米T-Mobile USAは11月2日(現地時間)、同社の"4G"サービスエリアを拡充し、さらに同社初の4Gネットワークに対応したAndroid端末「T-Mobile myTouch 4G」と4G対応ネットブック「Dell Inspiron Mini 10 4G」を発売開始したと発表した。「全米最大の4Gカバーエリア」をうたう今回のT-Mobileの発表だが、実はベースとなっているのは"3G"の「HSPA+」技術であり、「速度面では4Gと同等」というのが同社の主張だ。業界のライバルらは同社のこの発表と宣伝広告に異論を唱えており、今後「4G」の定義を巡って一悶着ありそうな流れだ。

全米ではVerizon Wirelessを筆頭に、AT&T、Sprint Nextel、T-Mobileの4大キャリアがシェアの大部分を占めているが、4G戦略ではVerizon WirelessとAT&Tが2010~2011年内でのLTEでのサービスインを表明しているほか、Sprintは提携パートナーであるClearwireのWiMAXネットワークを4Gサービスとして利用している一方で、T-Mobileのみがこれら新技術を用いた4Gサービスの展開プランを打ち出せない状態となっている。そうしたなか、同社は自身の持つ3Gネットワークを「4G」の名称で大々的にアピールし始めており、さらにmyTouch 4Gの発売に合わせて「全米最大の4Gネットワーク」との広告を打ち出し始めた。下のビデオはT-Mobile公式CMで、とかく「遅い」といわれるAT&Tのネットワークを"背負った"iPhone 4を揶揄しつつ、最後のほうでこの「全米最大の4Gネットワーク」をうたっている。

もともとT-Mobileは自身のHSPA+サービスを「4G並みの速度」といううたい文句でアピールしていたが、今回の発表では正式に「4Gサービス」と明言している。T-Mobileの主張は「myTouch 4Gのダウンロード速度は最大12Mbpsで、速度的には4G技術と同等」だからであり、「"4G"が速度のことを指す今日ではT-Mobileのサービスは"4G"といっても差し支えない」という。実際、Verizonが年内に提供を開始する予定のLTEサービスでのダウンロード速度は5~12Mbps程度といわれており、速度的には初期のLTEとほぼ同等のパフォーマンスを持っている。

だがWiMAX市場に早期参入したことで、4Gサービスで全米トップを走るSprintはこれに強く反論しており、米Associated Press(AP通信)では、「4Gは技術に根付いたものであり、速度だけの話ではない」という同社のコメントを紹介している。このT-MobileのCMについて訴訟やクレームを行うかの具体的なアクションは提示していないものの、問題ある行為であるとの認識は崩していない。Wall Street Journalも同様に、Sprintの4GビジネストップであるMatt Carter氏の「T-Mobileは4G戦略を棚上げにし、自身の3Gネットワークに隠蔽を行っているだけだ」というコメントを紹介している

またCMで揶揄されたAT&Tも反論のコメントを出している。AT&TはT-Mobileと同じHSPA+ベースのネットワークを全米展開しているが、「第3者による調査でもAT&Tが全米最速のネットワークを持っており、一部ではSprintのWiMAX 4Gネットワークより高速だというデータが出ている」という公式声明を出している。LTE導入は次なるステップであり、「HSPA+ = 4Gではなく、ましてやそれがAT&Tよりも高速だというのは間違いだ」というのが同社の主張だ。また、PC Magazineの3日の報道によれば、現在AT&Tが展開を行っている次世代HSPA+では14.4Mbps以上の速度を出すことが可能で、T-Mobileのベース技術を大きく抜くことになる。

いずれにせよ、T-Mobileは「4G」という言葉の定義を巡ってユーザーをミスリードしている可能性があり、今後改めて検証や業界内のルール制定などが行われることになるかもしれない。