ビットコインやイーサリアムといった暗号資産に用いられる「ブロックチェーン」の技術が、大きな注目を集めています。多数のユーザー同士がシステムを管理し合う "分散型" ネットワークを構築することでデータの偽造や改竄を防ぐブロックチェーンは、インターネット上であっても高い透明性や信頼性の確保を可能にする技術です。いま、多くの企業がブロックチェーンをビジネスに適用させるべく、検討を始めています。

この新たな技術の普及を推し進めるべく活躍しているスタートアップが、日本にあります。テクノロジーアクセラレーターとして 2014 年から活動している TECHFUND です。同社は、ブロックチェーン アプリケーションの開発クラウド サービスである ACCEL BaaS の提供や、暗号資産による事業資金調達 (ICO/STO) サポートなどを通じて、スタートアップを総合的に支援しています。ブロックチェーンの普及による新たなイノベーション創出に向けて邁進する同社のサービスは、Microsoft Azure を基盤としています。

ブロックチェーンの正しい認知によって、社会にイノベーションをもたらす

TECHFUND は、スタートアップを技術的に支援するアクセラレーターとして 2014 年に設立されました。現在、同社はブロックチェーン アプリケーションの開発に必要となる機能をクラウド ベースで提供する "ACCEL BaaS" や、トークン エコノミー (暗号資産による経済圏) を活用した事業支援プログラム "ACCEL PROGRAM for ICO/STO" を展開し、ブロックチェーンを核にしたスタートアップ支援に注力しています。

近年の暗号資産ブームによって、ブロックチェーンという言葉は広く知られるようになりました。しかし、事件報道などによって、誤ったとらえ方をされるケースも少なくありません。こうした「ブロックチェーンの誤解」について語るのは、株式会社TECHFUND 共同代表の松山 雄太 氏です。

「巨額の不正流出事件が相次いで起こったことで、暗号資産だけでなく、ブロックチェーン技術そのものを不安視する声が、残念ながら多くなってしまいました。しかしこれらの事例では、そもそも中央集権的に一企業のサーバーで『秘密鍵』などを取り扱う管理方法が間違っていたのです。当該機関のコンプライアンスから生じたインシデントといえるでしょう。また、ブロックチェーン技術の社会実装において暗号資産ばかりが取り上げられてしまい、暗号資産への熱が冷めてしまったことでブロックチェーンへの熱も冷めてしまったように思います。

ですが、本来ブロックチェーンはインターネットを介して情報を確実に記録、管理、流通できる技術です。通貨以外にも投票や決済、抽選といった機能を持つサービスにメリットがあります。仮想通貨以外の分野にも応用が可能ですし、そのユース ケースがまだ出ていないことこそが本当の課題と言えます。こうしたことが正しく理解され、そしてイノベーションが数多く生まれていくような社会にするために、当社はブロックチェーンの総合支援を提供しています」(松山氏)。

  • TECHFUND Inc. Co-Founder & CEO 松山 雄太 氏

TECHFUND の提供する "ACCEL PROGRAM for ICO/STO" は、ブロックチェーン技術を適切に活用して事業を進められるよう、技術を中心としてビジネスやマーケティングなどの総合的な支援を行うアクセラレーション プログラムです。これまで 4 年間、伴走型のアクセレーターをしてきた当社だからこその支援だといえます。

こうした総合サポートは、スタートアップ側だけでなく、トークン エコノミーを利用するユーザー側にとっても大きなメリットがあります。小切手や株券といった既存の有価証券のように価値が明確化されているものと異なり、トークン エコノミーでは、やり取りされる暗号資産の「価値」が不明瞭なままのケースが多くあります。この特徴を逆手に、詐欺まがいの行為などもおこなわれてしまっているのが現状です。ACCEL PROGRAM for ICO/STO には、このトークンの価値を適正化する効果もあるのです。

「ACCEL PROGRAM for ICO/STO においては、新事業が発行するトークンにおいても、業界ルールに従った適正な設計ができるように支援します。具体的には経済圏が適切に育っていくような設計構築をアドバイスし、法律的に問題がないかというチェックを行って、ともに開発をして行くといった内容です。適正な設計は、その事業に信頼をもたらすことにも繋がります。当社が支援する事業が増えればそれだけ、ユーザー側も安心してブロックチェーン サービスを利用できる環境になることを目指しています。事例を通じて、『ブロックチェーン=安心』という正しい認知を広げていきたいと思っています」(松山 氏)。

さらに松山 氏は、ブロックチェーン アプリケーションの開発においても、壁を感じている企業が多いと言います。

「当社では Web 開発のように仮説検証を素早く回しながら開発できる環境構築のためにACCEL BaaS を提供しています。ブロックチェーン アプリケーションの開発は、現行では、イーサリアムといった既存のブロックチェーン プロトコル上にアプリを構築する方法が一般的です。ただし、Web 開発と違いプロトコルが複数あるため変更時のコストが非常に高い性質や、一度メイン ネットでコントラクトをデプロイしてしまうと修正ができないという性質があるため、自分たちの目指すアプリケーションに合ったプロトコル上で必要なノウハウやスキルを学んで開発していかねばなりません。そのため、機動力のある開発ができず仮説検証に苦しむチームも多いです。そういった状況を打破するため、マルチ プロトコルに対応していて、API 接続で簡単にブロックチェーンの機能を実装できるツールとして ACCEL BaaS を作りました。ウォレット作成や残高確認、コントラクトの実行といった基本的な機能は全て API で用意されています。この開発における課題を解決することができれば、より多くのブロックチェーン アプリケーションが生まれ、ブロックチェーン技術が普及していくのではないでしょうか。こうした技術面の根幹からサポートできるのが当社のサービスの強みであると言えます。」(松山氏)

  • ACCEL BaaS の概要。同サービスでは、特定条件下での処理を自動実行する「スマートコントラクト」についても、開発上の手間を減らすことができるようさまざまなテンプレートを提供している

    ACCEL BaaS の概要。同サービスでは、特定条件下での処理を自動実行する「スマートコントラクト」についても、開発上の手間を減らすことができるようさまざまなテンプレートを提供している

秘密鍵の管理に適した機能を有する Microsoft Azure をサービス基盤に選定

クラウド ベースの ACCEL BaaS は、パブリック クラウドの Microsoft Azure を基盤にしてサービスが提供されています。ACCEL BaaS 上では、ユーザーの API キーを処理したり、個人情報を含むトランザクションを補完したりすることになりますが、ここにおいてなぜ Microsoft Azure が選ばれたのでしょうか。最大の理由はセキュリティにあったと、松山 氏はいいます。

「先ほど述べた通り、過去発生したブロックチェーン関連のインシデントは、提供者のサーバーから秘密鍵と呼ばれる機密情報が漏洩してしまったことが原因でした。ブロックチェーンの事業を展開する上ではセキュリティは極めて重要です。数あるパブリック クラウドの中でも、Microsoft Azure はエンタープライズ用途で数多くの実績があり、最も信頼性が高いと感じました。さらに、セキュリティに関して有効な機能が豊富に揃っているのもポイントです。たとえば、Azure Key Vault によって、トークン、パスワード、証明書、API キーといった情報を強固に保護することができます。また、ユーザーの個人情報にあたる秘密鍵でも、Azure Key Vault によってハッシュ化すればデベロッパーが管理できるようになり、プロジェクトの開発、運用がシンプルになります。こうした信頼性と機能性を考えて、Microsoft Azure を基盤に選定しました」(松山氏)。

"まったく新しいサービスの開発には PaaS や Serverless を組み合わせてインフラ技術者のいらない設計にするのが成功確率を上げることに繋がります。開発者にとって Microsoft Azure を採用することが一番の近道だと考えました。"

-松山 雄太 氏: Co-Founder + CEO
TECHFUND Inc.

Microsoft Azure の有する機能性は、ACCEL BaaS をさらに発展させていくためにも貢献していると言います。現在、NEO や EOS といったプラットフォームに対応できるようアップデート作業が進められていますが、ACCEL BaaS が素早くバージョンアップ対応を進めていけるのは、Azure Cosmos DB や Web Apps などの PaaS や Serverless を組み合わせた設計を採っているからです。こうした設計がもたらす柔軟性は、今後トランザクションが増した場合のスケール アップを容易にすることにも繋がっています。

リリース後、国内外のエンジニアから注目を集める

こうしたサービスとしての優位性以外にも、TECHFUND が Microsoft Azure を選んだ理由がありました。同社がめざすのは、ブロックチェーンの正しい認知を広め、社会課題を解決できるようなイノベーションを支援することです。「マイクロソフトとともに取り組みをすすめることが、当社のビジョン達成の大きな近道だと考えます」と松山 氏は語ります。

「ここ数年、マイクロソフトは、金融領域を中心にブロックチェーン関係の検証実験やサポートに数多く携わっています。また、ブロックチェーンの信頼性を社会に証明していくために業界にコンソーシアムをつくることも構想されています。こうした方向性が、当社のビジョンと同じだと感じました。TECHFUND だけでは社会を変えることは困難ですが、グローバル ベンダーであるマイクロソフトが強力なパートナーとなってくれたことによって、活動の幅が大きく広がったように思います」(松山 氏)。

この期待に応えるべく、マイクロソフトは ACCEL BaaS や ACCEL PROGRAM for ICO/STO のスタート以前から、技術的に、TECHFUND と同社の顧客を支援しています

「おかげさまで 2018 年 6 月に ACCEL BaaS を、8 月に ACCEL PROGRAM for ICO/STO を無事リリースすることができました。ACCEL BaaS は既に国内外で数百人もの開発者に利用いただいており、また ACCEL PROGRAM for ICO/STO も、100 社近いお客さまから相談を頂いています。今後ブロックチェーン事業の成功例をもたらしていくために、大きな一歩が踏み出せたと思います」(松山氏)。

  • ACCEL PROGRAM for ICO/STO では、ビジネス面や法律面の支援にくわえ、長年テクノロジー アクセラレーターとして先進技術を研究してきた TECHFUND の技術サポートのもと、事業をすすめていくことができる

    ACCEL PROGRAM for ICO/STO では、ビジネス面や法律面の支援にくわえ、長年テクノロジー アクセラレーターとして先進技術を研究してきた TECHFUND の技術サポートのもと、事業をすすめていくことができる

ACCEL BaaS や ACCEL PROGRAM for ICO/STO は、企業のブロックチェーン活用を後押しし、また、ユーザーが積極的にブロックチェーン サービスを利用できる世界の実現を加速させていくことでしょう。

多くの業界、組織にとって、ブロックチェーンはいまだに未知の技術であるかもしれません。しかし、この技術は、「インターネット」が登場したときと同じくらい、世界を前進させる可能性を秘めています。TECHFUND のチャレンジによって、いまの情報社会が一歩先へと進むことが期待されます。

  • 松山 雄太 氏

[PR]提供:日本マイクロソフト