山梨大学大学院医学向学総合研究部・KAI-R

山梨大学大学院医学向学総合研究部で開発中の装着型のロボットは、歩行リハビリテーション支援用「KAI-R」(Knee Assistive Instruments for Rehabilitation)だ(画像36)。股関節やヒザ関節などの人工関節置換手術を受けた人のためのもので、上半身の装備もあるが、基本は腰から下に装着するタイプである。

画像36。山梨大学大学院医学向学総合研究部のKAI-R。人のヒザの動きに追随できるよう、非円形ギアと溝カムを組み合わせたロールバック関節機構を採り入れたヒザ関節を有している点が大きな特徴

特徴は、従来の装着型歩行アシストロボットでは、駆動の困難さから実現していなかったというヒザ関節機構へのロールバックの組み込みが実現している点だ。人のヒザ関節は、一般的なイメージだとロボットのヒザと同じように、中心に軸が1つだけあって、ヒザから下はその単軸でもって回転している感じだと思うが、実はもっと複雑な動きをしているのである。いわば軸が後ろにずれていくような仕組みを持っているのだ。ちなみに、痛みを伴わないのでわかりにくいが、実は正座をする時はヒザ関節が軽い脱臼した状態になっているそうである(だから習慣のない欧米人には痛く感じる)。

そのため、単軸で稼働するロボットのヒザ関節とは動きが合わず、階段昇降などヒザが大きく屈伸する動作を行う際は特に違和感が発生し、場合によっては装着ズレの問題を引き起こしてしまっていた。

そこで同研究室では、非円形ギアと溝カムを組み合わせたロールバック関節を直接駆動できるカム式回転すべりヒザ関節機構を新たに開発し、KAI-Rに搭載したというわけである(画像37)。

画像37。左は一般的な単軸型を採用した駆動機構で、右は人のヒザの動きを再現したロールバック対応型の駆動機構。山なりの非円形ギア、中央の軸が左右に動ける点、そして長い溝の方も単純な弧を描いていないなど、人のヒザが驚くほど複雑な動きをすることがわかる