クラウドを活用したアプリケーション開発で標準的に利用されるようになってきたコンテナとKubernetes。それにともない、Kubernetes上でデータマネジメントをどう行うかが企業の大きな課題になってきている。2021年2月25~26日にオンライン開催されたネットアップの年次イベント「NetApp INSIGHT Japan」でも、コンテナとKubernetesをテーマにした数多くのセッションが実施された。そのなかから4つの注目セッションをピックアップし、Kubernetesの現状やデータマネジメントへのアプローチ、ユーザーの活用事例、今後の展望を紹介していこう。

Kubernetesに対する企業の向き合い方は? サイバーエージェントやゼットラボが対談

パネルディスカッション「対談:Kubernetesの現状とこれから」では、Publickeyの新野淳一氏をモデレータに、サイバーエージェントの青山真也氏、ゼットラボの坂下幸徳氏、ネットアップの大野靖夫氏がパネラーとして参加し、Kubernetesの動向や、企業としての向き合い方、今後の展望について議論した。

サイバーエージェントは機械学習の社内基盤でもKubernetesを活用し、ゼットラボではヤフーがエンドユーザーに提供する多くのサービスでKubernetesを採用しているという。両社とも新しいサービスは基本的にKubernetesを前提に構築するようになっており、「仮想マシンを利用するシーンはだいぶ少なくなっています」(青山氏)、「ストレージを取り扱うためのCSI(Container Storage Interface)のように、多くのAPIがベータから外れ、1.0としてGA(一般提供)されています」(坂下氏)と、機能が成熟しているとの認識を示した。

Kubernetesはコンテナの立ち上げや廃棄が簡単にできることから、開発のリリースサイクルを高めることがメリットだが、一方で、データベースのようなデータを保持するステートフルアプリケーションは苦手とされてきた。そんななか、坂下氏は「ステートフルアプリケーションも稼働率の考え方を変えることで対応できる」とし、年に数時間という単位で確保していたアップデート時間を月に数分に分割する考え方を紹介した。

一般的なエンタープライズストレージもCSIドライバーを通して利用することで、スナップショットやクローン、DRなどのストレージの機能をKubernetes環境で利用できるようになる。クラウドでは、OSSの分散ストレージ技術も提供されているが、運用が複雑になりやすいという。これにより「エンタープライズストレージを利用することで、システムを横断した管理ができ、運用負荷も低減できる」(青山氏)、「さまざまな機能と連携させ、一連の作業を自動化しやすい」(坂下氏)というメリットがあるとした。

ストレージを選定する際は「CSIに準拠しているか」(青山氏)、「Kubernetesの早いリリースサイクルに追随できるか、企業としてその文化を持っているか」(坂下氏)が重要だという。ネットアップでは、NetAppストレージをKubernetesから利用できるようにするCSIドライバー「Trident」をOSSとして提供している。サイバーエージェントとYahoo! JAPANは、TridentとNetAppストレージを活用して、ステートフルアプリケーションを稼働させている。大野氏は「Tridentは、CSIドライバーがサポートされた当初から開発し続けています。新しいプロジェクトとしてNetApp Astraにも取り組んでいます」と、ネットアップがKubernetesのサポートに積極的に取り組んでいることを強調した。

サイバーエージェント、ゼットラボとヤフー、Project Astraによる具体的な取り組みについては、単独セッションで詳細が語られている。Kubernetesにおける課題をどのように解消してきたのか、以下その内容をお伝えしよう。