英経済紙のFinancial Times (FT)がiOSアプリのコンテンツリーダーの代わりにWebブラウザから閲覧可能なHTML5版コンテンツリーダーを作成してサービスの提供を始めていることは、以前にもご紹介した。これは、AppleがApp Storeにおけるコンテンツの課金ルールを縛ろうとするのを嫌い、コンテンツ配信手段を増やすのが狙いだとされていた。そしてこのたび、FTが正式にiOSアプリを同ストアから削除し、Appleのルールに縛られない体制に一本化した。

Financial TimesのHTML5版コンテンツリーダー

FTのリーダーアプリがApp Storeから消えたことは一部で話題となっていたが、英ReutersによればFT側でも正式にApp Storeから同アプリを削除したとのコメントを発表しているという。FTは6月初旬、「app.ft.com」という通常のFT.comとは異なるドメインでサービスを開始しており、ここでのコンテンツは、ブラウザ経由の閲覧において、iPadなどのタブレット上でアプリから閲覧するのと同様の操作感やユーザーインターフェイスが実現できるよう工夫されている。app.ft.comを用意した意図の1つは、アプリを通してコンテンツ配信を行う場合に課金方式としてApp Storeを通すオプションを必ず実装すること、そしてApp Store経由での配信では中間マージンとして売上の3割を徴収するといった方針をAppleが示したことによるという。

Washington Postの子会社であるWebメディアのSlateが、広告収益悪化から従業員の大量解雇を行うなど、コンテンツ事業者側も広告収入だけに頼った運営は厳しくなりつつある。こうしたなかで貴重な課金オプションをApple1社に握られる体制を嫌がる事業者は多く、FTの試みはその先駆けとして注目を集めていた。このほか、アダルトコンテンツという特性からApp Storeの審査を通る見込みがなく、最初からHTML5版サービスとしてコンテンツの提供を行うiPlayboyの例もあり、今後も各事業者の試行錯誤は続いていくことだろう。