2008年6月17日(米国時間)、Firefox 3.0が公開された。Firefox 3.0は2.0以来のメジャーアップグレードバージョンだ。1万2,000におよぶ変更が実施され多くの新機能が追加されているほか、ユーザーインタフェースの洗練と追加、セキュリティ機能の強化、動作の高速化、48言語への対応が実施されているなど魅力的なプロダクトに仕上がっている。JavaScriptの実行性能は9倍から10倍近く高速化されており、Gmailのメッセージロードタイムも6.8倍に達している。
3.0で実現された新機能はいくつもある。特徴的なデザインとスマートロケーションバーに始まり、フィッシング詐欺対策、マルウェア対策機能などは特に気がつく新機能だ。フィッシングおよびマルウェア対策機能はJohn Lilly氏もすでにお世話になっているようだ。Firefox 3.0にアップグレードしてから、Firefoxから危険なサイトにアクセスしようとしていると警告を受けた経験があるユーザーも少なくないだろう。
Firefox 3.0の初日のダウンロード数は800万を越えた。6月末現在、総ダウンロード数は2,700万を越えている。数日で何百万という単位で伸びている計算だ。日本におけるダウンロードは130万ダウンロードに到達しようとしており、国や地域別にみると米国、ドイツについて第3のダウンロード数を実現している。日本に続いては英国の112万強、フランスの91万強がある(数は執筆時の6月末現在のもの)。
Net Applicationsの調査によればFirefox 3.0の2008年6月29日(米国時間)におけるシェアは4.84%だ。同じくNet Applicationsの調査によれば2008年6月におけるWebブラウザのシェアは次のようになっており、登場から半月ほどでFirefox 3.0のシェアがSafariのシェアに到達しようとしている様子が分かる。
- IE - 72.99% (0.76減)
- Firefox - 19.03% (0.62増)
- Safari - 6.32% (0.07増)
- Opera - 0.73% (0.02増)
IEのシェアが純減し、Firefox / Safari / Operaのシェアが純増するというここしばらくの傾向は変わっていないが、Opera 9.5の登場、Firefox 3.0の登場、この夏に登場するとみられる次期Safariなど、この傾向はしばらく変わることはなさそうだ。
Firefoxは一気にダウンロードが集中したためか、公開開始から2時間ほどサーバがダウンしていた。John Lilly氏の説明によればアクセスが集中したことでMozillaネットワークがダウンし、アクセスできない状況になったそうだ。ただし、配布に関しては多くの協力を得てダウンロードネットワーク / ミラーネットワークを実現していたため、Mozillaネットワークがダウンしている間でもそれら経由のダウンロードは提供されていたという。
ドイツで高いシェア、Firefoxの主要プラットフォームは欧州へ
Firefox 3.0のダウンロードを見ると米国のシェアが高いのは順当としても、日本を追い越してドイツが高いダウンロード数を実現していることが目を引く。英国やフランスと比較すると数の上では日本の方が上になっているが、人口割合で比較した場合は英国やフランスの方が高くなる。例外もあるが総じて欧州はFirefoxの採用率が日本よりも高い。
ドイツ語サイトのFirefox 3.0 ダウンロード用ボタン |
ドイツや欧州でFirefoxの採用割合が高い点についてJohn Lilly氏はこう説明する - 「ヨーロッパにおいてFirefoxのシェアは30%ほどになっている。ドイツは35%、ポーランドはもっと高い割合だ。今年の夏には50%シェアを超えるヨーロッパの国も登場するとみられている。欧州でFirefoxの採用割合が高い背景には、ソフトウェアがどうやって動作するかや、その成り立ちそのものが魅力的に映っているのだと考えられる。一方、米国、日本、中国では製品の品質に焦点が置かれている。ヨーロッパも品質重視なのだが、システムがオープンであるということ、参加できる公正であるということも評価の対象となっているわけだ」
こうした状況を反映して「次の戦略を練る必要がある」とJohn Lilly氏。「我々としてはヨーロッパがFirefoxのメインストリームになるとみている。コンシューマオープンソースになるのではないかということだ。これは大きな達成になるだろうが、人々に対してオープンソースがどういったものであるかを説明していく責任も担うことになる。日本でのシェアは12%、米国では20%だ。こうした国々ではFirefoxという選択肢があるということを説明していこうと考えている。中国、ブラジル、ロシア、インドでは普及が極めて早くなっている。アフリカ、中東などネットにアクセスできない地域もあるためギャップも大きくなっている」
数字上は日米が高い数を誇っているものの、人口割合からみた場合は欧州がもっともFirefoxの濃い地域ということになるわけだ。今夏50%をこえる国も出てくるというように、欧州におけるFirefoxの普及は今後も色濃いものになるようだ。米国のみならず、今後は欧州からのユーザーの反応が今後のFirefoxにどういった影響を与えていくのか注力していく必要がありそうだ。