モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)が5日に東京・青山で開催したMCPCモバイルソリューションフェアにおいて、マイクロソフトの樋口泰行社長が基調講演に登壇し、同社のモバイル戦略について語った。特に、Windows Mobileのビジネス向け機能に関して詳細に解説した。

マイクロソフトの樋口泰行社長

樋口社長は冒頭、モバイル端末がPCに近づいてきていると指摘。現在のモバイル端末はMicrosoft OfficeやOutlook、フルブラウザ、画像・音楽などのエンターテインメントといった機能の実現で、PC並みの操作が可能になってきている。

マイクロソフトは「PCをビジネスにしている」(樋口社長)ため、PCに近い機能を持ったモバイル端末には「ある種の脅威」(同)があるものの、モバイル端末の高機能化の流れに乗っていくための開発を進めていると話す。

「進化の最先端にいる日本」(同)の携帯電話は、米Microsoft本社ではその先端性を「信じてくれない」(同)時もあったそうで、さらにモバイル向けのWeb広告が存在し、それが「オンライン広告全体の10%を超えている」(同)ことも米本社から見ると特別だったようだ。

ただ、そうした日本のモバイル市場の動向も米国に理解されてきており、さらにWindows Mobileの開発部門の一部を米国から国内に移転させて国内ニーズに対応していこうとしている。

樋口社長によれば、日本と米国の携帯の利用法を比較した場合、ビジネスには音声通話、プライベートにはメールを利用するのが日本、ビジネスにメール、プライベートに音声通話を利用するのが米国なのだという。それに対して、ビジネスでもエールを使うようになれば、さらに生産性が上がる、と樋口社長は指摘する。

それでも、国内の法人需要は増加している。業務利用者のほとんどがメール、電話帳、カレンダーを利用し、多くが社内ポータルやインスタントメッセージ、SMSアラートを利用しているという。

樋口社長は、2006年から2010年にかけて通常の携帯電話が5.8%増と伸び率が鈍化するのに対し、スマートフォンは34.1%と大幅に増加し、Windows Mobileは毎年10%以上の伸びを示すという予測を示し、その理由として、Windows向けの開発環境がそのまま利用できる、多くのWindows向け開発者のリソースやソフト開発のノウハウも使えるといったアプリ開発の優位性と、サーバ連携が容易という点をメリットとしてあげる。

樋口社長が示したIDCによる予測

Windows Mobile端末は全世界で、07年度に1,100万台を出荷し、08年度は2,000万台出荷を見込んでいる。国内では100万台程度だが、既存の国内端末メーカー富士通、東芝、シャープ、台湾HTCに加え、今後はより幅広いメーカーから提供されていく予定だということで、国内のシェア拡大を狙う。

樋口社長は、Windows Mobileの特徴について「親しんでいるWindowsのインタフェース」であると指摘。WordやExcel、Exchangeを利用したメール、スケジュール管理といった「PC上で慣れ親しんでいた環境で、PCライクに使える」(同)ことを強調し、生産性の向上が実現できるという。

また、メモリカードのデータ暗号化、ポリシー管理、リモートワイプといったセキュリティ機能、Windows Liveとの連携・フルブラウザ・Windows Media Playerといった機能も魅力として挙げる。

さらに、最新OSのWindows Mobile 6.1では企業ニーズに応える形で、「Microsoft System Center Mobile Device Manager 2008」との連携による管理機能の強化が追加されている。これによって、インベントリ管理をはじめとする端末管理や、グループポリシーによるカメラなどの機能停止などの機能、モバイルVPNによるリモートアクセス機能などが提供される。

企業ニーズに応えたWindows Mobile 6.1の機能

System Centerとの連携による端末・セキュリティ管理機能

System Centerの画面。これは端末機能の停止を行う画面

カメラの利用をオフにしたところ

右がSystem Centerのポリシーをダウンロードした端末。左上にアイコンが表示されている

カメラを起動したところ

今後の展開については「ソフトウェア+サービス(S+S)」という形で、インターネットとローカルのアプリがシームレスにつながる世界を目指す。Windows Mobileアプリはすでに18,000を超え、豊富なパートナーとのエコシステムを構築している。樋口社長は、こうしたWindows Mobileのメリットを生かして企業への導入を加速させたい考えだ。