Internet Explorer 9 の誕生を祝う会(ベータ版)

マイクロソフトの次期ブラウザ「Internet Explorer 9」(IE9)のベータ版がリリースされた。それに合わせて日本においても、有志が集まり、マイクロソフト新宿本社で「Internet Explorer 9の誕生を祝う会(ベータ版)」が開催された。この会は、「ブラウザー勉強会」などを定期的に行うシーピーエスの村地彰氏を発起人として、製品版リリースに向け「Internet Explorer 9」への期待や今後への要望を語ることを趣旨としている。

Web開発者、Webデザイナー、Webサービスプロバイダー、そしてユーザーなど関心の高いユーザーが広く集まって開かれたもので、マイクロソフト関係者の講演やライトニングトークセッションとしてサイボウズラボの竹迫良範氏、はせがわようすけ氏、Mozilla Japan加藤誠氏などの講演者たちもInternet Explorer 9についてトークをおこなった。

主催者の村地氏は、「Internet Explorer 9は、当面のモダンブラウザの機能の指標となるという意味合いで注目される点が多く、HTML5やCSS3などを含む新しい技術、変化していくであろうWebアプリケーションなどのあり方を見ていくという点においても注目されていると思う」とし、ベータ版から正式リリースまでの間に、ベータ版を使って今あるWebサイトやWebアプリケーションの検証、フィードバックをおこなっていくこと、IE9をターゲットにすることがFirefoxやChrome、Safariなどのブラウザでの検証にも役立っていくとユーザーサイドからの期待や挨拶を行った。

Windows7の第二章として

マイクロソフト 藤本恭史氏

冒頭の挨拶でWindows 7やInternet Explorerのマーケティングなどを担当する藤本恭史氏は、「今まではブラウザは、PCの範囲で機能強化してきたが、これからは、広がるクラウドの世界に合わせて、クラウドのWebアプリケーションやサービスをクライアントPCの中でシームレスに使っていくようなものになる」とする。また、普及が進んでいるWindows7の"第二章"として、クラウドとPCとのシームレスな環境を作っていくための入り口としてのInternet Explore 9の役割についても言及。「Internet Explorer 9」と今年末から来年にかけてバージョンアップも予定されているマイクロソフトのWebサービス「Windows Live」など、"PC+クラウド"という同社が以前から掲げているWindows 7とクラウドとの融合を推し進めていきたい旨も語った。

メインテーマは「高速」「洗練」「信頼」「相互運用性」

マイクロソフト 春日井 良隆氏

次にマイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部の春日井良隆氏より、IE9ベータ版の概要について説明があった。マイクロソフトでは、ブラウザを開発するにあたってのユーザーに関する調査結果を披露した。

  • PCを使うユーザーの59%の時間はWebブラウザに使われている
  • 50%以上のユーサーは12のアクションしか実行していない
  • お気に入りセンターを使っているユーザーは1/3未満
  • ホームボタンを使っているユーザーは1/4未満
  • Ctrl+URLのクリックで新しいタブを開いているユーザーは15%
  • 閲覧履歴を削除しているユーザーは7%
  • 62%のユーザーが1つ以上のアプリケーションをタスクバーに設定している
  • 87%のユーザーがアプリケーションをタスクバーから起動している

これらのユーザーの動向を綿密に調査した上で心地よいユーザービリティをIE9では実現している。ダイアログボックスの削減や、できるだけ少ない回数で操作を実現するなど、調査結果ももとに、使えば使うほどその心地よさが体感できるしくみが提供されている。

春日井氏は、基本コンセプトとしてブラウザの位置づけを「劇場である」とたとえる。「Webコンテンツが劇団員であり、役者である」としてコンテンツ重視の考え方を示し「良きステージ、良き空調設備を提供することがブラウザの役割」であるとしWebコンテンツを十分に生かすことをIE9の基本設計としていることを強調。広くウィンドウを使えるようにブラウザのインタフェースを設計したと語った。また、IE9のメインテーマとして「高速」「洗練」「信頼」「相互運用性」の4つを掲げる。

キーワードは「高速」「洗練」「信頼」「相互運用性」

「表示領域を広く取りたい」という発想からボタンやメニュー、検索ボックスなどを取り払ったすっきりしたデザインは、アドレスバーと3つのツールボタン、そしてタブがシンプルに配置される。アドレスバーがそのまま検索ボックスの役割を果たすようになった。「戻る」ボタンを「進む」ボタンより大きくするなど細かいところにも配慮されている。タスクバーの機能も強化され、タスクバーからブックマークに直接アクセスすることができる「ピンサイト」機能や、現在開いているWebサイトのアプリケーションをタスクバーから利用できる「ジャンプリスト」機能も追加されるなどユーザービリティを中心とした"洗練"が伺える。

検索ボックスは廃止され、アドレスバーがそのまま検索ボックスに

「ジャンプリスト」機能

速度の面に関してもJavaScriptエンジン「Chakra」の採用や、表示するためのレンダリングにGPUを利用するなど大幅に向上させてある。"信頼"に関しても、特にセキュリティに関しては85%のマルウェアのブロックできる性能を示し、業界最高水準のセキュリティを持つブラウザであるとする。"相互運用性"に関しては、Internet Explorer 9がW3Cが定めるWeb標準準拠であること強調。HTML5、CSS3、DOM Level2/3、SVG1.1、ICC Color Profileなどのキーワードを掲げて、Preview版で実装できなかった<canvas>タグもしっかりサポートしたと春日井氏は語った。

W3Cが定めるWeb標準に準拠

HTML5の世界を堪能できる「Beauty of the Web」

また、春日井氏はIE9β版の公開にあわせて世界のパートナー企業提供によるIE9用のキャンペーンサイト「Beauty of the Web」ついて紹介し、これらのサイトにおいて新しく実装されたIE9の機能がどのような形で利用されているかについて解説。「Beauty of the Web」では、IE9やHTML5などの特長を生かしたコンテンツがずらりと並ぶ。IE9 Beta版をダウンロードしてこれらサイトにアクセスすることでその機能を堪能することが可能になる。

Yahoo! JAPANが提供する「Trendline」では、人名やテレビ、ゲーム・アニメやスポーツといったカテゴリを選ぶだけで、流れるようなビジュアルでトレンドを視認できる。それぞれのイメージをクリックすると目的のWebサイトへ移行できるようになっており、HTML5を利用した新しいトレンド把握の方法を提供している。

Yahoo! JAPAN提供のTrendline

書道アプリに関しては、春日井氏は世界各国からIE9に最適化されたWebサイトが集まる「Beauty of the Web」において、「日本的なことを連想できるコンテンツ」をリクエストした結果として、このアプリケーションが完成したと付け加える。IE9のBeta版でアクセスすると、凛とした和風の画面に硯が置いてある。この上に、マウスをのせると墨の量を加減でき、そのまま用紙の上に筆を持つ手が出てきてそのまま、思うがままの習字を行える。

ビジネス・アーキテクツ提供の書道アプリ