TVアニメ『機動戦艦ナデシコ』の主題歌「YOU GET TO BURNING」やOVA『聖闘士星矢 冥王ハーデス十二宮編』の「地球ぎ」など数々のヒット曲で知られる松澤由美。最近では、自ら歌うだけでなく作詞などでも大活躍している。弊誌読者にとっては、コラム「夢のあしあと」でもおなじみの松澤が、新たに主題歌を歌うプレイステーション 2専用ソフト『Lの季節2 -invisible memories-』のオリジナル・サウンドトラックが6月25日に発売される。そこで今回、同ゲームの主題歌「僕たちの真実 ~Story~」を中心とした近況から、ブラジルの話、さらには今後の活動についてなどを語ってもらった。

「僕たちの真実 ~Story~」から作詞活動まで

PS2『Lの季節2 -invisible memories-』のオリジナル・サウンドトラックを手にする松澤由美

――「僕たちの真実 ~Story~」の収録風景などはコラム「夢のあしあと」でも何度か触れられていますが、最初に『Lの季節2 -invisible memories-』の主題歌を依頼されたいきさつは、どんな感じでしたか?

「もともと『暁のアマネカと蒼い巨神』という工画堂スタジオさんのゲームの主題歌を去年レコーディングしたのがきっかけで、『Lの季節2』のプロデューサーの方からお話をいただきました。崎元仁さんがお書きになるというのはそのときにはじめて聞きましたね」

――ゲームの主題歌などの場合、どういったイメージを元にして歌いますか?

「『Lの季節2』の場合は、キャラクターの絵とおおまかなあらすじをあらかじめいただきました。でも、ストーリー自体がキャラクターによって違っていて、友情のようで友情でもなく、恋愛のようで恋愛でもなくっていう感じの、わりとふわっとした感じだったので、あまり強くイメージするものはなかったですね。もちろん、ひと通りはチェックしますし、作品があればそのイメージを頭に入れて歌うようにはしています」

――最近は作詞などでも活躍なさっていますが、詞を書くときもあらかじめ世界観などを把握する必要があると思います。ちなみに、作詞する際に誰が歌うかはあらかじめ教えてもらえるんですか?

「教えてはもらいますが、依頼されるときに『誰々が歌うからどうこう』っていうのは特にないですね。たとえば『モノクローム・ファクター』の主題歌『AWAKE~僕のすべて~』を作詞した際も、小野大輔さんが歌うからというのではなくて、『昶はこういうイメージで、こういう色で……」みたいな、あくまでもキャラクターのイメージが中心になるので、あまり歌う人のことを意識することはないですね。ただ、後になって、歌う人にあわせて修正が入るということはあります」

――作詞にももちろん"締め切り"とかがあると思うのですが、ちゃんと守るタイプですか?

「コラムは本当にいつもギリギリでお渡ししてますが(笑)。でも、作詞はすごい速いと思いますよ」

――作品全体のイメージはすぐに浮かびますか?

「どうしようって悩むことはないですね。どうしようなんて思っていると一行も書けずに終わるんで、とにかくまず書いちゃいますね。台本の裏とか、いらない紙とかに、だーって書きはじめちゃう、みたいな」

――そのあとでフレーズにあわせて修正していくといった感じですか?

「最近は、メロディを聴きながら、止めて、書いて、みたいな繰り返しで進めてますね。もちろん一番最初は通しで聴いて、全体のイメージを掴みます。このあたりで起承転結をつけようかな、みたいになんとなく考えながら。後はドンドン書いていっちゃいますね」

――詞を書くとき、1番の歌詞はスッと書けるけど、2番で詰まるみたいなことはありますか?

「私の場合は、何もないところから生み出さなければならないという点で、1番の歌詞で苦労するほうが多いです。すでに1番のフォーマットができあがっている分、2番の歌詞を生み出すのはそれほど苦労しませんね」

――普段から詞のアイデアを書き溜めておく、といったことはありますか?

「詞に関しては"ネタ帳"みたいなものがあります。箇条書きだったり、日記みたいだったりするんですけど、それをたまに見たりもしますね。でもそれをすごく活かしているかというと、あまりそういうことはないです」

――ネタ帳で昔を振り返って、苦笑してそのまま閉じてしまうみたいな?

「そっちのほうが多いかもしれません(笑)」

――最近の作詞の仕事は、現在の自分から生み出されたもの、ということですね?

「たぶん私から生まれてくるものなんですけど……。でも最近書いた詞は、歌う人がドーンと若かったりするので、私が歌ったらちょっと……みたいな感じのものもありますね(笑)」

――ちなみに、作詞した作品のレコーディングには立ち会いますか?

「やっぱり、歌っている本人にとっては嫌なんじゃないかなって思うので、あまり立ち会うことはないですね。注意力散漫になるというか、気を使わないといけなかったりしますし……。でも作品によってはやはり立ち会うこともありますよ」

――さて、話を戻して、新曲は『Lの季節2』のオープニングテーマということですが……

「すごいですよね。私はこれまでも、楽曲に恵まれているという面があると思うんですけど、今回の『僕たちの真実 ~Story~』も、『私、こういうのを歌ってみたかった』と思うような楽曲でした。後になって崎元さんがゲーム業界では神様みたいな方って聞いて、あらためて、本当にすごいなあって思いました。『Lの季節2』を通して、こういう楽曲に出会えて、今回ほんとによかったなって思ってます」

――やはり、今回の歌はお気に入りですか?

「すごいお気に入りですね。レコーディングで歌い終わった後、崎元さんに、『当分の間、私はこの歌に恋します!』って伝えました。当の本人は『てへへ』っていってましたけど(笑)。また機会があったら、崎元さんの音楽で歌いたいですって伝えました」

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