MSRで未来の世界をちょっとだけ体験

Ballmer氏がいう「将来の糧となるR&D」、Microsoftでそれを担うのがMicrosoft Research(MSR)だ。今回のCESキーノートでも、このMSRの成果の一部が披露されている。

まず紹介されたのは「KODU」というゲームだ。Xbox 360のゲームパッドを利用して登場するキャラクターに対して行動パターンをプログラムし、特定のミッションや対戦をこなすというものだ。もともとは児童らにプログラミングの基礎を教えるための教育向けツールから生まれたもので、今年春にもXbox Liveでの正式提供が開始される。プログラミングや人工知能的な部分に注目が集まりがちだが、実はKODUのプログラミングに使用しているリング型のUIに大きな特徴がある。素早く細かい命令を次々と入力することが可能で、壇上では12歳の女の子が登場してゲームの紹介を行っていたが、その操作のあまりのスピードと命令の長さに、会場中が「あれはいったい何をやっているんだ?」とどよめきたつ状態だ。しかも、女の子と対戦した前述のRobbie Bach氏も刃が立たないほどである。つまり、子供向けプログラミング教材という役目は十二分に果たしており、かつボタンの数の限られたゲームパッドにおいても十分なスピードで入力が可能ということを示している。リング型UIについては、より詳細に紹介している記事があるのでこちらを参照してほしい。

2008年秋に開催されたPDCでも紹介された「KODU」。PDCでは「BOKU」という別の名称だった。Microsoft Researchが研究している教育向けのプログラミングツールで、リング型のUIを用いてゲーム上のキャラクターに行動パターンをプログラムし、それを実際にフィールド上で動かすことでプログラミングの世界を体験してもらうというゲーム仕立てのものになっている

MSRから紹介されたもう1つのトピックは、近未来型の入出力デバイスだ。現在、マルチタッチを駆使した多目的端末としてはMicrosoftからSurfaceがリリースされているが、それをより身近で持ち運び可能なものにする。ステージ上で紹介されたものの1つがタブレットPC型の入出力デバイスのプロトタイプで、学生向けのテキスト兼ノートのようなものだ。デバイスには必要な教材が詰まっており、例えば解剖学の授業では骨格モデルや神経など、画面上でモデルを自由に拡大縮小してさまざまな角度から検証したり、必要に応じてアドバイスを受けたり情報交換が可能など、ネットワーク連携ならではのメリットも享受できるものだ。また自動翻訳機能も完備しており、日本語で書かれた論文を言語を意識せず英語で違和感なく読めるなど、ソフトウェア的に近未来を体感できるようになっている。

これをさらに発展させるのがデバイスの柔軟性だ。現在はSurfaceのテーブル筐体、そして前述のようなタブレットPCときて、最後はより持ち運びに適したデバイスが必要とされる。そこで折り曲げ自由な超薄型のデバイスが実用化されれば、文字通りデバイスに柔軟性を持たせることが可能になる。現在は研究段階だが、将来的に1ミリ未満の薄さの情報端末が登場することになるかもしれない。

Microsoft Researchから紹介されたのは、未来のコンピューティングデバイスのプロトタイプ。タブレットPCの形状をしているこのデバイスは学生向けの教育ツールで、講義ノートやテキストなど授業に必要な情報が詰まっている

例えば解剖学の授業向けに、骨格モデルや神経に関する情報がビジュアル状に確認できる。ズームインやズームアウトも容易で、必要に応じてネットワーク接続で必要なアドバイスなどを適時受けることも可能。メモ書きのほか、各種文献の参照もできるようになっている。写真でハイライトされている文献は、実は原文が日本語で記述されており、それを英語に翻訳された形で見えている

タブレットPC、SurfaceはMicrosoftが模索するUIの新しい形だが、さらに新しい試みとして折り曲げ自在な薄型ディスプレイ装置の研究も進んでいる。1ミリ以下という新素材にディスプレイ情報を表示することも可能で、将来的にはこうした素材をタブレットPCやSurfaceなどに応用していくことになるだろう