レノボ・ジャパンは7日、報道関係者向けに大和研究所の公開取材ツアーを開催した。同社の大和研究所はIBM時代からThinkPadの開発拠点であり、現在はレノボのノートPC開発を支える中心拠点となっている。

ThinkPadは元々IBM製のノートPCであったが、2004年に米IBMがパソコン事業を売却したことにより、現在はレノボ(中国の聯想集団)が同製品の開発・販売を手がけている。開発は元IBMのメンバーが引き継いで行っており、新たな人材も積極的に取り入れているという。同社の石田聡子執行役員は、複雑なPCの操作や専門的な知識からユーザーを開放し、本来のビジネスに集中できるようなツールを提供したいと考え、開発していると語り、サービスとサポート分野の充実、筐体の堅牢性の強化、故障率の低減と修理日数の短縮などにも取り組んでいると説明した。

堅牢性を重視する同社では、品質テストに100を超えるテストを設けているのだが、今回はその一部を実際に見学することができた。開閉試験、片もち落下試験、動作ノイズ測定試験、環境試験、加重試験など様々な耐久テストが行われている。

開閉試験はアームで液晶デイスプレイ側筐体を一定の速度で開閉を数万回繰り返す。ヒンジ部分の耐久性や液晶パネルへの影響などをテストする。

開閉テストの様子

ロボットアームで液晶を開閉

加重試験は筐体に連続的に圧力をかけ、耐久性をテストする。重量や位置などを変え、様々な状況を想定し、テストする。ThinkPadは女性の体重程度の重量に耐えられる堅牢性をもつのだという。

加重試験は重量や場所を変え何度も行われる

女性の体重程度の加重をかける

環境試験は、-40~70度の温度を設定可能な環境試験室で内部デバイスの動作チュックを行う。

環境試験室内。様々な温度・湿度の設定が可能

環境試験室のオペレーションルーム

動作ノイズ測定試験は部屋一面が吸音素材で覆われ、音がほとんど反響しない半無反響室や、音が均一に反響する残響試験室でノートPCの周りにマイクを立て、測定プログラムを実行し、ファンやHDDから出るノイズの距離や方向を計測する。

音がほとんど反響しない半無反響室

音が均一に反響する残響試験室

電磁波測定試験は外からの電磁波をシャットアウトした部屋で行い、巨大なアンテナを使用してThinkPadが放出する電磁波を測定する。床に組み込まれたターンテーブルが回転し、全方位の電磁波を計測できる。

ターンテーブルの上のThinkPad。全方位の電磁波を測定

測定アンテナ。対象物とアンテナの距離は約10m

振動・衝撃試験では撮影の許可が下りなかったが、6面すべての方向からの落下試験を行っていた。具体的には、膝の上から落とした距離を想定した約40~50センチからの落下によって、内部デバイス、筐体の耐久性をテストする内容。また、動作中のThinkPadの隅を持ち上げ数センチの高さから落下させる角落下試験も行い、自動的にセンサーの感度レベルを調整してHDDを保護する技術「アクティブプロテクション」が間に合わない場合での動作チェックを行う。そのほか、振動試験では持続的に振動させることでストレスを与え、内部デバイスへの負荷を計測していた。

同社が、ビジネスPCには何があっても仕事が続けられる、何があってもデータが守られている。ThinkPadはビジネスの効率を妨げない製品つくりを目指す――そう宣言する通り、過酷なテストに耐えるThinkPadは、堅牢性への妥協のないこだわりを持つ製品となっていた。

レノボになって研究開発体制に変化はないかという問いに対し、石田聡子執行役員は「IBM時代、ThikPadの開発は事業全体の中で優先順位が高くなかったが、レノボはPC開発が本業の会社なので非常に開発環境がよくなった。年々リペア率が下がってきており、レノボになって製品のクオリティは上がっている」と回答した。また、レノボブランドの認知度を広める為、ブランディングにも力を入れ、オリンピック、NBA、F1、東京ヤクルトスワローズなどのスポンサーシップ、首都圏・関西での交通広告の充実など広告展開も積極的に行っているという。