両ベンダーの提案で浮上したソリューションは、ハイパーバイザー型のVMware Infrastructure 3の導入だ。一般的に、クライアントPCで利用されている仮想マシンソフトウェアはホストOS型と呼ばれるものが主流となっているが、この場合物理ハード上にWindowsやLinuxのような汎用OSをホストOSとしてインストールし、その上で仮想化ソフトウェアがアプリケーションとして稼働する。ハイパーバイザー型はこれとは異なり、仮想化専用OSであるハイパーバイザーがハード上で直接動作し、全てのゲストOSはそのハイパーバイザー上で動作するといったものになる。処理内容にもよるが、ハイパーバイザー型のVMwareの場合、仮想環境は物理サーバ上でOSが稼働するネイティブ環境と比べても、数パーセント程度しか低下しないというレスポンスの良さが特長となる。クラリオンは「仮想化=低パフォーマンス」の先入観を打ち砕く同方式と出会うことで、仮想化を実現しようと取り組みを始めたのだ。

クラリオン 経営推進本部
SCM推進部 情報企画グループ 中村公一氏

「両社と相談している間にも、各部門が設置する物理サーバが当初の想定を超えたペースで増加の一途をたどっていました。サーバルームのスペースがひっ迫する前に、稼働効率を向上させることができる仮想化をサーバ構築時の選択肢に加えられたら、という思いがありましたね」と語るのは、経営推進本部 SCM推進部 情報企画グループ 中村公一氏だ。

同時に、2007年にクラリオンの社屋の移転があり、その際、内部統制・セキュリティ上の観点から社内全サーバをサーバルームに集約するルールとした結果、今までなかった、各部門が独自に構築していたサーバが多数やってきた。これも仮想化への取り組みを推進するひとつの要因となったのだという。

ハードウェアの資産増加やサーバルームの設置面積が少なくなることは、あらゆる企業においても大きな課題となっている。クラリオンも企業統合やセキュリティ・法令順守対応により、それらに対する懸念が急激に増加したというわけだ。これを解決するソリューションは、仮想化以外に無いという判断がなされ、VMware Infrastructure 3導入へ向けたプロジェクトは進んでいく。

導入はわずか2週間で完了

日立電線ネットワークス ITソリューション部 第二グループ チームリーダー 中山佳夫氏

「今回のクラリオン様のシステム構築では、特に既存のネットワークとの接続部分に注力しました。既存システムを活かしつつ、可用性を確保する。これが一番大切な部分だと思ったのです」と語るのは、実際にインテグレーションを行った、日立電線ネットワークスのシステムエンジニアリング本部 ITソリューション部 第二グループ チームリーダーの中山佳夫氏だ。

仮想マシンの中でも本番系、開発系といったように仮想スイッチをセグメントごとに分ける必要があった。VMwareの機能と既存の物理ネットワークの仕組みをうまく連携させること求められたのだ。

日立電線ネットワークス 第三営業部 第一営業グループ 主任 高安洋介氏

「実際には3月の中旬に導入を始め、試験を含めて実質2週間で作業は完了しました。非常にスムーズにミッションをこなすことができたのです」と語るのは、日立電線ネットワークスの営業本部 第三営業部 第一営業グループ 主任の高安洋介氏だ。

インテグレーションを行ったプロジェクトチームの的確な作業により、導入は非常にスムーズに完了した。これを受けてクラリオンでは、実際に仮想環境へ移行する作業へと取り組んでいくことになる。