あらゆる業界でデジタル・トランスフォーメーション(DX)が叫ばれるなか、その推進のカギともいえるのが、資産としてのデータの価値を最大限に引き出せるようなデータ活用の取り組みです。とりわけ製造業においては、従来のビジネスデータのみならず、IoT データなども合わせたデータ活用の仕組みづくりが DX 成功のポイントともいわれています。そうしたなか、日本を代表する製造業の 1 社である安川電機から分離独立した IT 会社である YEデジタルでは、製造業を中心にこれまで多くの企業の DX を支援してきました。そんな同社が提供する ビジネス DX ソリューションや IoT ソリューションのプラットフォームに用いられているのが Microsoft Azure です。Azure を採用した背景や、マイクロソフトとのパートナーシップ、さらには企業における DX のポイントなどについて、話を聞きました。

安川電機出身の IT 会社として培った技術とノウハウを活かし、ビジネス DX を推進

産業用ロボットをはじめとしたメカトロニクス製品の製造で強みを発揮する安川電機。同社と同じ福岡県北九州市に本社を置く YEデジタルは、そんな安川グループを支える IT 企業として、「安川情報システム」という名称で 1978 年に創業されました。以来同社では 40 年以上にわたって、安川グループをはじめとしたさまざまな製造業の顧客のもとで培った技術や業務知識を磨く一方で、IoT、ビッグデータ、AI、セキュリティといった新しい技術を積極的に取り込み、発展を続けてきました。またこの間に、デジタル技術を利用した優れた製品・サービスを世に送り出し、社会貢献をしたいという思いを込め、現社名「YEデジタル」への変更を果たしました。

同社のビジネスソリューション事業に関する事業責任者である、YEデジタル 常務執行役員 ビジネスシステム本部長の大久保 誠二 氏は次のように説明します。「安川電機のシステム子会社として設立された当社は、安川電機、安川グループを中心とした基幹系システムの開発請負からスタートしました。その後は、工場設備や産業機器などの組み込みや制御のシステム開発も実施しながら、M2M(Machine to Machine)などの技術を用いた機械制御、ソフト・ハードの連携に関するノウハウを蓄積していきました」

  • 株式会社YEデジタル 常務執行役員 ビジネスシステム本部長 大久保 誠二 氏

    株式会社YEデジタル 常務執行役員 ビジネスシステム本部長 大久保 誠二 氏

そんな YEデジタルにおける現在の主力事業は、大きく「ビジネスソリューション」、「IoTソリューション」、「サービスビジネス」の 3 分野に分けられます。

このうちビジネスソリューションでは、ERP を中心とした業務システム導入の豊富な実績を生かし、ICT による新たな価値創造によって顧客の経営強化を支援しています。

大久保 氏は言います。「ビジネスソリューションの領域では、『ビジネスDX』を推進しています。このビジネスDX では、IT 技術でお客様のデータの価値を最大化し、業務変革・業務生産性向上や自社製品の付加価値向上、顧客サービスをレベルアップすることで新しい価値を生み出し、お客様の業務やお客様のその先のお客様の業務変革をサポートします」

続く IoT ソリューションでは、クラウドサービスから通信機器まで、IoT で顧客の業務効率化を支援しています。また、AI を活用したデータ分析技術により、顧客に新たな価値を創造します。

そして 3 つ目のサービスビジネスについては、IT カスタマサービスセンター「Smart Service AQUA」を中心に、コンサルから導入支援、運用支援までユニファイド(統合化された)サービスを提供することで、顧客の業務システムの運用や活用をきめ細やかに伴走支援しているのです。

ビジネス DX ソリューションの基盤に Azure を採用したポイントとは

このように YEデジタルでは、ビジネスソリューション事業においてビジネスDX に注力しています。そしてビジネスDX を顧客へと推進・展開していくために、それぞれの顧客の業務や状況に合ったビジネスDX ソリューションを提供しているのです。ビジネスDX ソリューションは、顧客のビジネスを支える IT 基盤として YEデジタルの「デジタル・プラットフォーム」上に構築していますが、このプラットフォーム・アーキテクチャのベースとなっているのが、Microsoft Azure(以下、Azure)です。

クラウドプラットフォームのベースに Azure を採用した理由として、YEデジタル ビジネスシステム本部 副本部長 事業戦略推進室長である蒲瀬 貴之 氏は次のように語ります。「選定にあたっては、さまざまな側面から比較検討を行いました。その結果、セキュリティや安定性などの要素を加味したクラウドプラットフォームとしての信頼性や安心度の高さ、そして今後の発展性や当社との協業体制の充実度などを踏まえて、Azure の導入を決定したのです」

  • 株式会社YEデジタル ビジネスシステム本部 副本部長 事業戦略推進室長 蒲瀬 貴之 氏

    株式会社YEデジタル ビジネスシステム本部 副本部長 事業戦略推進室長 蒲瀬 貴之 氏

また、ビジネスDX の推進においては、既存システムの流用や他システムとの連携(他システムとの組合せ)なども含めて、顧客からは柔軟性、拡張性のある仕組みを要望されるケースが増えているといいます。

「例えば、Office365 などと連携した効率化や効果的なシステムを求められるケースも多く、こうした観点からも、認証機能や通信制御・データ連携機能 などを含めワンストップのプラットフォームで提供でき、そのため連携性も良い Azure は最適であるといえます。オンプレからクラウドまでの対応サービスがそろっているということもあって、クラウドシフトのシステム構成や実施方法等もイメージしやすいですし、何より使い慣れたサービス名や分かりやすいサービス名なので、お客様との意識合わせもスムーズに進められますね」

製造業を中心に DX 支援の実績を積み重ねる

YEデジタルでは製造業を中心に多くの企業の DX 推進を支援してきました。例えば、ある製造業の企業においては、日々の経営データの可視化を実現しました。

YEデジタル ビジネスシステム本部 事業戦略推進室 ソリューション戦略推進 担当課長の楠橋 侑紀 氏はこう説明します。「こちらのお客様においては、グローバルのグループ会社の経営データを日々収集し、コード統一や通貨の変換を行うことで、従来は数日前のデータを元に経営会議等を実施されていましたが、当社のソリューションを採用いただいてからは、直近のより鮮度の高いデータに基づいた経営判断を実施いただくことが可能となりました。現在は次のステップとして、他業務データの活用を推進中です」(楠橋 氏)。

  • 株式会社YEデジタル ビジネスシステム本部 事業戦略推進室 ソリューション戦略推進 担当課長 楠橋 侑紀 氏

    株式会社YEデジタル ビジネスシステム本部 事業戦略推進室 ソリューション戦略推進 担当課長 楠橋 侑紀 氏

また別の製造業の企業では、ナレッジデータ活用と業務データの蓄積・活用の仕組みづくりを支援しています。ここでは、製品シリアル番号、製品の状況やアラート情報を元に、業務に必要な情報をタイムリーに表示し、ノウハウが必要な作業をナビゲートする事で、効率化(省力化)・人材育成を実現しているのです。

さらに、ある機器メーカーでは、機器の稼働データや管理データの活用に向けて、オープンデータと組み合わせたプロアクティブな分析が行える仕組みづくりを進めています。

楠橋 氏は言います。「やはり製造業のお客様が多いのですが、当社のソリューションは他の業種業態にも応用できる内容になっているので、より幅広い業種業態のお客様へと展開しようと目下取り組んでいるところです」

Azure 上に構築したデータ分析ソリューションが高く評価されている理由

YEデジタルが提供する Azure ベースのデータ分析ソリューションは、Azure Synapse Analytics や Azure Databricks を用いて構築されています。このソリューションが支援するデータ統合管理により、社内外の多種多様なデータのうち「共有・共用が必要となるデータ」を収集・統合し、タイムリーに活用可能とする仕組みを提供しているのです。また、データの用途に合わせて収集サイクルや保管場所等を決定し、必要なシステム環境を段階的に整備することも可能となっています。

ソリューション内においてデータ統合管理に収集するデータは、業務ソフトウェアのデータベースに格納される「構造化データ」と、IoT データのようにデータ単体で意味を持ち、それぞれ用途が異なる「非構造化データ」に分けられます。また、構造化データの中でもセンサーデータやログデータ等、構造化されたデータでありつつも用途が定まっているデータについては半構造化データとして定義します。

ユーザー企業からの声について楠橋 氏は次のように語ります。「データストアへの非構造化データのままの保管から、使いやすい形に整形したうえでデータウェアハウス(DWH)へと蓄積した後に、さらに特定の利用者・用途向けにデータを加工・整理したデータマート(DM)へと持っていける仕組みを、多くのお客様から高く評価していただいております。また、Microsoft Power Platform により、スピーディーに安心して利用いただけるとともに、仕組みがシンプルでアップグレードやスケールアップがしやすい点を評価する声も数多く寄せられています」

蒲瀬 氏もこう続けます。「データを統合するためのツールが豊富かつ優れているので、データ活用しやすいですね。ここ数年は企業が活用するデータの範囲も拡がってきており、従来の ERP や受注売上販売といったデータのみならず、IoT データなども対象となってきています。当社としても、このような流れを踏まえて、製造業に限らない幅広い提案を行っています」

マイクロソフトとのさらなるパートナーシップへの期待

YEデジタルでは、2016 年よりマイクロソフトとの協業を進めています。そうした強固なパートナーシップのもと、マイクロソフトの Gold Cloud Platform コンピテンシーにも認定されています。

マイクロソフトとのパートナーシップについて、楠橋 氏はこうコメントします。「ユーザー目線と、システムを導入するベンダー、開発者の目線の双方からマイクロソフトとのパートナーシップを高く評価しています。まずユーザー目線においては、我々のお客様にはマイクロソフト製品を利用されているケースも多く、私たちもシステム導入する際に長きにわたり利用、対応してきた実績があります。また、ベンダー、開発者の目線でも、各種 PaaS、各業界向けテンプレートの豊富さや、それによるアプリ構築のしやすさ、幅広さ、当社との強固な協業体制、競争力のある先進的なサービスがいち早く提供され、それを容易に利用することが可能であることなど、パートナーとしてとても頼りがいがありますね」

大久保 氏もこう続けます。「多くの大手ベンダーでも Azure を活用していますので、我々としても技術習得などに取り組みやすいですし、マイクロソフトからのサポートも手厚く、実務においても活用しやすいと強く感じています」

こうした両社のパートナーシップによる実績の積み重ねをベースに、YEデジタル では今後、Azure をベースとしたさらなるソリューション展開を進めていく構えです。

蒲瀬 氏は言います。「ビジネスDX ソリューションをよりライトにスピーディーに適用でき、お客様のニーズに合わせた最適な仕組みを、より多くのお客様の環境に適用いただけるよう、レベルアップを図っていきたいと考えています。そこでは、これまで製造業など多くのお客様の DX 支援から得られたノウハウも活かしていきながら、豊富なテンプレートを揃えて幅広い業種に提供していくべく、準備を進めているところです。ここでも、データ統合のためのツールが豊富で優れているAzureをはじめとしたマイクロソフトのソリューション群が非常に有用であると考えています」

そして最後に大久保 氏は、より多くの企業が DX を成功に導くことができるよう、次のようにメッセージを送ります。「DX が叫ばれていますが、我々のこれまでの経験からも、単なるシステム構築・導入で終わるのではなく、組織全体の変革の取り組みが大事であると実感しています。そのため、一気に進めてそれで完成するというよりも、ステップを追いながら段階的にレベルアップしていくアプローチが有効なのではないでしょうか。システムも DX もどこかで完成ではなく、常に成長していかないといけません。そうしたプラットフォームとしても、Azure は最適なアーキテクチャであると考えており、これを活用しながらお客様とともに成長し、貢献していきたいですね」

[PR]提供:日本マイクロソフト