世界に広がるソフトウエア開発者コミュニティ

数年前までソフトウエア開発は一部の国や地域に集中していた。ところが最近では、インターネットを通じて豊富な情報入手と効率的なコミュニケーションが可能になり、開発者コミュニティの急速な分散化が進んでいる。特に成長市場と呼ばれる地域の伸びがめざましいそうだ。現在Intelは米国のほか、中国や台湾でも開発者会議Intel Developer Forum (IDF)を開催しているが、世界中に散らばるソフトウエア開発者を隈なく支援し、その才能を活用するには限界がある。そこで同社は従来スタイルの開発者支援に加えて、インターネット時代に即したネットコミュニティ型の開発者支援強化に乗り出した。

2006年~2011年で予想されるソフトウエア開発者コミュニティの成長率。成長市場での伸びが著しい

ブレークスルーに興味を持ち、コラボレーションと競争に同じように突き動かされる。分散化が進んでも変わらない開発者の特徴に応じたサポートが必要

開発者向け新サイトWhatif.intel.com

IDF Fall 2007の最終日に基調講演を行ったソフトウエア&ソリューション・グループ担当のゼネラルマネジャーRenee James氏によると、ソフトウエアに対するIntelの戦略は「Intelアーキテクチャで最高に動作するソフトウエアの促進」である。この目的は今も昔も変わらないが、実現の手法として今後は、テクノロジー・ブログを通じた議論、Second Lifeのような仮想世界での開発者サポート、技術コンテスト、オープンソースプロジェクトへの貢献などに力を注ぐという。これに伴いIntelは新たな開発者支援サイト「Whatif.intel.com」を開始する計画だ。アイディアや意見、ラボ・プロジェクト、各種ツールやアルファコードなどをソフトウエア開発者と共有する場になるという。

バイスプレジデント兼ソフトウエア&ソリューション・グループ担当のゼネラルマネジャーRenee James氏

企業のスケジュールを軸(James氏はIntelタイムと表現)にした開発者サポートだけではなく、インターネット時代に即したコミュニティ型のサポートを強化

Whatif.intel.com

LessWatts.org賛同を表明したORACLEのLinux Engineering担当バイスプレジデントWim Coekaerts氏

オープンソースへの貢献に関しては、今年7月に立ち上げたMoblin.org (IntelベースのLinux搭載非PCデバイス向け)に続くオープンソースコミュニティ・プロジェクトとして、コンピューティングの電力問題に取り組む「LessWatts.org」の開始が発表された。今日の大規模データセンターでは、サーバの消費電力が規模拡張の制限となるケースが見られる。LessWatts.orgはLinuxサーバを中心に、データセンターと連係するLinux搭載のモバイル端末に至るまで、Linux環境全体における省電力テクノロジーの開発に取り組む。例えば、アイドル時のクロック供給を抑えるためのLinuxカーネルの強化、電力効率の悪いLinuxアプリケーションを調べるPowerTOPツールやLinuxコードの書き換えと電力消費の関係を測定するLinux Battery Life Toolkitの提供などが行われる。システムレベルの取り組みとなるのが特徴だ。また同サイトを通じて、各種ドキュメント、HOWTO、コード・ガイドライン、サンプルコードなどが公開される。すでにOracle、Red Hat、Novellなどが、同プロジェクトのサポートを表明している。

ViridianでSUSE Linuxを動作

ソフトウエア開発者コミュニティの支援という点では、プラットフォームの互換性を高める"バーチャリゼーション"も今後の強化点になる。基調講演では、Microsoftでバーチャリゼーション担当のゼネラルマネージャーを務めるMichael Neil氏が登場し、クアッドコアXeon搭載サーバーで「Windows Server virtualization」(開発コード名: Viridian)のデモを披露。仮想マシン上のゲストOSとしてフットプリントを削減したWindows Server 2008、NovellのSUSE Linux Enterprise Serverを動かして見せた。

Neil氏によると、来週にもWindows Server 2008のRelease Candidate版がリリースされる見通しだという。最終版は2008年第1四半期の提供予定となっており、その後180日以内にWindows Server virtualizationもリリースする計画だ。

Microsoftのバーチャリゼーション担当GMであるMichael Neil氏。Windows Server 2008 RC版がリリース間近というサプライズ・コメント

Windows Server virtualizationの仮想マシン上で動作するSUSE Linux Enterprise Server

基調講演ではまた、マルチコア化が進む中で、パラレリズムを追求する開発者のコミュニティを今後も継続的にサポートする姿勢が示された。マルチコアデベロッパ・センター、専用のブログおよびフォーラム、無料評価ソフト、Webセミナーおよびポッドキャスト、Threading Building Blockを含む開発者ツール提供などに加えて、Whatif.intel.comでの取り組みが行われる。すでに世界規模で100を超えるISVがマルチコアに最適化されたアプリケーションを手がけており、ビジュアルリッチな成果の一例としてCAPCOMの「LOST PLANET EXTREME CONDITION」が紹介された。