設計・製造の分野をはじめ、建築・エンジニアリング・建設・オペレーション、メディア&エンターテインメントなど“モノづくり”に関わる業界において、デジタル技術を用いたビジネスの変革、すなわちDXの実現は優先度の高いミッションといえる。

1982年に汎用PC向けのCADソフトウェア「AutoCAD」をリリースし、DXという言葉が注目される以前からモノづくりにおけるデジタル活用を牽引してきたオートデスクでは、モノづくり業界の実態に関するグローバル調査レポート「2024年度版 デザインと創造の業界動向調査」を2024年4月に公開した。

本稿では、オートデスク株式会社 日本地域営業統括 技術営業本部 業務執行役員 本部長の加藤 久喜氏に話を伺い、同レポートをフックに日本のモノづくり企業のビジネス課題と、DXに取り組む際に考慮すべきポイントを紐解いていく。

日本企業が抱える「ビジネスのレジリエンス」「人材」「サステナビリティ」に関するビジネス課題とは

オートデスクでは、モノづくりの実態とビジネス課題を浮き彫りにし、将来を見据えたモノづくり業界の戦略的な意識決定を支援するための調査レポートを発表している。

2回目となる「2024年度版 デザインと創造の業界動向調査」は、ビジネスリーダー/未来学者/専門家 5,399 名を対象にグローバルで実施されたアンケートとインタビューをもとに作成。

「ビジネスのレジリエンス」「人材」「サステナビリティ」の3つをテーマに、調査結果と詳細情報をまとめている。

日本企業が求める機能やコンテンツを洞察してグローバルの製品開発部門、戦略立案部門にフィードバックしたり、国内企業の課題を明確化しビジネス価値を高めるための支援を行ったりと、日本市場向けの取り組みを推進しているオートデスクの加藤氏は、本調査レポートのテーマの1つである「ビジネスのレジリエンス」において、日本のモノづくり業界で顕在化している課題について次のように語る。

「昨今の世界情勢を鑑みれば、ビジネスのレジリエンス、すなわち回復力、復旧力の向上は優先度の高いミッションといえます。今回の調査では、日本企業のビジネスリーダーはグローバルと比べて自社のレジリエンス施策に関して自信を持っていないという傾向がうかがえます。その要因の1つは、ビジネスのアジリティ、変化に対する迅速な対応力が足りないことにあると考えています。グローバル調査で73%の企業が『予期せぬ変化に対処する準備が整っている』と回答するなど楽観的に考える企業が増えてきているなか、自然災害やパンデミックはもちろん、市場ニーズの変化やディスラプティブな先進技術への対応などにおいても、日本はかなり慎重に動いている印象があります」(加藤氏)

  • オートデスク株式会社 日本地域営業統括 技術営業本部 業務執行役員 本部長 加藤 久喜 氏

    オートデスク株式会社
    日本地域営業統括 技術営業本部 業務執行役員 本部長
    加藤 久喜 氏

2つ目のテーマである「人材」についても、日本企業は流動性が低い傾向があると加藤氏。コストとの折り合いをつけながら、“採用”“継承”“教育”の3つの観点から対策を講じていくことが肝要と説明する。

「人材に関する課題としては、人材の確保(採用)、ベテラン社員の退職に伴うスキル・ナレッジの継承、既存社員のスキルアップ(教育)の3つが挙げられます。グローバルでは、優秀な人材をどんどん採用していくというアプローチで人材問題の解決を図っていますが、日本企業ではコストの部分でセンシティブになる傾向があり、同様の解決策を取るのは難しい側面があります。一方、スキルの継承や人材の育成(スキルアップ)の面では、デジタルツールを用いて対応するという動きが加速している印象があります。ただ、海外と比べると、ツールを用いた業務の自動化・省力化といったところは、まだ改善の余地が多いと考えています」(加藤氏)

加藤氏は、DXの取り組みが、ビジネスのレジリエンス、人材、サステナビリティの課題解決につながると分析。近年のビジネストレンドとなっている生成AIをはじめ、デジタル技術をどのように活用するのかが重要になると話を続ける。

「ビジネスのレジリエンスやアジリティの向上から、人材の採用・スキル継承・教育、さらにはサステナビリティまで、現代の企業が取り組まなければならない課題は、DXによって解決できると考えています。例えばDXで業務の効率化が進めば、変化への対応もすばやく行え、少ない人的リソースでビジネスを推進できるようになります。また新入社員を採用したいという場合も、積極的にDXを推進し、サステナビリティ経営に取り組んでいれば、将来を考慮して社会課題に取り組んでいる企業としてブランドイメージが向上し、優秀な人事を確保できる可能性が高まります。モノづくり業界がサステナビリティを実現するうえで重要となるカーボンニュートラルにおいても、DXでビジネスプロセス全体をデータ化しなければ実現は困難です。近年では、生成AIの活用がビジネスにおけるトレンドとなっていますが、生成AIで業務を効率化するためには、データを用意しなければなりません。つまり、モノづくりのDXで必要となるのはデータを集約・活用するための仕組みであり、その役割を担うのが、オートデスクが提供する『デザインと創造のプラットフォーム』となります」(加藤氏)

各業界向けのプラットフォームを展開し、モノづくり企業のDX、データ活用を強力に支援

2022年にオートデスクがリリースした「デザインと創造のプラットフォーム」は、クラウド型の統合ソフトウェアソリューションであり、D&M (設計・製造)業界向けの「Autodesk Fusion」、AECO(建築・エンジニアリング・建設・オペレーション)業界向けの「Autodesk Forma」、M&E(メディア&エンターテインメント)業界向けの「Autodesk Flow」という3つのインダストリークラウド製品が提供されている。

共通基盤となる「Autodesk Platform Services」上に、各業界向けの機能やツールがつながるという構成になっており、プロジェクト全体のデータを集約・活用できる作業環境として利用できる。

「製造業向けの『Autodesk Fusion』は歴史が長く、クラウドベースの統合型3D CAD/CAM/CAEソフトウェアとして提供してきた『Fusion 360』を『デザインと創造のプラットフォーム』ブランドに統合した製品となります。統合型の設計環境という位置付けで、3D CAD、2D CADはもちろん、PCB(プリント基板)を設計する機能なども備え、さらに構造解析や電気回路のシミュレーション機能なども実装しています。PLM/PDMやMES(製造実行システム)も統合されており、製造業のDX、データ利活用を強力に支援します」と加藤氏は説明する。

AECO向けの「Autodesk Forma」では、建物資産のデータやデジタルモデルとBIMワークフローをクラウド上で統合できるほか、AIを活用したツールを備え、設計の初期段階でさまざまなアイデアやアプローチを試せると語り、「エンボディドカーボンやオペレーションカーボンの計算も容易になるなど、サステナビリティの実現においても有効です」と力を込める。

さらにM&E向けの「Autodesk Flow」については、ゲームやメディア業界で非常に重要なアセット管理の機能が充実しており、撮影した映像を即座にクラウド上に展開する「Camera to Cloud」など近年需要が増えているオリジナルの実写ドラマ作成を効率的におこなえる機能を搭載。

またクラウド型のソリューションである「デザインと創造のプラットフォーム」は、テレワークや在宅勤務といったワークスタイルの多様化にも対応できるという。

オートデスクのソリューションがモノづくり業界のDXを支援し、未来を支える

ここまで述べてきたとおり、オートデスクの「デザインと創造のプラットフォーム」は、モノづくりに携わる業界のDXを強力に支援するソリューションに仕上がっている。

APIやデータストレージは「Autodesk Platform Services」で共通化されるため、業務プロセス全体を統合可能。ツールごとにファイルフォーマットが異なるような場合もプラットフォーム上で変換できるため、シームレスな業務環境を構築できる。

加藤氏は「デザインと創造のプラットフォーム」を活用してDXを推進することで、現代の企業が抱えるレジリエンス、人材、サステナビリティの課題を解決できると話す。

「調査レポートのテーマである3つの課題は、それぞれが独立して解決できるものではなく、統合的に解決していく必要があります。そこで重要になるのは、テクノロジーに対する理解度を深めることです。たとえば生成AI技術をどう活用していくのか、安全性を担保しながらデータを収集・活用するためには何が必要なのかなど、テクノロジーを理解することで解決できる課題は多いと思います。今回我々が公開した調査レポートは、テクノロジー活用の勘所に関する情報が満載されていますので、ぜひ確認いただければと思います。DXの取り組みには終わりがなく、常に最新のテクノロジーをキャッチアップして効果的な活用方法を模索していかなければなりません。『デザインと創造のプラットフォーム』は、新しい技術ツールを利用しやすいプラットフォームです。さらにオートデスクでは、グローバルで積み重ねてきた経験とノウハウを活かし、企業それぞれが見据えるDXを実現するための支援を展開していますので、ぜひ相談いただければと思います」(加藤氏)

持続的にDXを推進し、社会貢献を行いながらビジネスの競争力を高めたいと考えている企業にとって、オートデスクが展開するソリューションと取り組みには、今後も注視していく必要があるだろう。

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