愛知県内に 2 カ所、愛媛県内に 2 カ所の計 4 つのキャンパスを展開する人間環境大学。今年 4 月に新設された愛媛県松山市の松山道後キャンパス・総合心理学部においては、全学生分の PC を BYOD とし、マイクロソフトのクラウド型 VDI である Azure Virtual Desktop(AVD)を活用しています。心理学の領域においても大量のデータ分析がますます重要となってくるなか、誰もが統一された環境において高速でデータ分析が行える環境を手に入れた同大学では、既にどのようなメリットが現れており、今後はどういった展開が期待できるのか──導入をリードした先生方と職員の方に話を聞きました。

今年 4 月、四国で唯一の総合的に心理学を学べる学部が松山市内に誕生

人間環境大学は、愛知県岡崎市、同県大府市、および愛媛県松山市 2 カ所の計 4 つのキャンパスを展開しており、『人間環境に関する該博な知識と深い理解力を備え、すぐれた見識をもって人類と国家社会に貢献できる有為な人材を育成することを目的とする。』の理念のもと、新たな時代を担う人材の育成に務めています。その母体である学校法人河原学園は、西日本で大学・専門学校・高等学校、幼稚園などを擁する総合学園であり、社会的ニーズに幅広くかつ迅速に対応できる柔軟な経営組織の構築を目指すとともに、大学・専門学校の持ち味を活かし、生徒・学生のために最大限努力し、質の高い教育を実践しています。

2022 年 4 月、人間環境大学では 3 学部を新設したことで、「いのち」「こころ」「環境」をテーマとする 5 学部7学科の大学へと更なる進化を遂げました。このうち、愛媛県松山市の中心部にある松山道後キャンパスに新設されたのが、心理学を深く実践的に学ぶ「総合心理学部 総合心理学科」です。総合心理学部は、顕在化する近年の様々な社会問題解決のニーズを受けて新たに誕生した学部であり、実験心理学の基礎的なものから社会心理学、発達心理学、臨床心理学、産業心理学などすべての心理学を総合的に学べる、四国で唯一の学部となっています。

日本でも有数の心理学部を目指すにあたり、心理学界のなかから有力な教師陣が集結しました。その一人が、人間環境大学 総合心理学部 総合心理学科 副学科長である高野 裕治 氏です。

  • 人間環境大学 総合心理学部 総合心理学科 教授 副学科長 高野 裕治 氏

    人間環境大学 総合心理学部 総合心理学科 教授 副学科長 高野 裕治 氏

自身の研究領域について同 氏はこう説明します。「心理学と神経科学の手法を組み合わせ、実験動物のラット、または人を対象として、赤ちゃんから高齢者まで、あらゆる世代における『こころ』の仕組みについて研究する心理学を目指しています。端的に言えば、“ヒトに通じる動物の心について、行動と脳の仕組みを探る研究”となります」

PC のスペックを問わず高性能・高セキュアな「データ分析ルーム」を AVD で

「データサイエンスは心理学だ」を持論とする高野 氏は、総合心理学部における研究・教育の DX の推進や DX 人材の育成についてもリードする立場にあります。

同 氏は語ります。「データサイエンスの基本は見えないものから役立つトレンドを引き出すことにあります。では、そのテクノロジーを用いて人間が何をするのか、この段階に進むとこれは間違いなく心理学の問題になってくるのです。つまり、データサイエンスを人々に役立てるためには、心理学が不可欠である──これが私の考えです」

そして同 氏が描くビジョンを実現するために欠かせないインフラとして着目したのが、マイクロソフトのクラウド型デスクトップ仮想化(VDI)サービス Azure Virtual Desktop(以下、AVD)でした。

「通常、大量のデータを分析すると PC 側のスペックの差によって大きく効率性が左右されてしまいます。これではせっかく良いアイデアがあったとしてもシステム側での制限がかかってしまうことでしょう。しかし今はもうそんな時代ではないはずです。そこで学生たちが持ち込んだ私用 PC でも、個々のスペックにかかわらずネットワークにつないで効率的かつ安全に分析できる環境を実現したいと考えたのです。また、すべての教員がさまざまなデータを取得して分析し、そこから得られた知見を世の中に適切に提案したりすることでリーダーシップを発揮できる環境づくりも必要だと感じていました。学生も教員もネットワークに接続すれば、即座に高い性能とセキュリティに基づいた同じ環境の“データ解析ルーム”を使えるようなシステムにしたい、そんな思いを AVD であれば実現できると確信したのです」(高野 氏)。

もともと河原学園では、全学生に Microsoft 365 のライセンスを発行しており、コロナ禍に入ってからは Microsoft Teams を活用した遠隔授業を人間環境大学でも行っているなど、Microsoft 365 に慣れ親しんでいたのです。そうしたことから、新しいキャンパスの新しい学部である総合心理学部には、同 氏の提案通り初年度から Microsoft 365 と親和性の高い AVD を導入することが 2021 年 4 月に決定しました。

学園全体のシステムを管轄する河原学園 法人本部教務部 課長の沼川 広太 氏はこう振り返ります。「当初、シンクライアントとサーバーを学内に置いたオンプレミス環境なども想定していましたが、それを運用できる専門の教職員を、1 学部の松山道後キャンパスに配置することは難しいということがわかりました。また、新設学部ということで初年度の在籍は 1 年生だけですが、AVD であればクラウド型であるため初期投資を抑えつつ、来年度以降、新入生が入ってくるに従って段階的に拡張していけるのは魅力でした。さらに、『人とそれを取り巻く環境』について学ぶ本学では、環境にやさしい点も高く評価しました」

  • 河原学園 法人本部教務部 課長 沼川 広太 氏

    河原学園 法人本部教務部 課長 沼川 広太 氏

学部スタートからすぐに AVD の効果を実感

2022 年にスタートした総合心理学部の学生は現在のところ、全員が 1 年生の計 84 人となっています。そうした学生達が、“BYOD &ペーパーレス”を基本方針とする学習環境で、さまざまな講義の受講やそれぞれの学習を進めているのです。すべての学生が自身の PC を持ち歩くことが前提となりますが、大学側でもディスカウントできる PC 製品を紹介するなどしており、これまで大きな問題も起きていないといいます。

「来年には今の 1 年生が先輩となって、PC の購入や上手な使い方などをレクチャーしてくれることでしょう。そうした意味からも学部開設の初年度に AVD を導入したのはいいタイミングだったと感じています。既に学生の約 7 割が授業の“ノート”を PC で取るようになっていますから、当初のペーパーレス化の目的も予想以上に早く達成しつつあります。また、多くのゼミにおいては大規模データであっても自分の PC で解析実行する学生がどんどん増えていますので、『ダイナミックな分析、ダイナミックな結果』といった統計上の優位性を実現できる環境となったと言えるでしょう。これからビッグデータの時代を迎えるなか、そうした時代に即した卒論作成にも繋がるであろうと期待しています。そして私が特に大きな成果だと思うのが、このような先進的な環境を学生達が即応できたうえに、それを歓迎していることです。こうした姿勢はとても頼もしく、将来に向けてより一層の進化した学びにつながると確信しています。」と高野 氏は言います。

また、統計解析やアンケート解析も担当する総合心理学部総合心理学科 講師の嘉瀬 貴祥 氏は、「いまや大学において、自由に PC が使えなかったり、使えたとしても各種制限がかかってしまうというのは教育上の大きな問題と言えます。とりわけ最近は扱うデータ量が増え続けており、スペックの不足した PC では満足のいく結果を導き出すのは難しいのです。それが AVD であれば、誰もが十二分なスペックを手軽かつ自由に使うことができて、なおかつそのインフラの部分についてはマイクロソフトのように外部に任せられるので、安心して活用することができています。AVD 未導入の機関では、特定の学生 PC だけ授業に必要なソフトウェアをインストールできない、プログラムが動作しないといった事態が頻繁に生じ、そうなると教員が授業後に原因を調べたりなど個別対応を迫られることがあります。AVD を導入するとすべての学生に統一した環境を提供できるので、そうした対応に割く時間が不要になり、最も注力したい業務である授業の質の向上に、持てるリソースをすべて充てられるようになりました」とコメントします。

  • 人間環境大学 総合心理学部 総合心理学科 講師 嘉瀬 貴祥 氏

    人間環境大学 総合心理学部 総合心理学科 講師 嘉瀬 貴祥 氏

同じく同学部の講師で公認心理師でもある徳岡 大 氏も、これまで AVD を使用して感じられたメリットについて次のように話します。「プログラミング言語を学習しようとした場合、同じソフトであっても OS のバージョンなど PC の環境によって UI(ユーザーインタフェース)が違ってしまいます。それが AVD であれば、すべての受講者が統一の環境で学習できるのです。小さな問題かもしれませんが、学習の入口として、そして学習効果としては大きなメリットだと感じています」

  • 人間環境大学 総合心理学部 総合心理学科 講師 公認心理師 徳岡 大 氏

    人間環境大学 総合心理学部 総合心理学科 講師 公認心理師 徳岡 大 氏

高野 氏もこう続けます。「まず自分たちの解析環境を見せてあげると、学生たちもとても興味を示してくれます。そして AVD であれば同じ環境を学生も簡単に手に入れることができますから、いきなり全開のスピードでの教育も実現できるだろうと、そのためのカリキュラムづくりを進めているところです」

  • システム概要図

    システム概要図

※人間環境大学では Microsoft 365 を利用しています。本環境のユーザ管理は Azure Active Directory(Azure AD)からの連携により行われています。
Azure AD 上の組織情報と接続元ロケーションの情報から、接続しても問題のないユーザであるか、あるいは接続が許可された場所であるかを判断して本環境へ接続させています。

制限のない学習環境でクリエイティブな人材を社会に送り出したい

今後、人間環境大学総合心理学部では、教育・研究活動における AVD のさらなる活用を進めていこうとしています。

徳岡 氏は言います。「PC 側のスペックに関係なく高度な環境を利用できる AVD のメリットを活かし、世の中に公開されている多種多様なオープンデータを有意義に活用できるようにもしていきたいですね。現実の世の中の活動の結果日々生まれ続けるそうしたデータを入手して、意義のある分析ができるよういま学生と進めているところです」

これを受けて嘉瀬 氏も、「健康心理の世界でも、大規模データを使って数年後を予測するのがトレンドなので、AVD はとても頼もしい存在です」と続けます。

また沼川 氏は、人間環境大学総合心理学部での AVD の利活用状況を見て、同大学の他のキャンパス・学部をはじめ、河原学園が運営する専門学校や高校の PC 教室への展開も視野に入れていると言います。「学校の規模や場所に関係なく簡単に導入できて管理の負荷も最小限に抑えられる AVD は、他のキャンパス、学校はもちろんのこと、教職員のリモート環境にもいずれは適用できるのではと考えています」

そして最後に高野 氏は、次のように展望を語ってくれました。「かつて、データはあるものの PC のスペックによっては 1 週間もかかっていたような分析であっても、AVD であれば瞬時に行えるようになりました。ビッグデータやオープンデータといった、これまでなかなか学生には手を出しにくかった大規模データを使った実験も、これからは積極的に行っていきたいですね。AVD が実現してくれた制約のない最先端な環境で自由に思う存分学ぶことのできた学生は、この先、社会に出てもクリエイティブに活躍する人材になっていくものと大いに期待しています。総合心理学部での取り組みを成功させ、他のキャンパスにも拡大して人間環境大学全体の教育の向上に活用していきたいです。また、AVD は学生だけでなく、教員のリモートワークなどにも幅広く活用できると考えています」

人間環境大学の取り組みを、マイクロソフトは今後も支援を続けます。

[PR]提供:日本マイクロソフト