手堅い方向転換を図ったというイメージが強い

最後に、基調講演後のPress Conferenceの内容などをまとめてお伝えしたい。

まず受注に関して言えば、今年に入ってから回復基調にあり、この結果として同社の実績も第2四半期は堅調な数字を得ているが、第3四半期も同等の数字になると見込まれていると予測しているとの事。

また携帯電話事業の富士通マイクロエレクトロニクス(FML)への売却については、RF技術を中心としたものに限られるという話であった。本来は携帯電話端末事業全体を販売したかったらしいが、それは叶わなかったという事だそうだ。ただ現実問題としてまだFreescaleはMotorolaへのチップの供給を続けており、これは今後も要求される限り続くとの事。もっとも新規開発などは行わないという事なので、改めて他社に事業部を売却という話が出ない限り、このまま次第にフェーズアウトしてゆくものと思われる(ちなみに過去には売り上げの25%がMotorola向けという事もあったが、最近は12%程度との事だった)。

もっともLTEや4Gについては、今後は基地局の側のソリューションという形で取り組みを続けていくので、携帯電話事業そのものから撤退するわけではない、との話だった。

また現在はQorIQが45nm SOI、その他のプロセッサが90nmや65nmのBulk CMOSを用いての委託製造を行っているが、今後は32nmへの以降を念頭においているとの事。この場合、QorIQなどのコミュニケーション向けは32nm SOI、その他は32nm Bulkを使うだろうとしている。ずっと将来には同一プロセスにマージされる可能性はあるが、現時点では引き続き使い分けをするという話だった。またファウンドリに関しては、Chartered Semiconductor ManufacturingがGLOBALFOUNDARIESに事実上買収されたことで、GLOBALFOUNDARIESを使う事ができるようになった、としている。

大雑把に昨年から今年への同社のビジネスをまとめると * 自動車業界向けソリューションの拡充。特にミッションクリティカル系を重点的に攻めることで、他社との差別化および安定受注を狙う * 通信業界向けでは携帯端末向けからは撤退し、基地局ビジネスなどに専念 * i.MXをコンシューマ向けに、ColdFire/Flexisをメディカル系に割り当て、それぞれEmerging Marketを確保する

といった方策に尽きることになると思われる。現実問題としては手堅い方向転換であり、安定したマーケットと今後伸びる可能性のあるマーケットの両方をカバーすることで、現時点の安定性と将来的な成長の両方が一応視野に入っていることになる。

筆者から見て疑問に感じるのは、まずメディカル系である。Continuaは確かに手軽に参入できる分野であるが、当然競合も多い。そもそもContinua Health Allianceが描く将来のマーケットが実現するかどうかが筆者にとっては疑問であり、将来的に十分なパイが確保できずに携帯電話端末同様の撤退の憂き目に合いかねない気がする。個人的には自動車業界同様、医療に関してももう少しミッションクリティカルな分野を狙ったほうがいい気がするが、余計なお世話かもしれない。

またi.MXのコンシューマ向けだが、こちらはもう言うまでも無く激戦区である。幸い今のFreescaleにはSigmaTelの買収で手にしたAnalog/Mixed Signalのリソースがあるが、これだけで他の競合ベンダを圧倒できるわけは無いのであって、今後の展開が気になるところである。

まぁとはいえ、(冒頭にも書いたが)今年はメーカーのプライベートショー自体が激減している状況にあって、これだけの規模のイベントを日本で開催出来た事は評価すべきであろう。来年も変わらず開催できることを期待したい(ついでに、来年は2日コースにしていただきたい。明らかにスケジュールが立て込みすぎである)。