ハードウェアエンジニアの間では、製作物に機能と無関係に何らかの自己主張を入れることがある。製品を分解したときには、そういうサインを探してみるという楽しみがある。

Chumbyのボードにも、そういった遊びがいくつか見られたので紹介しよう。

メインボードのシリアルポートの下には、"with love, -bunnie"とある。bunnieは、メインボードをデザインした、Andrew "bunnie" Huang氏(VP Hardware Engineering)のニックネームだ。

メインボードのシリアルポートの下にある、"with love, -bunnie"。Andrew "bunnie" Huang氏のニックネームだ

子基板にも遊びが入っている。こちらは、ちょっと手がこんでいて、"I ♡ solder!"(ハンダ大好き!)と抜かれた部分に金フラッシュのメッキがかかっているようだ。

子基板には、"I ♡ solder!"(ハンダ大好き!)とある

第2回では、いきなりChumbyを分解してしまったが、読者の皆さんの"分解欲"を少しでも満たせただろうか。

ハード原価は、1ロットの製造数にもよるが、$100弱程度ではないかと想像される。分解してみて、組み立て工程が複雑であることや、あまり量産効率を考慮した設計になっていないようにみえる。Chumbyの価格設定がやや高めであるという意見がネット上で見られるが、まだまだコストダウンの余地もありそうだ。

熱対策についても、改善の余地があるように思われた。Chumbyを使用していると、スクリーンにタッチしたときに、液晶部分が想像より熱いと感じることが多い。長時間放置しておくと、本体が無反応になっていたり、無線通信が途絶してしまうという報告もある。発熱問題への対策は、現在の製品では十分といえない可能性がある。もしハードウェアのアップデートがあるのなら、次は前面液晶カバー部の上下に換気用のスリットを設けたり、化繊綿をより強度の高い素材に変更して内部に空間を確保する、基板と化繊綿の接触防止には別の素材を利用するなどの改良に期待したい。それによって部品点数を減らし、コストダウンもできるはずだ。

CPUとFlashROM、RAM容量についても、日本語や動画を使用する上では、やや力不足を感じる。i.MX21の後継モデルのi.MX27には、H.264のアクセラレータが搭載されているので、CPUクロックを上げずに30フレーム/秒の動画処理が可能になっている。FlashROMやRAMについても、それぞれ128MBくらいあれば使用アプリケーションにも余裕が出るだろう。

Chumbyのハードウェア設計情報は、「The Chumby HDK Agreement」に同意することで、chumby.comのサイトから入手できる。開発メンバは、Apple IIに回路図とBIOSのソースコードが添付されていたことを真似て、ハードウェアのhackが進むことも望んでいるようだ。さらに進んで、HDKでは、ソフトウェアのオープンソースライセンスのように、改変の詳細情報を開示するのであれば設計情報を再利用することも許可されている。自分でオリジナルのChumbyハードウェアを設計することも夢ではない。こういうオープンな開発姿勢も、Chumbyにわくわくさせられてしまうところだ。