先日、NVIDIAが65nmプロセスの「GeForce 8800 GT」をリリースしたばかりだが、GPU業界の場合、"右の頬を打たれたら左の頬を打ち返す"が如くの反撃が行われるのはもはやお約束である。最近ちょっと沈黙気味だったAMD(ATI)が放った反撃こそが、新世代GPU「ATI Radeon HD 3870」および「ATI Radeon HD 3850」である。そこで今回は、ライバルとなるNVIDIA「GeForce 8800 GT」とのベンチマーク対決を交えつつ、ファーストインプレッションとして、パフォーマンスを中心に「ATI Radeon HD 3800」シリーズの注目ポイントをチェックしてみたい。

スーパーミドルレンジたる「ATI Radeon HD 3800」シリーズのポジション

まず、「ATI Radeon HD 3800」シリーズからGPU型番の表記ルールが変わっている点に注意したい。基本的に4ケタの数字の大小だけで判断できるようになり、下2ケタが「70」だと従来の「XT」相当、「50」だと「PRO」相当を意味している。今回リリースされた「ATI Radeon HD 3800」シリーズは、エンスージアスト向けのハイエンドGPUではなく、AMDの現ラインナップにおいては、ATI Radeon 2600シリーズと2900シリーズの中間に位置付けられる、いわば"準ハイエンド"、あるいは"スーパーミドルレンジクラス"というべき性格のGPUであり、同社のラインナップに欠けていた、「150~250ドル」という価格レンジを埋める存在となっている。

動作クロックの高い「ATI Radeon HD 3870」(左)は隣接スロットを占有する大型クーラーを搭載。「ATI Radeon HD 3850」(右)は1スロットタイプの冷却システムを採用する。補助電源コネクタはいずれも6ピンタイプ1基を備える

ATI Radeon HD 3800シリーズの注目ポイントは「55nmプロセスルールの採用」および「Direct X10.1のサポート」、そして「PCI Express 2.0への対応」といったところである。80nmプロセスルールで製造されているATI Radeon HD 2900 XTは、性能の割に消費電力が大きい点が問題視されたが、55nmプロセスルールに移行することによって、いわゆるワット性能の向上を狙っている。従来、ノート向けのGPUに搭載されていた省電力機能「PowerPlay」が盛り込まれていることからも、省電力化へのこだわりが見受けられる。

ATI Radeon HD 3870 ATI Radeon HD 3850 ATI Radeon HD 2900 XT NVIDIA GeForce 8800 GT
SP数 320 320 320 112
コアクロック 775MHz+ 670MHz 740MHz 600MHz
メモリクロック 2.25GHz 1.66GHz 1.65GHz 1.8GHz
ビデオメモリ 512MB 256MB 512MB 512MB
メモリバス幅 256bit 256bit 512bit 256bit
プロセスルール 55nm 55nm 80nm 65nm
UVD ×
(PureVideo HD)
Direct X 10.1 10.1 10 10

Windows VistaのService Pack 1(SP1)で採用されるDirect X10.1(Shader Model 4.1)への完全対応は、既存のDirect X10世代のGPUを買い控えていたユーザーにとっては朗報かもしれない。まだSP1の環境が揃わないため、詳しい解説は割愛するが、少なくともSP1のリリース後もDirect Xの機能にフル対応したGPUとして使い続けられるという点は、現時点では未対応のNVIDIAに大きな差をつけたといえる。PCI Express 2.0への対応については、NVIDIAにGeForce 8800 GTで先んじられたが、こちらは今すぐ必要というよりも、将来増大するであろうグラフィックスバスの帯域を確保するための先行投資という感が強い。

GPU内部の構造はATI Radeon HD 2900 XTの設計をそのまま使ったもので、目新しい点はない。ブロック図に表れないレベルの変更によってDirect X10.1対応に最適化させたといった感じである。ただし、メモリバス幅はATI Radeon HD 2900 XTの半分となる256bitに減らされている点に注意したい。AMD側の説明では、GPU内のメモリコントローラの挙動を最適化することで、1クロック当たりのパフォーマンスは同等、ということらしい。となると、メモリバス幅を512bitに戻した"真の次世代ハイエンド"が出てくるのではないかと気になるところだが、それはまた先の話である。