「Internet Explorer 9」ベータ版

HTMLに代表されるWeb技術の進化は実に速い。光陰矢のごとしと言われるように、新しいWeb技術が発表され、既存のWebブラウザは追従するだけでも一苦労だ。Windows XPの栄華と共にシェアを大幅に拡大した「Internet Explorer 6」がリリースされたのは約10年前。Windows Vistaと共にリリースした「Internet Explorer 7」は、タブブラウジングやフィード機能などを能動的に搭載したが、既にサードパーティ製Webブラウザが搭載している機能が大半を占めていたため、目新しさはありつつも、Webブラウザ市場のシェアを増すには至らなかった。

Windows 7と共にリリース(単独リリースは2009年3月)した「Internet Explorer 8」は、前バージョンで露呈した欠点やバグを改善し、全般的な使い勝手の向上や、Webサービスに対する数々のアプローチが施されている。HTMLレンダリングエンジンやJavaScriptエンジンの高速化も相まって、大きな進化が見られたが、進化はそこで止まらなかった。

Microsoftの技術説明会でもあるPDC 2009で初披露された「Internet Explorer 9」は、Windows 7で実装されたテキスト描画技術である「Direct2D」や「DirectWrite」といった機能をサポートし、今後主流になるであろうHTML5やCSS3に対応させ、HTMLレンダリングエンジン、JavaScriptエンジンの高速化などが行われる予定だと言う。2010年3月からユーザーが実際に体験できるプラットフォームプレビューを次々とリリースし、昨日の9月には初のベータ版がリリースされた。そこで、Internet Explorer 9ベータ版(以下、ベータ版は略す)を実際に使用し、いくつかの注目ポイントを速報的にかいつまんで報告する。

Webページの閲覧性を高めたUI

Internet Explorer 9のダウンロードはMicrosoftの公式ページに用意された各国語用ページから実行する。ここでWindows OSのバージョンを選択するのだが、選択できるのは32ビット版のWindows Vistaと32/64版のWindows 7の3種類。つまり、Internet Explorer 9はWindows XPをサポートしていないので、各Windows OSユーザーでなければ、ベータ版は試用できない。もっともInternet Explorer 9正式版リリース時は、Windows Server 2008 R2などもサポートされるだろう(図01)。

図01 Internet Explorer 9ベータ版がサポートするOSは、32ビット版Windows Vistaおよび32/64版Windows 7のみとなる

ちなみにInternet Explorer 9は、これまでリリースされていたプラットフォームプレビューのように単独のアプリケーションではない。アップグレードの一部に含まれるようになったため、導入時はコンピュータの再起動が求められると同時にInternet Explorer 8との併用はできなくなっている。ただし、「プログラムのアンインストール」(アイコンを単独表示している場合は「プログラムと機能」)の一覧に、「Windows Internet Explorer 9」が加わるので、アンインストール可能だ。Internet Explorer 9の試用終了時や正式版リリース前は、同手順でアンインストールして欲しい。

さて、Internet Explorer 9の主な新機能を確認しよう。下記に主な新機能をまとめてみたが、コンシューマユーザーにはUI(ユーザーインタフェース)の改良や、HTMLレンダリングエンジン、JavaScriptエンジンの高速化が大きなポイントとなるだろう(図02)。

図02 Internet Explorer 9のメインウィンドウ。前バージョンと比較すると、大幅に簡素化されている

  • ユーザーインタフェースの改良
  • HTMLレンダリングエンジンのGPU支援(Direct2D/DirectWrite)
  • JavaScriptエンジンの向上
  • HTML5/CSS3/SVG 1.1のサポート
  • DOM(Document Object Model)の最適化
  • ネットワークキャッシュ管理の向上
  • アドオンパフォーマンスアドバイザーの追加
  • ダウンロードマネージャの追加

図02をご覧になると一目でわかるように、Internet Explorer 9のデザインは大幅に簡素化されている。クイック検索を廃してアドレスバーと統合し、タブ領域も同一ラインに移動。初期状態ではステータスバーも非表示になり、Webページ以外は<戻る><進む>ボタンのみ。コマンドバーも廃止し、同領域に表示されるのは<ホーム><お気に入り><ツール>ボタンの3種類。非表示化された各機能は<ツール>ボタンから参照するが、前バージョンと同じく[Alt]キーを押すとメニューバーが表示されるため、シンプル化されたUIから、不便になった印象を受けることはない(図03~06)。

図03 <お気に入り>ボタンをクリックすると、一時的にお気に入りやフィード、履歴が表示される。矢印ボタンをクリックすることで、エクスプローラバーを固定化することも可能

図04 <ツール>ボタンをクリックすると表示されるメニューは、使用頻度が高いと思われる項目が集約されている

図05 [Alt]キーを押せばメニューバーが一時的に表示される

図06 Web検索サイトを用いた検索機能はアドレスバーが兼ねるようになった。同時に履歴へのアクセスも兼ね備える

タブの柔軟性が高まったのもInternet Explorer 9の特徴だ。タブをウィンドウの外へドラッグ&ドロップすると、タブで開いているWebページが新しいウィンドウとして独立する仕組みが加わった。既にMozilla FirefoxやGoogle Chromeでは実現済みの機能だが、Windows 7のAero Snap機能と連動しているのが特徴的と言える。タブをそのままデスクトップの端までドラッグすれば、Aero Snapが動作し、自動的にリサイズされた新規ウィンドウでWebページが開くため、既存のWebブラウザとはひと味違う使い方を実現できるだろう(図07~08)。

図07 FaviconもしくはタブをInternet Explorer 9の外にドラッグすると、

新しいウィンドウとして独立表示させられる

図08 Aero Snap機能を使えば、異なるWebページを同時に閲覧できる

Windows 7との連携においてはジャンプリストへの対応が注目株。Favicon(ファビコン)もしくはタブをタスクバーにドラッグ&ドロップすると、Webページ単位でタスクボタンを生成できるようになった。ロジック的にはピン留め機能に対応したインターネットショートカットファイル(拡張子「.website」)を表示しているに過ぎないが、アクセス頻度の高いものの、Web閲覧時の個人情報を破棄するInPrivate機能を使用するWebサイトをピン留めすることで、効率性は高まるはずだ(図09~10)。

図09 Faviconもしくはタブをタスクバーにドラッグすると、

Webページ単位でピン留めすることが可能だ

図10 タスクバーにピン留めされたWebサイトのプロパティダイアログ。「Pinned Site Shorcut」というショートカットファイルが生成されていることを確認できる

ちなみにジャンプリストの項目は、HTMLに独自タグを加えることで、タスクを追加することができる。例えば本誌ならチャンネルごとにタスク化することもできるし、独自のカテゴリを設けて、RSSフィードやTwitterへのリンクなども作成できるため、Web開発者なら面白い展開を加えることができるだろう(図11)

図11 MicrosoftのWeb検索サイトBingは既にピン留めによる拡張機能に対応。「タスク」には専用のコンテンツ項目が並んでいる

なお、新規タブ作成時は履歴情報を元にWebサイトアイコンが並ぶ仕組みが加わった。前バージョンで搭載されたクイックタブの内容をアイコンにしたものだが、前述のUI改良はこの点にも反映されている。これらのアイコンはドラッグ&ドロップによるインターネットショートカットファイルの作成やピン留めが可能(既にピン留めされている場合は重複するため不可能)。右クリックすると表示されるコンテキストメニューからは、新規タブや新規ウィンドウでの閲覧などWindows OSと同じ操作性を持って操作できる(図12~13)

図12 新規タブを開くと、アクセス頻度の高いWebサイトがアイコン表示され、アクセスやタスクバーへのピン留めが可能になる

図13 Webサイトアイコンを右クリックすると、いくつかのアクションを選択できる

まずはInternet Explorer 9のUIを中心に見てきたが、前バージョンで多くのユーザーが感じていた野暮(やぼ)ったさが解消された印象を受けた。ナビゲーションコントロールの整理によるWebページ表示領域の拡大は、コンシューマユーザーに大きな利益を与えるだろう。