これまで「iPod touch」は、目に見えるハードウェアの進化が比較的少なかったといってよいだろう。もちろん、新しいモデルが登場するたびにプロセッサや通信デバイス、各種センサなどを強化/搭載しているわけだが、iPod nanoが動画撮影機能を搭載したり、iPod shuffleがコントロールパッドからVoiceOver機能に移行したりというほどの変化はなかった。
いずれも、左が第3世代のiPod touch、右が新しい第4世代のiPod touch。一回り小さくなってはいるものの、それほど大きな印象の違いはない。第4世代の底部、Dockコネクタの隣にマイクがあるのがわかるだろうか |
そんなiPod touchの他のラインナップにない魅力といえば、アップデート&パーソナライズができるということだろう。iPod touchがほかのポータブルオーディオプレイヤーと一線を画す点、それがソフトウェアのバージョンアップだ。
初代iPod touchの登場時点では、ミュージックやビデオといった基本アプリのほか、SafariやYouTube、カレンダー、時計、計算機などが用意されていたものの、今ほど多様なアプリがあるわけではなかった。しかし、Apple提供のものだけでなくサードパーティ製のものも含めてアプリが充実し、機能が強化されていった。それを考えると、これまでのiPod touchでは、見た目や購入時点における単体製品としての機能だけではなく、内部、とくにソフトウェアの強化を通じて製品が進化してきたといえそうだ。
そんなiPod touchがついに導入した新しい機能がカメラ機能だ。今回の発表前にもさまざまな情報が飛び交っていたものである。そして実際にこの機能が搭載された結果、その機能を歓迎するユーザーだけでなく、あまり高い評価を与えないユーザーもいるのが面白い。
ディスプレイ上部に配置されたフロントカメラの解像度は、VGA(640×480ドット)。おもにビデオ通話(FaceTime)などに利用する |
上が第3世代、下が第4世代のiPod touch。第3世代ではWi-Fiアンテナがあった位置にバックカメラが搭載されている |
第4世代iPod touchに搭載されたカメラは、フロント/バックの2つのカメラのうち、解像度の高いバックカメラでも960×720ピクセル(約69万画素)。iPhone 4に搭載されたカメラが500万画素なので、その差は大きい。iPod touchに搭載するカメラ機能はこれぐらいで十分と判断したのか、それとも設計上ギリギリのラインだったのかはわからないが、このハードウェア面だけを見れば、第4世代iPod touchのカメラ機能に多少の失望を感じるユーザーがいるのも理解できなくはない。
だが、先にも述べたとおり、iPod touchの進化においてはソフトウェアのアップデートとパーソナライズが大きな意味を持ってきた。この観点から今回搭載されたカメラ機能を見れば、たんにiPod touchで写真やビデオを撮れるというだけでなく、カメラ機能を利用したアプリという新たなカテゴリへの進化の可能性が開かれたことになる。この点を評価するユーザーは、おそらくカメラ搭載を歓迎し、高く評価するだろう。
また、バックカメラのビデオ撮影機能は720pで最大30fpsと、iPhone 4と同等の性能になる。ということは、iPod touchのカメラは、静止画撮影用のカメラというよりもビデオ撮影用というニュアンスが強いものと見るべきなのかもしれない。