米国2位の携帯電話事業者Verizon Wirelessは29日(現地時間)、同社の第4世代(4G)ネットワーク網としてLTE(Long Term Evolution)を使ったインフラの開発と構築を始めると発表した。LTEは3GPP内で標準化が進められている、データ通信を主眼にした無線ブロードバンド通信技術。同社によれば、2008年にもLTE導入に向けたトライアルプログラムを開始する計画だといい、近い将来でのサービスインに向けて動き出す。

Verizon Wirelessは、米国の地域通信会社Verizon Communicationsと英国の携帯電話事業者Vodafoneが設立した合弁会社。CDMA2000方式で全米に携帯電話サービスを展開しており、米Cingular Wireless(現AT&T)が米AT&T Wirelessを吸収・合併するまでは全米第1位の契約者数を誇っていた。現在でも両社が僅差でシェアを争っている。ライバルのAT&TがGSMの延長線上にあるW-CDMA/HSDPA方式で第3世代(3G)ネットワーク網を広げているのに対し、VerizonはCDMA2000/EV-DO方式で3Gネットワーク網を広げている。今回同社は4Gネットワークのサービスインに際し、欧州のメーカーが多数参加するLTEのほうを選択したことになる。

早くも動き出しつつある4Gへの流れだが、業界標準を巡っては今回のLTEをはじめ、モバイルWiMAXなど複数の規格が覇権を競っている。Verizonが2~3Gで選択したCDMA方式は日米韓など比較的限られた地域でのみ使用できるものだが、一方のGSM方式は欧州を中心に日本と韓国を除く多くの国で採用され、事実上のデファクトスタンダードとなっている。LTEの策定にあたっては、Alcatel-Lucent、Ericsson、France Telecom/Orange、Nokia、Nokia Siemens Networks、Nortel、T-Mobile、Vodafoneなどの欧州を中心とした企業連合が初期メンバーとして参加しており、最もGSMの系譜に近い技術だといえるかもしれない。また今回、VerizonがLTEへの参加をアナウンスしたことで、今後のLTE普及にさらなる弾みがつく可能性がある。

2008年スタート予定のトライアルでは、機器提供ベンダーとしてAlcatel-Lucent、Ericsson、Motorola、Nokia-Siemens、Nortelの名前が挙がっている。また4G端末の提供には、既存の大手携帯電話メーカーだけでなく、家電メーカーを含むより幅広いルートとの交渉を進めていくと述べている。「今回の4G参入計画の発表は、先日のOpen Developmentイニシアチブと併せ、Verizon Wirelessにとっての大きな成長チャンスにつながるだろう」と米Verizon Wireless CFOのDoreen Toben氏は述べている。