アフレルは1月13日、組み込みエンジニアをいかに育成するかを目的としたセミナー「今、求められる人材教育 ~ロボットを活用した問題解決型研修~」を開催した。

同セミナーには、同社代表取締役社長の小林靖英氏のほか、ブラザー工業の製造部 テクノロジーセンター 小林一夫氏、デンソー技研センター 技術研修本部技術研修2部 三浦久博氏、キヤノンソフトウェア 総務人事本部 人事部 人材開発課の村田美恵氏の3人が登壇。実際の企業内において、どういった取り組みが行われているのかの紹介を行った。

自ら考え、学び、キャリアを選択してプロを目指す

ブラザー工業の製造部 テクノロジーセンター 小林一夫氏

はじめに登壇したのはブラザーの小林氏。ブラザーは2008年に創業100周年を向かえ、現在は40の国と地域にて複合機やプリンタ、ファックス、ミシンなどの事業を展開している。売り上げの7割はプリンティング・通信事業が占めている。

プリンタや複合機などの組込機器を作り上げるためには人材教育が重要とのことで、同社は2004年、さまざまな能力を発揮できる職場環境を作り、チャレンジングな仕事への機会の提供およびエキスパートを伸ばしてプロフェッショナルを育てることを目標にした人事制度を採用。その趣旨としては、「専門性」を生かして業績貢献できるキャリアパスを作ることで、「傑出した固有技術」を育む環境を整備し、一人ひとりが長期にわたって才能とスキルを発揮して「プロフェッショナルの役割」や「ビジネスリーダーの役割」を最大限に果たせるようにすることが成長の鍵であるということを掲げている。

実際のキャリア開発支援としては、「自ら考え、自ら学び、自らキャリアを選択しプロを目指すよう支援」というモットーを掲げたCDP(キャリア・デザイン・プログラム)を各世代ごとに提供。20代では基礎力(対人・対自己・対課題)強化、30代では専門性(専門知識・専門技術)強化、40代ではプロ人材(その分野の第一人者)、50代ではこれまでのキャリアを統合させることを方向性としてモチベーションの向上を図っていくことで、「ブラザーDNAをつないでいく体系を構築する」(小林氏)とする。

各年代別のキャリアプランの方向性を付け、目標を明確にする

組み込みソフトウェア技術者の育成としては、ETSSの研修ガイドなどの活用のほか、他の家電・複合機メーカーなどとの情報交換を含めた異業種交流研究などが行われている。また、地元大学院や企業と連携したOn the Job Learning(OJL)の活用なども実施しており、そうした外部連携などでの人材育成強化なども進められている。

中でも技術系の新人研修では、組み込みソフト技術のソフトウェアエンジニア演習を中心に実施・評価を行うことで配属先のOJTへの効果的な連携が行われているほか、通常の2カ月のメカ系、ソフト系、ハード系各種の個別研修に加え、それらを終了した後、6人のメカ・ソフト・ハードの合同チームを編成、研修で学んだ内容を応用し、予算10万円(2009年度)で各種部品を調達、4週間の期間で起案書などの承認を経て製品開発の真似事を行っている。この研修は、単なる真似事ではなく、最終的には同社会長や社長なども参観するデモ発表会で披露され、優秀製品と認められた場合は、毎年年末に同社が開催している「知の競演展」と呼ぶポスターセッションにて他の技術と一緒に展示されるという。

新入社員技術研修では、各系統の研修を終えた後、総合的な共同プロジェクト型研修を実施し、研修で覚えたすべてをそこに注ぎ込む

こうした取り組みを通じ小林氏は、「各社の共通の課題として、中堅技術者やスペシャリストの育成、エンジニアのモチベーションの維持、スキルデータの分析・活用、教育への投資効果の不透明性などが浮かび上がってきている。人材の育成には時間が必要。成熟度も人により異なってくる。また、リーダー育成もビジネスリーダーになることが目標だが、その前段階として各チームリーダーの育成が必要になっている」とし、異業種交流会などでの討論を通じた外部知見の活用やそれらの知見のデータベース化を図っていくことで対応ができるのではないかとした。

組み込みソフトウェア技術者向け人材育成の戦略マップ

組み込み向け人材育成の施策マップ