電波から電力を回生

圧電素子や振動素子は物理的な素子を用いた発電だが、日本電業工作のブースならびに東京大学 川原研究室のブースでは電波利用技術「Rectenna(rectifying antenna:レクテナ)」を活用して電波を動作エネルギーとして用いようという試みの紹介が行われている。

レクテナは整流回路を備えたアンテナで、これによりアンテナに誘導された電流を変換する形で電力を得る。日本電業は、2009年に日本の宇宙基本計画にも盛り込まれた宇宙太陽発電所(SPS)構想にも関わっており、そうした中の1つの流れとして、今回は東京タワーから発信される地デジのUHF帯の電波を会場で受信し、電力に変換するアンテナと、2.4GHz帯の無線LANルータから送信される電波を受信するアンテナの紹介を行っている。

いずれのアンテナの動作利得も8dBiで、地デジ用アンテナでは東京タワーの近くで6mW程度の発電を実現しているという。電波法などの問題もあり、なかなか活用が難しいとのことで、同社ではこうした技術に興味を持ってくれる企業と連携を図るなどの形で、ビジネスに繋げたいとしていた。

地デジから電力を回生するために開発したレクテナ

こちらは無線LANルータから出てくる電波から電力を回生するために開発したレクテナ

東京タワーからの発信される電波でどの程度の電力を回収できるかの試験結果

一方の川原研のブースではジョージア工科大学と連携して進めている研究成果の説明を行っている。同研究室のポイントはレクテナを印刷法で作製することにより、低コスト化を図ろうとしている点。こうして作られたアンテナ(マイコンにはTexas InstrumentsのMSP430とCC2500を利用)を用いて、東京タワーから6.5km離れた地点で40秒に1回、センサデータを無線通信による転送を確認したという。

印刷法で銀インクをアンテナおよび配線として形成したもの。これで東京タワーから6.5km離れた地点でのセンサデータの無線通信を達成したという

将来的には有機半導体を用いることで、半導体素子そのものも印刷法で実現することもできるようになるかもしれないとする。

また、同研究室はセンシングを中心とした研究室であり、電磁共鳴式マルチホップ無線電力伝送などの研究も行っている。これは、室内などの空間において、さまざまな電気機器に無線電力供給を行おうというもので、これまでの電磁誘導や電磁波を用いた無線電力伝送方式と異なり、数mまでの中距離において効率と安全性に優れた電磁共鳴方式を用いるもの。

具体的にはコイル状に巻いた送受信アンテナ(共振器)を部屋の床、壁にタイル状に敷き詰め、そのコイルのオン/オフで任意の場所にのみ、電力を供給しようというもの。複数のコイルに電気を流すと、その共振により場所によってエネルギー密度が異なることに着目したもので、これにより必要な場所にのみ高い電力を供給することが実現できるようになるという。

電磁共鳴式マルチホップ無線電力伝送方式の概念(出所:東京大学 浅見・川原研究室Webサイト)

近接場を使うアンテナ(太さ1mmのポリエステル銅線)(出所:東京大学 浅見・川原研究室Webサイト)

パワーモジュールのフルSiC化による小型化、省電力化を目指す

最後にエネルギーハーベスティング関連ではないが、ロームがSiCデバイスの展示を行っていたので、そちらを紹介しておきたい。

同社は2010年5月よりSiCを用いたショットキーバリアダイオード(SBD)の量産を開始しており、同年12月にはSiC DMOSの量産も開始している。今回はこれら2製品と現在開発を進めているSiC トレンチMOSFET(300A駆動品)の紹介を行っている。

同トレンチMOSFETは開発品ながら、安川電機がロームのトレンチMOSFETを搭載したEV用モータドライブ「QMETドライブ」として「SiC-QMET」を開発したことを2011年1月に発表している。同トレンチMOSFETは、SiC DMOSに比べてさらに1/3~1/4の低オン抵抗を実現しているほか、200℃を超す高温での動作も可能となっている。

ロームのSiC SBDのウェハ

ロームのSiC DMOSのウェハ

ロームのSiC トレンチMOSFETのウェハ

ロームとしてはパワーモジュールのフルSiC化を目指しており、トレンチMOSFETについても数年以内の実用化を目指した開発を進めているという。