宇宙航空研究開発機構(JAXA)の広報施設「JAXA i」が2010年12月28日、閉館した。東京・丸の内にある同館は、JAXAの情報発信拠点として、2004年9月14日にオープン。東京駅から徒歩1分という立地の良さもあり、開館以来、約122万人が訪れたが、今年4月の事業仕分け第2弾によって「事業の廃止」が決まっていた。
JAXA iが入っていたのは、商業施設「丸の内オアゾ」の2階。面積は決して広くはないが、常設展示としてLE-7Aエンジンの実物などを見ることができたほか、主にJAXA職員によるトークショーなども毎月開催されていた。ロケットの打ち上げ時にはパブリックビューイングも行われ、宇宙ファン同士の交流の場としても定着していた。
しかし、事業仕分けでは「年間1億円の費用について、納得のいく合理的説明がなかった。東京丸の内だけに常設するという、立ち寄り客を中心とした広報ではなく、より効果的な広報のあり方を再構築すべき」として、「事業の廃止」が決定。評価者からは、筑波宇宙センターや日本科学未来館などに統合すべきとの意見が相次いだ。
最終日となったこの日、JAXA iの直下にあるスペース「○○(おお)広場」では閉館イベントが開催。通路にはみ出すほどの大勢のファンが詰めかけた。
出演者について、事前には「理事長及び職員」としか触れられていなかったのだが、当日、立川敬二理事長とともにステージに現れたのは、なんと星出彰彦宇宙飛行士と小惑星探査機「はやぶさ」の川口淳一郎プロジェクトマネージャ。JAXA iの最後を飾る「職員」は、なんとも豪華な顔ぶれとなった。
JAXA iは、最終日も通常通り夜8時まで営業。最後の来場者が退場すると、スタッフが玄関に並び、トークショーの後も最後まで残っていたファンに挨拶。ドアが閉まると、「ありがとう」の声が飛び交い、しばらくの間、拍手が鳴り止まなかった。
閉館後、JAXA iは解体。LE-7Aエンジンなどの展示品は、筑波宇宙センターなどに運ばれて、引き続き展示に活用する方針。
立川理事長の話「今後も何らかの形でPRの場は設けていきたいが、今のところ、都内に代替となるような新しいものを作る予定はない。筑波宇宙センターなど、各地の事業所にある展示スペースを活用して、お金をなるべくかけないようにやっていきたい。イベント会場まで出かけていってアピールする、全国行脚のようなことも検討する」
川口プロマネの話「ここで本当にJAXA iを閉じていいのかなという思いは正直ある。気軽にふらりと来て、宇宙開発の最前線に触れることができる場所は、何ものにも変えられないものだった。決して箱物を作れというつもりはないが、国として科学技術を大事にするのであれば、次世代の人材を育てるための施設は必要。日本にもスミソニアン博物館のような場所が必要なのではないか」
星出宇宙飛行士の話「JAXA iのスタッフの方には大変お世話になり、東京事務所に来るときにはいつも顔を出していた。今日もこれだけ多くのお客さんが、立ち見で話を最後まで聞いてくれた。非常にアクセスの良い場所だっただけに、閉鎖されるのは大変残念」