海外でのデファクトスタンダードを確保する

NAVITIMEは日本だけでなく、全世界でのサービス展開を視野に入れている。NAVITIMEのサーバーには、欧米、アジアなど33の国と地域の地図データを蓄積している。これを活かし、世界29カ国の情報を網羅した日本人旅行者向けサービス「Global NAVITIME」を開始している。

Global NAVITIMEは、ドアtoドアのルート検索ができる世界地図ポータルサイト。地図検索、ルート検索のほか、ホテル検索・予約が利用できる。加えて、都市情報、旅の基本情報、海外イベント情報なども提供する。携帯電話との連携も充実しており、現地でのルート検索のほか、検索した地点、予定のルートをPCで登録し、海外でも携帯から確認できる

大西氏は、NAVITIMEのグローバル展開について「海外では依然、第2世代携帯電話を利用する国が少なくない。GPSも十分に備わっていない環境もあるので、まずはユーザー数が多い日本人旅行者用から始めた。今後は、これらのサービスをそれぞれの国で現地語化すればよい。海外でも3G環境が整えば、すぐに着手できる。同種のサービスはまだほとんどないので、競合が出てくる前に、デファクトスタンダードの座を確保したい。最初は英語圏で始め、それから各国に広げていく」と語る。

米国では自動車の利用人口が多く、経路探索のサービスは大きくならないように思われるかもしれない。しかし大西氏は、「実際にはニューヨークやシカゴなどでは電車通勤が多い。ヨーロッパでも圧倒的に電車の存在が大きい」と説明する。

すでにNAVITIMEの海外での活動は進行している。台湾の通信事業者「中華電信」がコンテンツとして採用、2008年4月からは米国で「NAVITIME 世界統一版アプリ」の利用が始まっている。

経路を切り口にさまざまサービスを展開

NTTドコモがiモードのサービスを開始したのは1999年。大西氏は当時、「今後は携帯電話が一段と伸びる」と経路探索サービスと携帯電話は高い相乗効果を挙げるとみていた。いまや携帯電話には、カメラ/テレビ/音楽プレーヤーなどの機能が搭載されている。今後は、デジタル家電などにも通信機能が搭載され、それらも携帯電話と同様に普及していくはずだと予想しているという。

ナビタイムジャパンでは、2009年春をめどに、通信機能に対応したカーナビを、新しいマーケットカテゴリ「WND(Wireless Navigation Device)」として提供する。これまで同社がNAVITIMEで同乗者向けケータイカーナビとして「ドライブサポーター」などを提供してきたが、WNDでは、運転者でもご利用いただけるサービスとして展開する。サーバーとの通信連携機能を特長としており、最新のスポット情報でナビゲーションを行うことが可能だ。

同製品の特徴を大西社長は、次のように述べる。「デバイス自体には、地図の一部など基本となるデータや、あまり短時日では変わらない情報を記録させ、レストラン情報といった、毎月1回程度更新するデータはサーバーに記録する。デバイス本体に、基礎となる地図情報があるので、たとえ通信が切れても検索ができるといった利点がある」。

WNDにおいても、ユーザーの利便性に重点を置かなければならないと大西氏は語る。「車載用システムなら、より高精細の画面を、携帯電話向けではGUIをいっそう使いやすく、世界中の人々が安心して移動できるようにすることがサービスのビジョンだ。アラジンの魔法のランプのように、携帯電話を開けると、コンシェルジュが現れるという感じだ」。

同社の考える位置情報ポータルはもはや、単に交通機関の乗り継ぎを中心とした経路探索サービスの提供にとどまらない。グルメ情報、映画館、さらには医療機関にいたるまで、人間の生活全般に必要なさまざまな情報を、"経路を切り口に"提供する―― そんな新しいサービスに進化しようとしている。今後、これまでは思いもしなかったようなコンテンツや利用法が創造されるかもしれない。