一見見えるのだが、実は随分オーバークロック周りの機能を入れたものとなっている(Photo26)。一方裏面は、かなり頑丈なバックプレートが装備されたほか、謎のコネクタがDIMMスロット下に用意されている。ちなみに今回からCPUクーラーの取り付けは、従来のプラスチック製ジョイントに代えてネジ止めになっている。LGA2011の場合、CPUとクーラーを確実に接触させるためには従来よりもテンションを高める必要があり、従来型のジョイントだとマザーボードが大きく歪んでしまうから、ということだそうだ。バックプレートはこのネジを受け止めるため、かなり大きなものとなっている。バックパネルはUSB 1.1/2.0×6、USB 3.0×2、LAN×2、IEEE1394×1、BIOS S/W×1と比較的シンプル(Photo28)。CPUへの電源回路は8phase構成(Photo29)である。CPUソケットは、これまでに比べると独特な形になっている(Photo30)。

Photo24: X79のReference Designの場合、各Memory Channelは2RankまでのDIMMが装着できる。なので、1RankのDIMM×2か2RankのDIMM×1という構成である。実際試しに2RankのDIMM×2を装着したら起動しなかった。ただこれはReference Desingの問題であって、例えばASUSTeKのROG Rampage IVシリーズは2RankのDIMM×2が許される。要するにチップセットは対応しており、あとはマザー側の問題である。

Photo25: 遂に内部が見えるようなパッケージに進化。ASUSTeKあたりのハイエンドのパッケージに倣っているとしか思えない。

Photo26: 相変わらずドクロの目が光る。ちなみに実売価格は不明だが、Intelによれば「1万5~6千円になるのではないか?」という話が。

Photo27: 実はこのコネクタに関してはマニュアルで一切言及がなく、シルク印刷も"XDP1"としかないのだが、場所とか配線を考えると、ひょっとすると外部からリモートでオーバークロック設定を変更するためのI/Fなのかもしれない。

Photo28: ヒートシンク類の高さも控えめで。大型クーラーの取り付けはそれほど難しくない。むしろCPUの両脇にあるDIMMスロットに挿すメモリの方が問題かも。

Photo29: 10phaseを平気で超える最近のハイエンドマザーボードの電源回路を見るとシンプルにすら思えるが、実のところこれでも十分多い気がする。

Photo30: 端子ピンは大きく2方向に分割。

オンボードデバイスとしては、まずSlot 1/2の間にPCI ExpressのLane SwitchとしてPI3PCIE3415が搭載されている(Photo31)ほか、電源制御回路としてはIRF(旧CHiL Semiconductor Corporation)のCHL8328を搭載する(Photo32)。Photo25で1本目と2本目のPCIeレーンの左に、Intel 82579LM GbE PHYIntel 82574L GbE Controllerが置かれている(Photo33)ほか、その脇には8.2ch HD Audio CodecとしてALC892が配される(Photo34)。また引き続きIEEE1394のコントローラが搭載されるのだが、従来のTIのコントローラからVIAのVT6315Nに切り替わったのはちょっと興味深い(Photo35)。

Photo31: PCIe Gen3に対応した4レーンの2:1 MUX。4つで16レーン分という計算になる。

Photo32: IntelのVR12とAMDのSVI/PVIに対応する、8phaseに対応した電源制御IC。CHiL Semiconductor Corporationは今年2月にIRF(International Rectifier)に買収された。

Photo33: 82579LMはX79のGbE MACに接続されてFirst LAN、82574LはPCIe経由でSecond LANとなる。

Photo34: 昔はSigmaTelとかAnalogDevicesのHD Audio Codecを搭載していたが、このところはRealtekのものばかり。それで問題ない、という事なのかもしれないが。

Photo35: 従来はTIのTSB43AB2xxシリーズをオンボードで搭載していたが、これはPCIでの接続になる。TIはPCIe対応のXIO22xxxシリーズもラインナップしているが、IEEE1394自身のニーズが下がっているので、安価なVIAの製品でいいということなのかもしれない。

マザーボード下側には多数のLEDが並んで、動作状態をリアルタイムで確認できる(Photo36)ほか、バックパネル用のUSBコントローラも別途搭載している(Photo37)。ところでマザーボードにはSATA 6~SATA 9までのパターンが残されている(Photo38)のは、DX79SIの設計開始時にはまだX79がPatsburg-Dベースになる可能性があったためと思われる(Photo38)。

Photo36: この一列に並んだ部分で、大雑把に「何が実行中か」とか「何が問題か」が判る。

Photo37: 詳細なステータスはこの2桁の7セグLEDで。右にルネサスエレクトロニクスのμPD720200AF1があるが、これはその下の水色のコネクタ経由でバックパネルもしくはフロントパネル用。

Photo38: なので、当初はここにSATAコネクタが最大10個並ぶ予定だったと思われる。

さて、次に水冷キットのRTS2011LCであるが、内部パーツはこんな具合(Photo39)。取り付けた後は、こんな具合に背面ファン部分にラジエターを取り付ける形になると思われる(Photo40)。CPUの周りもすっきりと収まるし、使った感じで言えば放熱特性もよく、その割りに静かだった(Photo41)。

Photo39: 殆どのパーツはLGA1155/LGA1367用で、LGA2011に使う場合は本体とファン、丸型のプレート、短いほうの黒いネジだけである。

Photo40: それほど重量は無いので強度的にはあまり心配はない。

Photo41: ちなみにマニュアルでは、まず金属プレートをネジで止めて、そこに水冷ヘッドを捻じ込む様に説明されているが、これではうまく装着できなかった。最終的には先に水冷ヘッドと金属プレートをかみ合わせておき、その状態でネジを止めるのが一番楽だった。

最後に付属品だが、マニュアルとかCD、マウスパッド以外にバックプレートとSLI/Triple SLI用のブリッジ、それと温度センサーが付属してくる(Photo42)。

Photo42: 温度センサーは6GのSATAポート脇にある端子に接続して、好きな場所の温度を測定するのに利用できる。

ということで、これを使って「Core i7-3960X」の性能を試してみた。比較対象としては、Core i7-2600K(Core i7-2700Kの手配が間に合わなかったのでご容赦いただきたい)と、Core i7-990Xである。詳細なテスト環境は表1に示す通りだ。

■表1
Core i7-2600K Core i7-990X Core i7-3960X
M/B ASUSTeK P8Z68-V PRO Intel DX58SO2 Intel DX79SI
BIOS BIOS Version 0902 SOX5820J.86A.0876 SIX7910J.86A.0280B
Driver Intel INF Driver 9.2.0.1022
Memory DDR3-1600 CL9 4GB×2 DDR3-1066 CL7 2GB×3 DDR3-1600 CL9 2GB×4
Graphics NVIDIA GeForce GTX 580 1.5GB Reference
GeForce 285.62 Driver
HDD HGST Deskstar HDP725050GLA360 500GB×2 (RAID0, NTFS)
Intel Rapid Storage Technology Driver V10.6.0.1002 Intel Rapid Storage Technology enterprise Driver V3.0.0.1112
OS Windows 7 Ultimate 64bit+Service Pack 1 日本語版
.NET CLR 2.0.50727
Java 1.6.0_27 / Runtime 20.2-b06

ちなみにDX79SIに搭載されるX79の場合、RAID 0を構成する場合Windows 7のInbox Driverでは対応できないため、Rapid Storage Technology enterprise Driverが必要になる。実は今回このDriverが提供されていなかったのだが、何故かIntelのDownload CenterではDX79SIがラインナップされており(Photo43)、この下にRapid Storage Technology enterprise Driverを含む全ドライバと最新BIOSが提供されていた(Photo44)。このためこちらからドライバを入手したことを付記しておく。

Photo43: 言うまでもないが、ここは誰でもアクセスできる場所である。そういう意味では、製品発表前にIntelが堂々と製品情報を公開してくださったというわけである。ニュースサイトなどで話題になっていないのがむしろ不思議であった。

Photo44: 今回はBIOSに0820B(β)を利用したが、既に製品版の0821が公開されている。ただ今回はボードそのものもES版の扱いなので、0820Bのままテストを行った。

また搭載メモリ量をこれまでの4GBから8GBに増やしたが、これはDX79SOでそれぞれに2GBのDIMMを装着すると8GBになってしまうからで、これにあわせてCore i7-2600Kは4GB×2の構成とした。この場合、3chのCore i7-990Xが6GBでやや不利になるのだが、6GB→8GBで大きく性能が変わることも無いだろうと判断した。

なお、以下のグラフにおける表記は、

・2600K : Core i7-2600K+ASUSTeK P8Z68-V PRO
・990X : Core i7-990X+Intel DX58SO2
・3960X : Core i7-3960X+Intel DX97SI

となっている。

ベンチマーク結果

以下、いつもの様にベンチマーク結果をご紹介する。ちなみに今回は基本的に同一アーキテクチャということもあり、RMMAを使っての分析は省かせていただいた。