iLife ’09では「iPhoto '09」「iMovie '09」「GarageBand '09」の3つが取り上げられた。iPhotoは'08でEventsによって、撮影した写真が自動的にイベントごとに分類されるようになった。'09では写真整理をさらに強化する「Faces」と「Places」が追加された。Facesは顔検出と顔識別を組み合わせて写真をグループ化する機能だ。ボタン1つで自動的に写真から人の顔が検出される。未登録の場合は名前を入力したら、顔識別機能を使って、その人が写っている他の写真を検索する。候補リストの写真が正しければシングルクリックで登録、間違っていればダブルクリックで候補から外せる。膨大な写真からでも数分で、同一人物の写真をグループ化できる。
確認作業の手間がなければさらに便利だが、「完璧な顔識別は存在しない」とSchiller氏。そのような中で数クリックでグループ化を完了できるFacesは「誰でも簡単に使えるベストな機能だ」とアピールした。
顔検出や顔識別は目新しい技術ではないが、iPhotoはその結果の活用法という点で一歩進んでいる。例えばテーマ別スライドショーでは顔検出機能が働いて、人物の顔がきちんと中央に収まって表示される。新たに追加されたFacebookとの連携機能では、Facebookの名前タグとFacesが相互にデータを交換してくれる。
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テーマ別スライドショー。顔検出機能が働いて各タイルの中央に顔が表示されるように配置されている |
Facebookとの連携。iPhotoからFacebookにアップロード、Facebookで追加された名前ID(右端)がiPhotoに反映された |
「Places」は、位置情報タグ(GeoTag)を基に場所で写真をグループ化する。位置情報追加に対応していないカメラで撮影した写真の場合、ユーザーが手作業で位置情報を指定することになるが、その際にもデータベースや地図が簡単な入力を支援してくれる。Faces同様、タグ付けに苦労しないのが特徴だ。
iMovieは、'08でユーザーが感覚的に簡単にビデオを編集できるソフトに生まれ変わった。名前以外はまったく別のソフトになったといえる。その使い勝手の良さが高い評価を得たものの、iLife'06版が備えていた細かな編集機能などを求めるユーザーの声も出てきたそうだ。そこで'09では、詳細編集や地図アニメーション、手ぶれ補正などを追加。それらを'08版の感覚で利用できるようにした。
例えば詳細編集はフィルムストリップを拡大表示してビデオクリップの終点と始点を細かく指定できる。手ぶれ補正は、イベントまたはクリップのぶれを分析したら、あとは必要な部分をプロジェクトライブラリに投げ込むだけで自動的に補正される。非常に簡単、しかし技巧をこらしたような結果が得られる。
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カットアウェイして間に別のビデオを挟み、さらに違うビデオからのオーディオだけを重ねるという複雑な編集を披露。作業プロセスは'08のドラッグ&ドロップの使い勝手のまま |
詳細編集。2つの異なるビデオを、まるで同じシーンをマルチカメラで撮影したかのようにつなぎ合わせて見せた |
GarageBand '09で取り上げられたのはレッスン機能だ。GarageBandというと音楽演奏が趣味である人のためのソフトだったが、レッスン機能を通じて、これからギターやピアノを習おうという人も楽しめるようになった。同ソフトにはギターとピアノの基本レッスンが9つずつ入っている。また有名ミュージシャンが自らの曲の演奏方法を教えてくれるアーティストレッスン(有料)も提供される。
基調講演後にAppleのブースで試してみたが、これがなかなか面白かった。例えばギターならば練習時にコード、譜面、タブ譜、歌詞などの表示を自由に切り替えられる。特定のパートだけをループさせて、集中的に練習することも可能。バンド演奏も用意されており、各楽器ごとにオン/オフを切り換えられるので、練習目的に合わせた編成を組める。単なるレッスンビデオにとどまらない柔軟性を備えている。
"手軽に美しく"が進化した「iWork」
主要ソフトに斬新な機能を追加されたiLife '09に比べると、iWork '09は初代版から続く持ち味が膨らまされた。Keynote '09はスライドトランジションを洗練されたアニメーションに仕上げる「Magic Move」、オブジェクトやテキストのトランジションなど、印象的なプレゼンテーションに仕上げるためのエフェクトが強化された。「Pages '09」の新機能は、全画面表示、ダイナミックアウトライン、MathType/ EndNoteなど。例えばアウトラインはドラッグ&ドロップで移動でき、また画像やビデオをアウトライン内に表示できる。手軽に美しいドキュメント作成という同ソフトの特徴を維持しながら、ワープロとして着実な進化を遂げた印象だ。表カテゴリ作成が追加され、数式作成が強化されたNumbers '09も同様である。