新しい日常において、テレワークは定着した勤務形態となりつつあります。と、同時に多くの課題も見えてきました。在宅勤務のパフォーマンスを向上させるために、企業にはどんなことが求められるのでしょうか? アイディエーションファームを掲げ、数々の企業の新規事業創出をサポートしてきた株式会社フィラメント 代表取締役CEO 角 勝氏に、新たな働き方の課題と可能性について、お話を伺います。

オンラインのコミュニケーションには、何が欠けてしまっているのか?

──角さんは大阪市の職員として20年間勤務されたあと、2015年に、新規事業創出を手がけるフィラメントを起業されています。まずはこの経緯について教えてください。

区役所の税務課や福祉局などを経て、公務員の最後の3年間は「大阪イノベーションハブ」の立ち上げに関わったのですが、この事業は途中で規模が10分の1にも縮小されてしまったんです。でも、それはチャンスだと感じました。ハコが小さくなれば、コンテンツを充実させやすくなるからです。

あちこちのイベントに顔を出してFacebookで友達申請したり、パーティー会場の出口でビラを配ってプレゼンしたりと続けた結果、「おもろい公務員がおる」と注目してもらえるようになり、多くの企業と連携することができました。自分はオープンイノベーションに関わることが天職なのだな、と感じるようになったきっかけです。

  • 株式会社フィラメント 代表取締役CEO
    角 勝氏

──現在、フィラメントではどのような事業を手がけているのでしょうか?

企業内における新規事業創出のサポーターとして、たとえば、NTTコミュニケーションズの"Business Innovation Challenge"を全面的に支援しています。3年近く、伴走を続けてきたのですが、誰もが使える仕事場をリアルタイム検索できる「dropin」や、スマホの動画から骨格の動きを推測して正しい運動フォームを教えてくれる「AnyMotion」など、多様なサービスが次々と生まれてきました。

──しかし、コロナ禍のなかでは、新規事業創出を目指すチームに定期的に会ってメンタリングすることは、難しくありませんか?

それが、コロナ以降は完全にリモートになったのですが、びっくりするほどスムーズに移行ができているんです。フィラメントでも、基本的に全員テレワークにしています。オンラインでのコミュニケーションには、リアルと比べて欠落しがちなこともありますが、それを補っていけば、うまいことまわるんです。

──オンラインのコミュニケーションに欠落しがちなこととは、一体なんでしょうか?

それは「雑談」です。直接会ったときは、無意識のうちに週末の出来事を聞いたり、世間話をしたりすることってよくありますよね。それは仕事とは関係無いじゃないか、と思うかもしれませんが、仕事というのは、お互いのプライベートな部分を含めた余白的なコミュニケーションを通じて、「あなたがそういうなら…(やってみます)」と自然に思えるような信頼関係をつくるからこそ、スムーズに進むものなのです。私は公務員時代から調整役が多いのですが、色んな人と飲みに行って、単なる仕事を越えた、「仲間」とか「同好の士」とか、そんな関係性を築くことを意識してきました。

テレワークの時代だからこそ、イノベーションが生み出せる

──現在は、気軽に飲みに行くこともなかなかできなくなってしまいました。リモートワークを円滑にするために、角さんはどのような工夫をされているのでしょうか?

フィラメントでは、毎日30分、オンラインで雑談するだけの時間「フィーカ」を設けています。フィーカとは、スウェーデン語でコーヒーブレイクのことです。

自粛期間中はみんな雑談に飢えていたようで、最初は社内だけで始めたフィーカですが、週一で社外の方も参加するようなりました。今週のゲストは金融業界から、来週は物流からと、ちょっとした異業種交流会のような気分です。ゲストのみなさんも仕事以外の話をするのが新鮮なようで「もうこんな時間!?楽しかった」と言ってくださいます。

──そうしたゲストフィーカは、角さんのおっしゃる「テレコラボ」に通じるものがあるように感じます。

そうですね。テレワークが急速に進んだことによって、社内外のへだたり無く、さまざまな人と信頼を構築し、新たなプロジェクトを素早く進めていく「テレコラボレーション(テレコラボ)」が可能になってきました。

私は最近、デスクではなくソファでよく仕事をしています。リラックスした気分のまま、仕事を通じて仲良くなった人と話を進めていく。楽しい時間にした方がパフォーマンスは上がりますし、充実感も違います。

──最もリラックスできる自宅こそが、オープンイノベーションを起こせる場だった、というのは非常に面白いですね。ちなみに、雑談が盛り上がるようなコツなどはあるのでしょうか?

社内でフィーカをするときは、仕事の話はせずに、なんなら喋らなくてもよくて、漫画を読んでもいいし、寝ててもいいというルールにしています。そうした自由で、安心できる場をつくると雑談は弾みます。

それから、雑談にはちょうどいい規模があります。ビジネスチャットで「雑談ルーム」を作っても、誰も書かなかったりすることがありますよね。数十人、数百人で雑談しろと言っても無理な話です。気心が知れた4~5人くらいまでが適正でしょう。

オンライン飲み会もこの人数を超えると、人の話を聞いているばかりになってしまいます。マネージャーが部署でのオンライン飲みを発案したとしても、上司への忖度が強要されそうな雰囲気だったりとかで参加者がしんどい思いを抱えてしまうのなら、完全に逆効果。やらない方が良いです。

──ただ、相手の状況が見えない在宅勤務では多くのマネージャーが不安を抱えていると思います。この点についてはどうでしょうか。

先日、レノボ・ジャパンCEOのデビット・ベネットさんと話をさせてもらいましたが、デビットさんは『部下に仕事を任せた後は"ブラックボックス"なんだ。相手を信じて、ひたすら待つことが大事』とおっしゃっていました。

自分の過去の成功体験をもとに部下にアドバイスしても、それが相手にフィットするとは限りません。社会も目まぐるしく変化しています。7年前に大阪イノベーションハブを立ち上げたときに僕がやっていたようなFacebookの使い方は、もう難しいでしょう。必要ならばサポートをするけれど、基本的には部下が自分自身で乗り越えることを信じて待つ。そんな文化を会社に育むことが必要だと思います。

「自分は信頼されている。尊重されている」と思ってもらえるくらい相手を信じ切ることが、テレワーク時代のいま、会社の引力を保つ方法なのではないでしょうか。

在宅勤務のパフォーマンスを向上させるオススメのツール

──さきほど「ソファでよく仕事をしている」とおっしゃっていましたが、在宅勤務のパフォーマンスを向上させるためのツールなどがありましたら、教えて下さい。

ソファで仕事をするときは、「クッションテーブル」をよく使っています。膝上にクッション部分がフィットして、安定して打鍵することができますからオススメです。

  • 角氏愛用のクッションテーブル

デスクにはマウントアームでモニタを設置しており、ノートPCと接続できるようにしています。アームにはリングライトも付けていて、これは、ビデオ通話やYouTubeを配信するときに顔が明るく見えるようにするためです。

それから、私はオンラインのミーティングのときも、ホワイトボードを使ってメモを取っています。PCでテキストを打ち込むと、つい「綺麗にまとめよう」と思ってしまうのですが、手書きならば素直にアイデアを殴り書きすることができるからです。ミーティング後は、ホワイトボードの写真を撮ってメンバーに共有しています。

  • 第1回 フィラメント 角氏_003
  • 第1回 フィラメント 角氏_004
  • 角氏の自宅―取材に応じてくれたデスク周り(左)だけでなく、リビング(右)にも快適に勤務するためのさまざま工夫が凝らされている

──テレワークに適したPC端末については、どのようにお考えでしょうか?

フィラメントでは、1日に20回以上ビデオミーティングをすることもあります。端末側の処理負担も大きいですから、みんなには、Intel Core i7以上のスペックでメモリも一番良いものを選ぶように伝えています。

また、どこでも仕事をするにあたって、キーボードまで持ち歩くのは大変ですから、 キートップが曲面になっていて打ちやすい「シリンドリカル・キーボード(※)」のPC端末が良いと個人的には思います。

──ありがとうございました。

(※)シリンドリカル・キーボード

キーボードの種類のひとつ。ボタンの上部(キートップ)が凹んでいるのが特徴で、隣のキーを間違って押下するのを防ぐ効果がある。写真はLenovo プリファード プロ II USBキーボード


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LenovoPROについて

Lenovoの法人専用ストア「LenovoPRO」では、一社ごとに専属スタッフが担当し、角氏がおすすめしていたIntel Core i7以上のスペックを持つPCをはじめ、Lenovo製品の最適な購入を支援します。テレワークや在宅勤務への対応といった課題をお持ちの方は、Web上からはもちろん、お電話でもご相談いただけます。

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