1907年設立の名門企業として知られるAGC株式会社は現在、中期経営計画 AGC plus-2023のもと、既存コア事業に加えて3つの戦略事業への集中投資を推進している。

M&Aによる戦略事業の強化が進む中、同社IT部門が直面したのは、エンタープライズからベンチャー・スタートアップまで含まれるグループ企業の多様なニーズにスムーズに対応できる共通データプラットフォームの構築という課題だった。

ユーザーによって、データプラットフォームに求める要求だけでなくデータ活用の習熟度も異なるため、その選定においては多様なニーズに柔軟に応えられることが強く求められたという。

同社は、いかにしてグローバルにおけるデータプラットフォームの標準化を進めたのだろうか。

DX推進の観点からも共通データプラットフォームの実現が課題に

1907年の設立以来、祖業であるガラス事業を中核にグローバルな成長を続けてきた旭硝子株式会社がAGC株式会社(以下、AGC)に社名を変更したのは2018年7月のことだ。同時に、グループの情報発信の軸となるブランドステーメントとして、新たに“Your Dreams, Our Challenge”を制定。「独自の素材・ソリューションにより、お客様を始めとする社会に価値を提供し続けられる企業グループでありたい」というステートメントに基づき、新たな成長への取り組みをスタートさせている。

日本・アジア、欧州、米州の3極体制をベースに、30を超える国・地域で事業を展開するAGCグループの企業数は206社、従業員数は5万5999名に及ぶ(2021年12月末時点)。2021年策定の中期経営計画 AGC plus-2023では、ガラス事業、電子事業、化学品事業、セラミックス事業のコア事業に対し、モビリティ、エレクトロニクス、ライフサイエンスの3分野を戦略事業として位置づけ、M&Aを含めた積極投資を推進している。

事業をグローバル展開するAGCの中で、グループのDX基盤の整備を推進しているのが、情報システム部である。標準ERPの導入、AWSによるクラウド化の推進、TableauやTableau Prepの採用と運用に向けた教育をはじめとする取り組みは、300名がBIツールを利用してデータ分析を行い、そのレポートを経営層、マネージャー層3000名以上が閲覧する環境の実現に結実している。

同社が新たな成長への取り組みを進める中、情報システム部が新たに直面したのは、ERPに連携するデータプラットフォームのグローバルでの標準化という新たな課題だった。その難しさを情報システム部 グローバルIT戦略室 標準ERPグループ マネージャーの田中 丈二氏はこう説明する。

「中期経営計画が掲げる戦略事業への積極投資により、近年AGCグループは事業の多様化だけでなく、エンタープライズからベンチャー、スタートアップまで企業規模の多様化も進んでいます。こうした変化は、なによりも分析スピード高速化を求めるユーザーがいる一方でコストを最重視するユーザーがいるなど、データプラットフォームに対するニーズの多様化にもつながっています。またデータ活用の習熟度もそれぞれ違い、基盤の構築からすべて自社で行いたいというニーズもあります。DX推進という観点からもデータプラットフォームの標準化は大きな意味を持ちますが、その実現には、多様なニーズに柔軟に応えられるプラットフォームが強く求められることになりました」

多様なニーズに柔軟に応えられるSnowflakeでデータプラットフォームを構築

新たなデータプラットフォームの構築において標準ERPグループが最重視したのは、グループ各社の多様なニーズに一つのツールで対応できることだった。

「おそらくAWSが提供するサービスを組み合わせれば、大部分のニーズに対応できるはずです。でもそれを事業部門に提供するには、その都度我々が多種多様なツールの使い方を学ぶことからはじめる必要があります。この方法では構築に1、2カ月は必要になり、現場が求めるスピード感に追随するのは難しいのが現実です。こうした中、思ったのはBIツールにおけるTableauのように、一つのツールで多様なニーズに柔軟に対応できるプラットフォームはないのだろうかという疑問でした」(田中氏)

各国のITリテラシーの違いもあり、AGCはこれまでアジア、欧州、米州のIT部門が各リージョンに対応してきた。田中氏の所属する標準ERPグループが新データプラットフォームの調査を行う中、そのレーダーに乗ったのは、欧州リージョンで先行して利用がスタートしていたSnowflakeだった。

「欧州リージョンのメンバーと意見交換をしたところ、Snowflakeはコンピューティングリソースやコスト面の柔軟性が極めて高く、私たちがデータプラットフォームに求めるものに合致していることが分かりました。先行例にとらわれず、ゼロベースで検討を進める考え方もありますが、一歩先に進んでいる人たちがいるなら、それに合わせた方が学習時間を短縮できます。SnowflakeのPoCを行うことを決断したのはそれが第一の理由でした」(田中氏)

必要に応じて必要なコンピューティングリソースを利用できることも標準ERPグループがSnowflakeを高く評価した理由の一つである。

「一般的な時間課金型のDWHは、ピークに合わせてリソースを確保する必要があるため、24時間動かし続けると莫大なコストが発生します。もちろん、利用状況に応じて適切に管理できればその心配はないわけですが、24時間誰かがDWHを利用するグローバル企業の場合、誰がその役割を担うのかという話になります。利用の都度、ユーザーがリソースのサイズを選ぶSnowflakeは、この問題の解決という観点でもとても魅力的でした」(田中氏)

課題だった公平なコスト分担にも大きな手応えを得る

同社はSnowflake導入の第一段階として、DWH構築に定評あるソリューションベンダーである株式会社ジールのサポートによるPoCを2021年6~8月の2カ月にわたり実施。評価基準として設定されたのは、①セキュリティ、②権限管理、③利用状況の可視化、④ERP、BIツールとの親和性の4項目だ。PoCを担当した情報システム部 グローバルIT戦略室 標準ERPグループのネオ ウェイハン氏はそれぞれの狙いをこう説明する。

「セキュリティは主にSLAの検証を行いました。権限管理については、Azure ADとの連携によるアクセス権限に加え、権限に応じたマスキングについても検証を行いました。また利用状況の可視化は、各部門の利用実態に応じた課金が正しく行われるかという観点での検証になります。Snowflakeの場合、必要に応じてカンパニーの下に組織を設定し、それぞれのコンピューティングリソース使用量を管理する機能が備わっていますが、主にその機能を検証しました。ERP、BIツールとの親和性についてはAzure AD連携によるBIツールからのアクセス制御について検証を行いました」

それらの中で、共通データプラットフォームの構築において特に大きな意味を持つのが、利用状況の可視化の実現である。

「どの部門がどれだけリソースを使っているのか不透明な状況の場合、アカウント数に応じた頭割りでコストを分担してもら うことが一般的ですが、利用実態を反映しないこのやり方は必ずユーザーの不公平感につながります。それだけに利用実態に応じた費用分担が可能なSnowflakeはデータプラットフォームの共通化においてとても大きな意味を持ちます」(田中氏)

DX推進でも大きな役割を果たすことを期待

ダミーデータによるPoCを終えた標準ERPグループは現在、標準ERPとSnowflakeの連携テストに向けた準備を進めている。実運用にはまだ複数のステップを踏む必要があるが、グローバル共通のデータプラットフォームに対する期待は大きい。

「データプラットフォームの一元化でまず挙げられるのは、データドリブン経営の実現における効果です。ERPに蓄積されたデータをもとに各種管理指標(KPI)を分析することになりますが、Snowflakeによるデータプラットフォームの一元化は、新たにグループに加わった企業も含め、各拠点の実績を客観的に評価することを可能にします。実際の運用については今後検討を進めることになりますが、会計関連データをはじめ、ERPの多様なデータがSnowflakeに流れ込むことになると思います」(田中氏)

AGCの中期経営計画では、2025年までにデータサイエンスで自部門の課題解決を行う上級データサイエンス人材100名、入門・基礎応用レベルのデータサイエンス人材5000名を育成する目標を掲げている。Snowflakeによるグローバルでのデータプラットフォームの一元化は、ERPデータを皮切りに、他のデータソースにも展開することが期待されている。

「PoCで実感したのは、SnowflakeのUIの洗練度でした。大部分の操作がUIを通して行えるため、CLIに不慣れなメンバーでも運用をすることが可能ではないかと感じています。またデータの民主化という観点においても、使いやすいDWHはとても大きな意味を持つと考えています」(田中氏)

■事例先企業情報
企業:AGC株式会社
所在地:東京都千代田区丸の内一丁目5番1号

■ご利用のSnowflakeワークロード
・データエンジニアリング
・データレイク
・データウェアハウス
・データサイエンス
・データアプリケーション
・データシェアリング

■このストーリーのハイライト
・多様なニーズに対応可能なデータプラットフォームの構築
・受益者が公平にコスト負担できる環境を目指す
・データプラットフォーム管理の容易さを追求

Snowflakeについて

Snowflakeは、あらゆる組織がSnowflakeデータクラウドを用いて自らのデータを最大限に活用するのを支援します。多くのユーザー企業がデータクラウ ドを利用して、サイロ化したデータの統合、データの発見と安全な共有、多様な人工知能(AI)/機械学習(ML)および分析ワークロードの実行を進めてい ます。データやユーザーがどこに存在するかに関係なく、Snowflakeは複数のクラウドと地域にまたがり単一のデータ体験を提供します。多くの業界の何 千社もの企業(2023年7月31日時点で、2023年Forbes Global 2000社(G2K)1 のうち639社を含む)が、Snowflakeデータクラウドを全社で幅広いビジ ネスに活用しています。詳細については、snowflake.com/ja/をご覧ください。

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※本記事はSnowflakeから提供を受けております。

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