サイボウズとソフトバンクモバイルは22日、ソフトバンク汐留本社において業務提携説明会を行った。同日から、サイボウズが展開するアプリケーションサービス「かんたんSaaS」の全アプリケーションがiPhoneのタッチデバイスに対応。中小企業の生産性向上を目指した本アプリを軸に、両社は共同で今後3カ月間のうちに1万社以上の中小企業へiPhoneのビジネス利用の提案を行っていくとしている。

サイボウズ代表取締役の青野慶久氏(左)と、ソフトバンクモバイル執行役員の安川新一郎氏

iPhoneのUIに最適化された、かんたんSaaSの利用画面

サイボウズは「PCの前に座っている時間がほとんどない社員が多い」「雇用者と被雇用者の業務上の境目があいまいで、全員がナレッジを必要とする業務に従事している」「経営者がPCを使いこなせない」など、日本の中小企業特有の問題に着目し、その解決策としてスマートフォンのビジネス利用促進に取り組んでいる。かんたんSaaSは昨年の秋から提供が開始されたアプリで、主にPCでの利用を想定していたが、今回iPhoneでも利用しやすいようにUI画面表示の改修・変更を行った。毎月500円(1ユーザー)という料金設定は引き継がれる。

サイボウズの青野社長からは、今回の協業の狙いとiPhoneに最適化した「かんたんSaaS」について説明があった。同社はこれまでグループウェアソフトを開発し販売してきたが、なかなか中小企業に浸透できなかった。リサーチしてみると、外出時に使いたい、スケジュールより売上の進捗管理など他に共有したい項目がある、社員がPCのキーボードに慣れていないなどの声があったという。

かんたんSaaSはこれらの不満点を解消すべく開発されたアプリで、顧客台帳やタイムリーな売上の状況、報告書の内容などをクラウド上の情報をもとにいつでも確認できるようにしたものだ。今後は「お仕事iPhoneキャンペーン」と題してソフトバンクショップでも販売を開始し、営業支援ツールは期間限定で無償提供するなどして、今夏までに1万社以上の企業へアプローチしていくとしている。なお、かんたんSaaSの他端末への対応については、「Androidは検討中」で、良い実績が残せればWindows Mobileへの対応も検討していくという。

同じURLにアクセスしたときのPCの画面(左)とiPhoneの画面(右)。iPhoneの画面には常にUIに最適化された画面が表示される。同社によれば、2010年中に100種類以上のITツールをラインアップ予定とのことだった

ソフトバンクモバイルの安川氏からは、同社の取り組みについての説明があった。ソフトバンクテレコムでは全営業社員にiPhoneを持たせた結果、平均で50分の時間を創出することができ、残業時間は平均で32分減ったという。これは他の企業でも同様の結果が出ているとのことだった。また、ソフトバンク全社をあげてExchange Serverやツイッターの利用、社内研修システムなどにおいてもiPhoneを積極的に活用している。通勤時間にメールチェックや仕事の情報入手ができることで、仕事に入っていきやすいとの報告もあった。スマートフォンのビジネス利用という点で施策を同じくするサイボウズとの今回の業務提携により、同社としては中小企業の顧客案件を一気に増やしていきたい考えだ。

時間の有効活用により生産性が向上し、ひいては企業の利益につながると安川氏。右写真は現在、iPhoneを利用している企業・学校などの例

なお、今回の記者会見の模様はUstream配信によってインターネット上でもライブ中継され、ツイッターには質問、意見が寄せられた。その中で、「かんたんSaaSの既ユーザーはiPhoneを持っていれば、今の月額金額で利用できるのでしょうか」との問いには追加料金なしでできるとの答えだった。