-- クリエイティブスタイルですが、14種類も入っていて、まだ把握できていません(笑)。

左中 多くて困ることはないと思います。いろいろ試していただいて、お気に入りのものを見つけていただければいいかなと。最初から入っていたほうが手間もかかりませんし、選択も繁雑にならないと思っています。詳細なパラメータ設定もできますので、よりレベルの高い、自分好みのスタイルを作って登録して欲しいと、そういう感じですね。

-- 上にある「スタンダード」「ビビッド」「ニュートラル」は、「明度」と「ゾーン設定」が変更できませんが、下の入れ替えられるほうでは変更できます。この違いは?

関根 詳細な設定は、とりあえず「彩度」と「コントラスト」、「シャープネス」は変えたいというお客様も多いと思います。そこで基本的な4つのスタイルに関してはメニューの上の方に置いて、詳細設定も3つだけに絞っています。「明度」や「ゾーン設定」までいじりたい場合は入れ換えられるほうでやっていただこうという考えです。

-- 絵が破綻するから基本的なスタイルには詳細設定が少ないという意味では?

左中 いえ、純粋に使い勝手上、そうしています。

-- なるほど。ところで「ゾーン設定」って何ですか?

関根 「ゾーン設定」をプラスにするとダイナミックレンジの上側を拡張して、高輝度が再現できるようになります。明るい方の階調を出すためにシフトするんですよ。そのためにコントラストはいじれないようになっています。

-- 画像判断はしていますか? たとえば上のほうに広く青があれば「空」だから青を強くするとか……。

左中 あまり詳しいことは言えないのですが、いろんなものを取り合わせています。ホワイトバランスの精度も上げて、電球とか夕焼けとか、真っ青な青空とか、そのシーンでの光源の性質は残す方向ですね。

-- モードによってかなり絵が変わりますね。

左中 ただ色を変えているのでなく、階調なども合わせて変えていて、それぞれのレベルでいちばんパフォーマンスが出るように設計しています。ただ、「ポートレート」とかシーンを特定しているものに関しては、かなり絵づくりを絞り込んでいますので、全く違ったものを撮ったときに何か起きる可能性がないわけではないですが。

-- 具体的なシーンを想定しているのは「ポートレート」と「夕景」、「紅葉」などでしょうか。

左中 「夕景」は「風景」をベースに、ホワイトバランスを変更して赤味を残すようなセッティングにしています。「風景」は緑と空を印象的に、「紅葉」は赤や黄色が鮮やかに出るようにしています。

-- 「クリア」と「ライト」の違いは?

左中 階調の取り方が違います。

関根 「ライト」は明るい側を広くとってスッキリとした色再現にします。それとは別に階調をスパッと切ったほうがキラキラさせられることもありますよね。「クリア」はそっちなんです。ガンマカーブを上のほうで寝かすんじゃなくてスパッと切って、白を飛ばすような絵づくりをしています。

-- なるほど。白飛びというとすぐ悪いことのように言う人もいますが、そうとは言い切れないですよね。

関根> 白でも素材感を残したいなら上を寝かせるんですが、キラッとしたところは飛ばしたほうがきれいに見えます。「クリア」はそれを積極的にやっているモードです。

-- ISO感度は、オートにするとISO 100に下がらないようですが?

左中 ダイナミックレンジの標準がISO 200からなんです。

-- ISO 100では先程のダイナミックレンジが2/3段広がった状態にならない、というか、ISO 200以上で本来のポテンシャルが発揮されると?

左中 そうです。広がるといってもすべてのシーンでも明らかに違うというわけではないですが、白いところの階調が見えるか見えないかというところで、表現の違いになって現われてきます。

-- お話を聞いていると、たとえばフィルムを目標に云々ではなく、ひたすら一生懸命にきれいな絵にしようとしてでき上がったような印象を受けます。

左中 銀塩出身の方ですとフィルムのイメージがあるので、それを目標にしたほうが分かりやすいのかもしれません。でもフィルムで表現するのとデジタルは違うと思います。

竹倉 狙いとしましては、世の中にハイアマチュア向けのデジタル一眼がたくさんありますけど、総合画質でナンバーワンを目指したいという思いがありました。

-- クリエイティブスタイルはスムーズに設計できましたか?

左中 14種類の階調カーブを設計するだけでもものすごく時間がかかりました。その分、ぜひみなさんに使っていただきたいと思います。

-- どのカメラも良くなってきて、あとは超高感度とかライブビューとか、そういう発展しかないのかと思っていましたが、α700を見て、絵づくりでもまだやることはあるんだなと、そう思いました。

左中 ありがとうございます。今までの苦労が報われた気がします。

-- 今日はありがとうございました。

α700の作例。抜けの悪い曇りだったが、とてもリアルに撮れた
DT16-105mm F3.5-5.6 / L+Fine(JPEG) / 105mm(158mm相当) / 絞り優先AE(F9、1/160秒) / ISO400 / WB:オート / CS:スタンダード
オリジナル画像はこちら

祭りの風景。日なたでも日陰でも表情がちゃんと見える
DT16-105mm F3.5-5.6 / L+Fine(JPEG) / 35mm(53mm相当) / 絞り優先AE、補正+0.3EV(F8、1/250秒) / ISO200 / WB:オート / CS:スタンダード
オリジナル画像はこちら

日が傾いてきたころ、露出を落として撮影。αの色
DT16-105mm F3.5-5.6 / L+Fine(JPEG) / 16mm(24mm相当) / 絞り優先AE、補正-1EV(F3.5、1/400秒) / ISO200 / WB:オート / CS:スタンダード
オリジナル画像はこちら

夜、手持ちで撮影。手ブレ補正もちゃんと効いている
DT16-105mm F3.5-5.6 / L+Fine(JPEG) / 16mm(24mm相当) / 絞り優先AE(F4.5、1/8秒) / ISO800 / WB:オート / CS:スタンダード
オリジナル画像はこちら