ロボットを活用することで自立を促す

キヤノンソフトウェア 総務人事本部 人事部 人材開発課の村田美恵氏

3番目の登壇となったのがキヤノンソフトウェアの村田氏。タイトルは「マインドストームによる『自立型開発演習』」としており、マインドストームを活用した研修を取り入れるとどういった効果があるのかを説明した。

同社が新入社員を採用する方針は人物重視。大学の分野としても理系・文系は問わず、また男女も問わない。そのため、「美大出身のSEも居る」(村田氏)とのことで、「プログラミングをしたことがあるのは新入社員の半数程度」と説明する。

キヤノンソフトウェアの新入社員は人物重視。最低限の能力が身についていれば問題はなく、後の教育で成長を促す

そこから、SEや組み込みエンジニアへの育成が始まるわけだが、従来は新人研修ではキヤノングループ全体の集合研修などを経た後に、アルゴリズム、言語研修を経て、ATMやビデオのレンタルシステム、宅配ピザの受注システムといった開発演習をチームで行っていた。

だがこれでは、「プログラム言語の経験がない人には"特に"難しく、必然的に経験のある人がリーダーとなり、経験のない人は指示待ちの下請け状態となっていた」(同)であり、「本来、開発は楽しいもののはずなのに、これでは作るだけで精一杯になってしまう」というジレンマが生じていた。

そこで白羽の矢が立ったのが、元々、ETロボコンなどに同社の社員が参加していたこともあり社内でも経験があった、LEGOの教育事業部門であるLEGO educationが提供する教育用ロボット「教育用レゴ マインドストーム」であった。

マインドストームを活用する前は、経験のない人は経験のある人からの指示を受ける状態が多かった

こうしてマインドストームを活用したアフレルが監修したカリキュラムを用いて研修を開始したのが3年ほど前。工場内で部品を載せて移動する収集車とその荷物を受け取って、配送先に配る配送車の2台の連携が求められる自動搬送システムを採用した。「ただ、カリキュラムと実際にやらせたい部分の差異があったため、若干のカスタマイズを行ってもらったほか、毎年、出てきた問題点などを踏まえたバージョンアップを毎年行ってもらっている」としており、現在は6つの工夫が施されているという。

工夫の1つがプログラミング経験とテストの成績が同じ程度の新入社員を5~6名1チームとしてグループ分けすること。これにより、「メンバーのレベルが同じなので、他の人に頼ることができないため、自立して物事に対処するしかなくなる」という。

また、各グループごとにスキルレベルが違うため個別に目標を設定するほか、リーダー、サブリーダ、収集車開発チーム、配達車開発チームと役割を分担、リーダーやサブリーダーには進捗への責任を持たせるほか、上司への報告や顧客との交渉といったロールプレイを行わせ、「横」以外のコミュニケーションの構築能力を身につけさせている。

そして、実際に開発期間が終了した後には同社社長なども参加する発表会を実施するほか、発表会後も他のチームの品質や信頼性、保守性などのチェックを行う仕組みとなっている。「最後にこれを行うことで、がんばったね、良かったねだけで終わらせることなく、実際のビジネスでどういったことが最低限必要なのかを理解することが可能となる」(同)という。

まとめとして「開発は楽しく、結果が見えることから社員も参加する発表会も好評」だという。また、副次的産物として、「その後の言語研修が容易になった」という効果も生み出されており、「スタッフ職で採用した新入社員の中から、SE職を希望した例も出てきており、開発が楽しいと思ってもらい、モチベーションを高くもって仕事に当たることへの道筋が確保できた」とする。

マインドストームを活用することで、開発が楽しいということを認識できるようになることが強調された