Microsoftが描く未来とは

将来的ビジョンを持たないIT企業は存在しない。日進月歩の歩みで新技術が登場するコンピューター/ITを取り巻く環境に追従し、トップを目指すには、常にイノベーターであり続けなければならないからだ。Microsoftはイノベーターの地位に相応(ふさわ)しい否かは別にして、同社が例年行っている未来に向けたコンセプト動画が今年も公開された(図03)。

図03 同社のMicrosoft Office担当役員であるKurt DelBene氏名義で投稿されたブログ記事

約六分のコンセプトビデオのタイトルは「Productivity Future Vision (2011)」。直訳すると"生産性の将来的ビジョン"となる同動画では、名刺サイズの透明なデバイスでスケジュールを確認する場面や、オフィスに設置したコンピューターでグラフ操作をスマートに行っている場面などが描かれている(図04~07)。

図04 手のひらサイズのカードへ指による操作でメモを取るシーン(動画より(

図05 同じく名刺サイズの透明なカードでスケジュールを確認するシーン(動画より)

図06 折り曲げ可能なタブレッツサイズのデバイスで、気になる情報をクリッピングするシーン(動画より抜粋)

図07 コンピューターにグラフ情報を立体投写し、腕を振ってアプリケーションに貼り付けるシーン(動画より抜粋)

基本的に既存のデバイスは登場せず(テンキーレスのキーボードは映っていたが)、将来こうあって欲しいと思う近未来的デバイスばかり。人々は生活や仕事のなかで、それら近未来的デバイスを使用し、どこにいても情報にタッチできる世界だ。

いずれもビジネスシーンが強調されているのは、公式ブログの投稿者がMicrosoft Office担当役員のKurt DelBene(カート・デルベーン)氏だからだろう。同氏のブログでも「ビデオで描かれている未来は、実際の技術に基づいており、音声認識やリアルタイムコラボレーション、データの視覚化は既に存在している技術」と述べている。

ここでもう一つの動画をご覧頂きたい。こちらも、同じチームで作成された動画で、タイトルは「Microsoft's Concept of 2019 Will Look Like」。直訳すると"Microsoftが考える2019年"となるように八年後の未来を描いたものだ。

ガラスの向こうに相手がいるかのようなビデオチャットとリアルタイム翻訳。また、その様子を飛行機上から確認する女性。オフィスシーンでは、ディスプレイ化したガラスに映し出されるオブジェクトをジェスチャー操作し、卓上のタッチデバイスで拡大縮小。また、グラフの編集も行っている(図08~11)。

図08 タッチデバイスを用いたビデオチャットとリアルタイム翻訳が行われているシーン(動画]より抜粋)

図09 機上の女性が学校にいる子どもたち(図08で登場)の行動をデバイスで確認しているシーン(動画より抜粋)

図10 ディスプレイ化したガラスに映し出されるオブジェクトをジェスチャー操作するシーン(動画より抜粋)

図11 卓上にはタッチデバイスが備えられ、拡大縮小やグラフサイズの変更を行っているシーン(より抜粋)

この動画はMicrosoft Researchや本社で開発中の新技術を伝えるブログ「Next at Microsoft」の記事で紹介されたものだが、各所でMicrosoft Researchで研究中のアイディアが盛り込まれているという。例えば図08で映し出された“魔法の窓”は、同社が研究開発中の可動型マルチビューディスプレイや可動型自動ステレオ3Dディスプレイといった技術をビジュアル化したものだ。

いずれの動画も登場する近未来的なデバイスにあこがれを持ち、実際に手にしたくなるが、過去のPDA(Personal Digital Assistant:携帯情報端末)PDAの進化をひも解けば、決して遠い未来ではない。1996年に登場したPalm(旧PalmPilot)や2007年のiPod touch/iPhoneのように革新的でユーザビリティに優れたデバイスが登場してきたように、動画に映し出された世界は我々がいつか手にできる未来なのだろう。

阿久津良和(Cactus