グローバルで 12 万人規模の社員を抱える富士通が、社内のデスクトップ環境をクラウドに移行しました。2015 年からオンプレミスで利用していた VMware Horizon によるVDI環境4 万 3,000 人分を Horizon Cloud on Azure へ移行し、システムの運用負荷低減や Teams 会議など快適なマルチメディア コミュニケーションを実現しました。現在、この DaaS ( Desktop as a Service)環境は、富士通が進める全社 DX プロジェクト「Fujitsu Transformation(通称:フジトラ)」や、多様な働き方の実現を目指す「 Work Life Shift 」に欠かせない基盤となっています。大規模なプロジェクトを成功させた背景には、富士通とマイクロソフト、ヴイエムウェアの3社の強力なタッグがありました。

社内DX推進や働き方改革を背景に、VMware Horizon を基盤とした全社VDI化を実現

1935 年の創立以来、技術力を発揮して常に革新を追求し、パーパスとして「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」を掲げる富士通。現在は、世界をリードする DX パートナーとして信頼できるテクノロジー・サービス、ソリューション、製品を幅広く提供して顧客の DX 実現を支援することを目指しています。

顧客の DX 支援の土台として力を入れているのが社内 DX の推進です。グローバル従業員 12 万4,000人(2023 年 3 月末)、売上収益 3 兆 7,137 億円(2023 年 3 月期連結)を誇り、日本を代表する企業である富士通にとって、社内DXの取り組みは一朝一夕に実現するものではありません。そんななか同社では、2020 年から全社DXプロジェクト「フジトラ」を立ち上げ、経営と現場が一体となった持続的な DX の推進に取り組んできました。

同社ではそれまでにも社内の業務改革や DX 推進に向けて、さまざまな IT ツールの提供とシステム環境の整備に取り組んできた経緯があります。2015 年には社員が安全な環境で顧客データを取り扱う業務もふくめ、柔軟な働き方をサポートすることを目指し、VMware Horizon を基盤とした全社VDI(Virtual Desktop Infrastructure) 化を実現します。社内IT部門である Digital Systems Platform本部 End User Services統括部 の吉新 裕保 氏は、こう話します。

「VDI を導入したことで国内 8 万人の社員全員がシンクライアントや FAT 端末上の仮想デスクトップを使い分けながら、顧客のさまざまなニーズに柔軟に対応できるようになりました。そのうえで、2016 年には、グローバルコミュニケーションのための共通基盤として Microsoft 365 を全社導入しました。Microsoft Outlook メールを VDI 環境で利用することで安全性をさらに高められました」(吉新氏)

  • 富士通株式会社 Digital Systems Platform本部 End User Services統括部 シニアディレクター 吉新 裕保 氏

    富士通株式会社 Digital Systems Platform本部 End User Services統括部 シニアディレクター 吉新 裕保 氏

VMware Horizon と Azure を組み合わせた DaaS を目指す

2020 年からは、フジトラと並行するように、新しい働き方のコンセプトとして「Work Life Shift」を掲げ、働く場所やスタイルを問わず、社員が働ける環境を選択できる取り組みをスタートさせました。VMware Horizon と Microsoft 365 をベースにフジトラや Work Life Shift を推進していくなかで、VDI へのニーズや Teams などのクラウドサービスへのニーズが高まっていました。既存のVDI基盤が抱えていた課題を解消する必要がありました。富士通が抱えていた課題は大きく分けて 2 つです。

1 つ目は Teams を活用したリモート会議や通話の品質です。富士通ではグローバル コミュニケーション基盤として Microsoft 365 を利用しており、Teams が主たるコミュニケーションツールとなっています。2015 年に導入された当時は今のようにWeb会議が当たり前ではありませんでした。そのため、多くの人がWeb会議をするようなスペックを見込んでおらず、音声品質に問題が生じていたといいます。

2 つ目は、Windows のバージョンアップです。従来はオンプレミスの VDI 環境にゆとりがあったので、Windows 8.1 環境から徐々に Windows 10 の環境を構築して移行していく構想を立てていました。しかし新型コロナウイルス感染症の拡大により、ほぼ全社員がVDIを使用したため、オンプレミス上での移行が難しくなったのです。

「2 つの課題に加えて、ハードウェア基盤がリプレースの時期を迎えていたこともあり、既存のオンプレミス VDI 環境をクラウドベースの新しい DaaS環境へと刷新することを決めました。また、拡張性や柔軟性、管理負担の軽減といったクラウドのメリットを享受し、システムの運用負担を低減するという狙いもありました」(吉新 氏)

こうして採用されたのが、VMware Horizon Cloud on Microsoft Azure(以下、Horizon Cloud on Azure)でした。Horizon Cloud on Azure は、Microsoft Azure 環境で VMware Horizon を稼働させるソリューションです。吉新 氏とともにプロジェクトをリードした Digital Systems Platform本部 End User Services統括部 マネージャー 深澤 智 氏は Horizon Cloud on Azure 採用の背景を次のように振り返ります。

「次期デスクトップ基盤について全社員にアンケートを行ったところ、全体の半数の約 4 万人が VDIの継続利用を望みました。また、運用面でもVMware Horizon で培ってきたノウハウや経験をいかせることに加え、マルチセッションによるコストダウン効果、Microsoft 365 との親和性の高さによるハイパフォーマンスが期待できました。さらに、会社のコミュニティ基盤となっていたTeams との親和性やセキュリティ、使い勝手など、利用者へのメリットも考慮した結果、Horizon Cloud on Azureを採用することにしました」(深澤 氏)

  • 富士通株式会社 Digital Systems Platform本部 End User Services統括部マネージャー 深澤 智 氏

    富士通株式会社 Digital Systems Platform本部 End User Services統括部マネージャー 深澤 智 氏

富士通、マイクロソフト、ヴイエムウェア、の3社が連携して性能試験や検証を徹底的に行う

約8 万ユーザーに向けたオンプレミスの VMware Horizon 環境は、総数約500台のサーバで稼働し、国内 2 拠点でのディザスター リカバリー(DR)構成で運用するという体制で、運用業務はエンジニア約 20 名が担っていました。仮想デスクトップについては、Windows 8.1 で稼働させており、オフィス業務を主な用途として提供していました。

「業務や用途に応じて多様なマスター イメージを作成しておき、さまざまな働き方に対応できるようにしていました。ただ、その分、運用負担も大きく、システム的にホストに収容する台数や稼働させられる仮想デスクトップの制約もありました。テレワークを中心に働き方が多様化していくなかで、多様なユーザーのニーズにスムーズに応えられないケースも増えていきました」(吉新 氏)

オンプレミスからクラウドへの移行は 2021 年 4月からスタートしました。事前に性能検証を徹底的に行ない、ユーザーに快適な環境を提供するために、Horizon Cloud on Azure では、マスター イメージを標準マスターのみに統一し、性能面については、必要に応じて増強可能としました。

こうして2021 年 4 月に初回リリースされ、2 回にわたって増築しながら、Horizon Cloud on Azure への移行は段階的に進められました。

「最初に 2 万 5,000人分を構築し、その後増築し、オンプレミスと並行稼働しながら、2022 年内までに 4 万 3,000 人分の仮想デスクトップのクラウド移行が完了しました。約 5 カ月でPoC と検証作業、そこから約 3 カ月という短期間で設計から構築まで終えました。さらに 1 年間で 2 回の増築作業を繰り返すという 約4 万人規模の大規模プロジェクトでしたが、目立ったトラブルもなくスムーズに完遂できました。マイクロソフトとヴイエムウェアには多く助けられました」(深澤 氏)

富士通、マイクロソフト、ヴイエムウェア、の 3 社がタッグを組むことで、ユーザーに適切にチューニングされた環境を提供することに成功しました。導入検討段階のサイジングから3 社で協力しながら検証を重ね、本番環境展開前の最終試験でもスクラムを組んで連日のように打ち合わせを行い、パフォーマンスを追求し続けたといいます。

「約 4 万人規模の VDI の移行ということで、マイクロソフト、ヴイエムウェアと連携して性能試験や検証を徹底的に行なったことがプロジェクト成功の 1 つのポイントだと思っています」(深澤 氏)

Teams のメディア最適化機能を大規模環境でブラッシュアップ、グローバルでの正式リリースに貢献

Horizon Cloud on Azure はオンプレミス環境に起因する制約がなくなり、クラウドのメリットを生かしたサービスを提供できるようになります。具体的には、2 つの魅力がありました。

1 つ目の魅力は、Azure上で動作することによって、高パフォーマンス、コスト低減、高可用性を実現できることです。マイクロソフトのバックボーン ネットワークを通じて、Microsoft 365と最短距離で通信できるため、OutlookやOneDriveの高いレスポンス性能が期待できます。また、富士通は従来からVMwareの機能を利用した DR 環境は構築していましたが、Horizon Cloud on Azure の採用により、Azure の東日本リージョンと西日本リージョンを利用した遠隔地DRサイトを簡単に実現しました。

「DR サイトのような大きなコストがかかるシステム構成も、Azure の東西データセンターを活用することで簡単に実施することができます。通常時からアクティブ-アクティブ構成で両サイトを最適に利用する形態で、被災時には、被災したリージョンから対向リージョンに環境を移し、業務を継続できます」(深澤氏)

2 つ目の魅力は、構築や運用時にコストの最適化がしやすいことです。

「Windows 10 マルチセッションを利用すれば、複数ユーザーでの仮想デスクトップを共有できるのでコストを低減できます。また、VMware は、オンプレミスとクラウドの両方で使える VMware Universal License を提供しているため、段階的に環境をクラウドに移行する際に、既存ライセンスを有効に活用することが可能です」(吉新 氏)

それに加えて3 社が協働することで開発が大きく進展した機能もあります。それは、Teams の音声やビデオの処理を接続元の端末で実施することでパフォーマンスを向上させる Teams のメディア最適化機能です。これにより集約率がアップしコスト低減にもつながります。

「Teams のメディア最適化機能は、Horizon Cloud on Azure への移行を決めたときは正式にリリースされていませんでした。今回の 3 社による検証の取り組みが米国の Microsoft やVMware の開発チームにフィードバックされ、Teams のメディア最適化機能のグローバルでの正式リリースに貢献したと聞いています。1 つのプロジェクトを会社の垣根を超えて進めたことで、信頼関係を築くことができましたし、その成果が機能の開発に役立ったことを嬉しく思っています」(吉新 氏)

Horizon Cloud on Azure が提供する機能を積極的に採用して、DaaS の活用シーンを広げていく

Horizon Cloud on Azureへの移行は、従来の課題を解決したことはもちろん、さまざまな効果をもたらしています。

1 つ目の効果は、より高いパフォーマンスと柔軟なリソースの追加が可能なデスクトップ環境を提供できるようになったことです。VDI 利用の継続を表明した約 4 万人に対して、強固なセキュリティで保護された環境を継続しながら、東西リージョンを利用することで最適なコストでより可用性の高い DR 構成を実現しました。

サーバ基盤側のパフォーマンス向上という点では、ユーザー プロファイルを格納するディスクに Azure NetApp Files を採用することで、さらなる性能向上を実現しました。Azure NetApp FilesはAzureの1stパーティのファイルベース ストレージサービスであり、NetApp社のテクノロジーを活用しています。従来のオンプレミス基盤と同等以上のパフォーマンスを実現するために採用したものです。Azure NetApp Filesはストレージの速度や応答性能の高さに加え、ワークロードの増減に応じてパフォーマンスレベルを即座に調整できることがメリットだといいます。

2 つ目の効果は、クラウドサービスのパフォーマンス向上です。仮想デスクトップの性能が向上したことで、DaaS 環境で利用するオフィスソフトや SaaS などの高レスポンスを実現しています。また、Teams のメディア最適化機能で会議などのマルチメディアコミュニケーションも快適に利用できるようになりました。サービスを利用した社員からは「 FAT 端末と比べてまったく遜色ない」という評価をもらうことができたといいます。

3 つ目の効果は、ハードウェアのメンテナンスや老朽化対応から解放されたことです。現在は、オンプレミスのVDI環境からDaaSにすべての仮想デスクトップを移行しました。クラウド移行により、ハードウェアのメンテナンスとリプレースのコストを大幅に削減したといいます。加えて、基盤がオンプレからクラウドに移ったことにより、運用や更新をAzure側のサービスとして対応したことで、運用のリソースが割かれることがなくなり、手間が削減したことも大きな効果だといいます。

「基盤をクラウドに移行したことで、資産管理や予算管理は劇的に楽になりました。これにより、よりよいユーザー体験という価値提供もしやすくなりました。今後は、VMware 製品ベースの基盤を新バージョンに移行する作業に取り組む一方、提供される新機能を積極的に採用して、DaaS の活用シーンを広げていきます」(深澤 氏)

「オンプレミス VDI をクラウド移行したいというニーズは富士通のお客様の中にも強く存在しています。今後はフジトラや Work Life Shift における社内 DXの取り組みをお客様への価値提供につなげていきたいと考えています」(吉新 氏)

Horizon Cloud on Azure は、富士通の多様な働き方を支える欠かせない基盤となりました。マイクロソフトとヴイエムウェアは、クラウド環境においても、富士通の取り組みを強力にサポートしていきます。

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