世界的 DX(デジタルトランスフォーメーション)の大きな波は、日本の産業の柱である“ものづくり”の世界にも押し寄せています。そうした潮流を迅速に捉えて DX を推進しているのが、自動車メーカーであるマツダです。同社では、Azure Virtual Desktop(AVD)を中心とした仮想デスクトップ(VDI)環境を構築することで、全面的にデジタル活用を行える体制を整えています。その経緯と今後の展開について、担当者に話を聞きました。

“世界のマツダ”の DX を支えるマイクロソフトのソリューション

“ものづくり”は長きに渡って日本の産業の屋台骨を支えてきましたが、そのものづくりのなかでもとりわけ世界市場で際立った競争力を発揮し続けているのが自動車産業です。高い性能と、品質、市場の最先端かつ幅広いニーズに応える製品力、そしてそれらを可能にするサプライチェーン全体に及ぶ優秀な人材力と組織力は、経済大国・日本が誇るべき宝だと言っても過言ではありません。

この自動車産業の世界においてもいま、DX(デジタルトランスフォーメーション)が新たな競争力の鍵を握る最重要テーマとなっています。そして押し寄せる DX の波にいち早く対応し、数々の先進的な施策を実施しているのが、2020年に創立100周年を迎えた日本を代表する自動車メーカーのマツダです。

2022 年 11 月にアップデートされた中期経営計画では、主要な 4 つの取り組みの 1 つとして「人と IT の共創によるマツダ独自の価値創造」を掲げています。マツダでは、「ひと中心」の思想に基づき、人間研究を積み重ねて、人の五感で感じる「走る歓び」を追求してきました。その土台には、90 年代から継続的に取り組んできたマツダデジタルイノベーショ(MDI)があり、IT を駆使し、技術開発の大幅な効率化に継続的に取り組んできました。着実に DX を実践してきたことで、「モデルベース開発」などのプロセス革新につながり、マツダ独自の強みである、高効率開発の実現と高い価値創造の両立を実現しています。

マツダでは、DX 推進を支えるコラボレーション&コミュニケーションツールとして Microsoft 365 を、クライアント環境として Azure Virtual Desktop(以下、AVD)を中心とした Microsoft Azure(以下、Azure)上の仮想デスクトップ(以下、VDI)サービスを導入しています。これら土台となる IT インフラを同社 MDI&IT本部 インフラシステム部が整備していますが、VDI サービスについては、わずか数カ月での導入を可能としました。その背景には、かねてより培ってきたマツダとマイクロソフトとの強いパートナーシップがありました。

外部とのコラボレーション強化に向けて VDI サービス導入プロジェクトが発足

インフラシステム部では、グループ 43,000 人が日々業務で使用する IT インフラを支えています。先述した同社の中期経営計画における「人と IT の共創によるマツダ独自の価値創造」という目標の中でも AI や IT を使いこなせるデジタル人財のための環境整備を担っています。

インフラシステム部を率いる部長の岡原 俊幸 氏は、同部に課せられたミッションについて次のように語ります。「当社の IT 部門は、マツダグループのシステム化全般を統括しており、製品開発、サプライチェーン等領域ごとのアプリケーションシステムを担当する部門、領域を超えた構造課題に取り組む部門、グループ全体の IT インフラを整備する私の担当する部門があります。昨今は全社横断で DX を推進する活動も立ち上がり、本部内外から IT インフラへの多様なニーズ、早期提供を期待されているところです」

  • マツダ株式会社 MDI&IT本部 インフラシステム部 部長 岡原 俊幸 氏

    マツダ株式会社 MDI&IT本部 インフラシステム部 部長 岡原 俊幸 氏

そんなマツダでは、システム開発のリモートアクセスクライアント環境として VDI サービス、VPN サービスを併用しており、非効率かつセキュリティポリシが統一されていない環境で運用していたといいます。それがコロナ禍を機に顕在化したことから、改めてクラウドを活用した最適な VDI サービスによりセキュアな環境の実現かつ効率的な運用を実現すべく、プロジェクトがスタートしました。

「当部門はシステムやサービスの企画立案がメインなので、実際の開発の多くを外部のベンダーに委託しています。しかし DX への注力に伴い新たなシステムが急激に増加したため、作業をしてもらう場所の確保が困難になってきたことと、広島にある本社まで出張してもらうのも大変だという話が頻繁に持ち上がるようになったのです」と、岡原 氏は振り返ります。

クライアント PC をその都度渡していたのではさまざまな意味で効率が悪く、また海外ベンダーへの委託も増えていたことから、外部の開発ベンダーや常駐ベンダーのためのセキュアなデスクトップ環境の提供を目指して、新たな VDI サービスの導入へと踏み切ることとなったのです。

AVD へのスムーズな移行を実現できた理由

こうしてマツダでは、AVD を中心とした新たな VDI 環境を Azure 上で構築することとなりました。

選定理由について、MDI&IT本部 インフラシステム部の森上 志穂美 氏は次のように語ります。「以前使っていたクラウド VDI サービスは開発保守作業を行うにあたり充分なパフォーマンスがなく、ユーザーからのクレームも少なくありませんでした。しかし AVD をはじめとした Azure ベースの VDI サービスは、物理クライアントと同等のレスポンスで快適に操作ができ、そうしたパフォーマンス面での心配はあまり必要ないことがわかったというのが 1 つあります。加えて運用管理面でも、従来は 1 台ずつ個別に構築する必要がありましたが、マイクロソフトのサービスであれば一括で行うことも可能です。このため例えばすぐに何十台もマシンをデプロイしなければいけないといった場合にも、一気にマシンを構築して迅速に対応できるので、リードタイムの大幅な短縮が期待できるのも大きな理由となりました」

  • マツダ株式会社 MDI&IT本部 インフラシステム部 森上 志穂美 氏

    マツダ株式会社 MDI&IT本部 インフラシステム部 森上 志穂美 氏

2021 年から VDI 環境の Azure 上への移行作業を段階的に進めていき、2022 年 2 月には AVD の運用を開始しました。AVD 自体の環境構築はわずか半年ほどで完了しています。

MDI&IT本部 インフラシステム部 シニア・スペシャリストの光宗 徹 氏は、導入時のマイクロソフトからのサポートについてこう振り返ります。「新たな VDI 環境の構築は、金融機関などでの実績が抱負なベンダーに委託しました。全体構成を考える際、とりわけネットワーク周りの構成に関しては、マイクロソフトには設計から入ってもらいました。そこで、ファイアウォールやプロキシサーバーを経由する際の注意点やよくあるパターンなどを踏まえて、我々の要求を踏まえた最適な構成をマイクロソフト側から提案してもらうことができました」

  • マツダ株式会社 MDI&IT本部 インフラシステム部 シニア・スペシャリスト 光宗 徹 氏

    マツダ株式会社 MDI&IT本部 インフラシステム部 シニア・スペシャリスト 光宗 徹 氏

  • システム構成図

    システム構成図

ニーズの急増にも迅速に対応可能に、かつてのパフォーマンス問題も解決

現在、マツダの IT 部門では、既に 1,000 人近くに及ぶユーザーが AVD を中心とする VDI サービス環境で業務を行っています。

岡原 氏は言います。「レガシー OS を一気に入れ替えるプロジェクトが走っていたりして、多い月には 50 台ほどのマシンが追加されています。もしそれに合わせて現物の PC を購入しようとしていたら、半導体不足の影響で調達できなかったことでしょう。AVD のサイジングの伸びは予想をはるかに上回っているので、いまは最適なリソースをいかにして最適なコストで確保するかが課題となっています」

また森上 氏は、AVD の導入効果について次のように話します。「以前の VDI 環境では課題だったパフォーマンス問題は見事に解消できています。また以前の VDI に無かった機能として、音声会議やサブディスプレイが利用でき、より汎用的に業務利用できるようになっています。今後の展望としては、外部ベンダーのリモートアクセスクライアント環境をよりセキュアな環境へ統一していくため、一部ベンダーに提供している物理クライアント+ VPN 環境を、全て VDI へ移行していきたいと考えています」

マイクロソフトからのサポートについても、森上 氏はこう評価します。「運用保守を委託しているベンダー向けの勉強会も開催してくれるので、委託先のベンダーのスキルアップにも貢献していますね」

光宗 氏も「マイクロソフトのエンジニアの中でもそのテーマごとの“ブラックベルト”のような人をアサインしてもらえ、非常に信頼でき参考になる話の数々とともにさまざまな悩みも解消してくれました」と笑顔を見せました。

マイクロソフトと Azure は、マツダが目指す「人と IT の共創によるマツダ独自の価値創造」を DX を通じて支援を続けます。

[PR]提供:日本マイクロソフト