11月中旬に登場する「Thunderbird 3」

Mozilla Japanは29日、メールコミュニケーションツールの最新版「Thunderbird 3」を発表した。発表会では、Mozilla Japan 代表理事 瀧田佐登子氏が登壇。メールクライアント「Thunderbird 2」の登場から2年半ぶりとなる最新版「Thunderbird 3」を11月中旬にリリースすると紹介。メールからチャット、SNS、Twitterと、コミュニケーションスタイルが変わるなか、「Thunderbird」がどのように関わっていくのか、どのようなコミュニケーションスタイルがいいのか、Mozillaが目指すものは何かを聞いてほしいと挨拶した。

まずはMozilla Japan 代表理事 瀧田佐登子氏が挨拶

ロゴも一新された

メッセージングの将来

Mozilla Messaging CEOのDavid Aschers氏がMozillaの目指す方向を紹介

続いて、Mozilla Messaging CEOのDavid Aschers氏がメッセージングの将来について説明。1986年当時の自分の状況を考えると、インターネットコミュニケーションでは、1つのネットワークで5人から15人ぐらいがアクセスし、メッセージも1日に20通以下と限られていた。2009年には、さまざまな国の10から20ものネットワークを活用している。メッセージングでも電子メールだけでなく、チャットや音声なども利用し、人数では150から1,500人にふくらみ、また1日で200から2,000通もコミュニケーションをとるようになった。コミュニケーション自体が変わってきたのだ。インターネットに接続すれば、1人の人がどこにいても世界中で貢献できるようになってきたのだ。

将来はより、簡単にアクセスできるようになり、高速になり、高機能なコミュニケーションが可能になるだけでなく、モバイルも進化。また、ソーシャルインタラクション、コミュニケーションシステムの中でソーシャルネットワークが大きな位置を占めるようになった。動画、音声などコンテンツ自体も充実してきているとした。今後、新しい機会、新しいビジネスモデルが登場していくが、それはアーキテクチャがどう進化するか、どんな体験をしていくかが重要になってくる。

メッセージングの量の激増が人の処理能力の限界を超えてきている

しかし問題点もある。メッセージ数の増加、メッセージをやりとりする相手の増加などだ。1人がメッセージングを処理できる能力には限界がある。現在Mozillaで、アメリカ、日本、カナダなど100人程度の人と仕事をしているが、すべての人を把握することはできない。それと同じように、すべてのメッセージを処理することは難しくなっている。もし、すべてのメッセージを読んだとしても、すべては処理できない。データ量も増えており、これも処理しないといけない。しかも、メッセージングだけでなく、Webサイトを閲覧したり、ブログを確認したり、Twitterを利用したりとさまざまな処理も必要だ。ほとんどの人は、このような状況を簡素化してほしいと思っているだろうと話した。

David Aschers氏のメッセージングの状況。1986年と現在を比べるとメッセージングの量が激増していることがわかる

また、ビジネスモデルについては、メールが誕生した当時は収益を得る手段については考えられていなかった。Webメールが登場してからは、広告と組み合わせる、リンクさせるなどのビジネスモデルが登場してきた。個人の生活が影響を受けるようになってきた。一元化のシステムの問題点がこういうところにあるのではないかとした。

ここからはトレンドをシナリオとしてみていく。ひとつは、壁のある庭というシナリオ。少人数のコミュニティによるメッセージングの活用だ。一昔前、AOL、CompuServeなどそれぞれでコミュニケーションをしていたが、垣根を越えることは難しかった。日本とアメリカなど、国が違うとシステムも異なることも問題であった。次のシナリオはオープンな環境。ソーシャルネットワークサービス「MySpace」はすばらしい発明だと思うと発言。誰とでも容易に話せる点で受け入れられたが、登録が必要。続いて同種の「Facebook」が登場。APIが公開されているためアプリケーションが作れるようになった。そしてWebサービス「Twitter」が登場。こちらもアプリケーションとの連携が可能。よりオープンであることを目指して、開発者がオープンな設計してきている。ソーシャルネットワークではオープンということが重要な位置を占めるようになってきたとした。

ひとつの企業だけでは限界がある。さまざまな人との協力がさらに重要となる

続いてアーキテクチャの重要性について紹介。ひとつの会社だけで革新的な開発を続けることは難しい。インターネットを介して、世界中でコラボレーションすることで将来を形作るべきだとした。Mozilla Messagingのグループはとても小さいが、さまざまな課題に取り組んでいる。別にもう少し大きなFirefoxのグループ(Mozilla Corporation)がある。これがMozillaというグループの中でさまざまに協力しながら開発を進めている。さらに、世界中の多くの人に協力してもらい開発を進めることが重要だとした。