『コンヴィクション』で花開く攻撃型ステルスアクション
『二重スパイ』編のラストで姿をくらまし、「サードエシュロン」からも除名されてしまったサムは地中海のマルタ島にいた。そこに、「サードエシュロン」のかつての仲間、グリムから突然の連絡が入る。
そして、サムは知ることになるのだ。サムの娘、サラの死がただの事故死ではなく、「サードエシュロン」自身が仕組んだものであったこと。そして前作で死した司令官ランバートが、その死の前に、「サードエシュロン」の暴走について、サムに対して何かのメッセージを残していたことを。
今作のサムはとにかく怒り狂っている。かつての冷静沈着だったサムの面影はなく、とにかく、自らの計画実行のためにサムの人生を狂わせ、友人ランバートと娘サラの命を奪った黒幕に対して怒髪天を衝く勢いの怒りで突き進んでいく。
もう、今作のサムはとにかく攻撃的で、しかも異様に強い。サムはサイボーグではないが、その怒りの強さのあまりか、シリーズを通して最強のサムになってしまっている。その姿、その強さたるや、スティーブン・セガール映画並み。サムにナイフを突き立てようものなら、パパパっと瞬く間にそれを奪われて脳天にブッ刺される……みたいな勢いだ。
とにかく攻撃的になってしまった今作。「それじゃあステルスアクションゲームにならないのでは?」という疑問も飛び出してきそうだが、これには発想の転換を行って対応する。
"相手をぶちのめすため"にステルスアクションを行う……のだ。
これまでの「スプリンターセル」シリーズは、どちらかといえば、いかに戦わずして、敵に見つからずに目的を達成するか……に主眼が置かれてきた。だからこそ「かくれんぼ」ゲーム……とも言われてきたのだが、今作では、サムは、敵を効率よくローリスクで排除していくためにステルス行動をとるのだ。
だから、そこかしこで悲鳴やら大爆発やらが起こる今作ではあるが、立派にステルスアクションゲームなのである。
前作までの「かくれんぼ」系ステルスアクションは、スリリングで独特の楽しさは確かにあるにはあったが、主人公サムの強さを顕示するカタルシスは味わえなかった。今作では、敵は基本、すべて悪人なので、サムはその良心をとがめることなく容赦なしに敵を滅殺していくのである。
批判されることもままあった前作『二重スパイ』の抑圧された世界観とゲーム性は、むしろバネにさせられていた? ……と思えるほど、今作は爽快だ。
"攻撃型"ステルスアクション。
筆者は、これが今作の形容として相応しいと思う。今作も、三人称視点で進行する点は歴代シリーズと変わらず。左スティックで移動、右スティックで視点移動の王道システムを採用する。これ以外のシステムは、その攻撃型ステルスアクションのために、前作とはやや異なった操作系が採用されるに至っている。
1つは、ジャンプアクションがなくなったということ。よって、閉塞空間で多段ジャンプして股割アクションで静止し、天井付近に隠れる、というシリーズの代名詞的なスニーキングは出来なくなってしまった。今作では"攻撃"が主たる目的なので、スピード命。ということで、左トリガーを押すだけで、自動的に物陰に隠れられるようになっている。
また、視線の先には照準/カーソルともいうべきマーカーがあるが、これを適当な、隠れられる地点に向けると「COVER」アイコンが点灯し、この時に[A]ボタン(決定/アクション)を押すとそこまで自動的に最速に走って隠れてくれる。よほど身を晒していない限りは、このアクションで敵に見つかることはない。
なので、ある箇所に隠れることに成功したならば、次に隠れる場所を視点操作で探して[A]ボタンを押していくだけで、スピーディに身を潜めながら隠れ進むことができる。このアクションはかなり気持ちよくこれまでの「スプリンターセル」シリーズのような「静」的な隠れ方ではなく、「動」的な隠れ方ができて楽しい。
右トリガーで、照準先を銃撃する操作系は前作までと同じ。この辺りはいわゆる三人称視点シューティング(TPS:Third Person Shooter)系の操作系そのままであり、取っつきやすい。