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仕分けや部品ピッキングにおけるAI・ロボティクス活用が加速、異彩を放つ「TriMath」とは

エレクトロニクス商社として、グローバルなマーケティング力と高度な技術サポート力、徹底した検証による品質管理体制を強みにさまざまな製品を展開する東京エレクトロンデバイス。中期経営計画「VISION 2025」では「デジタルトランスフォーメーションを実現する製品・サービスを提供し高効率スマート社会の持続的発展に貢献する」ことをミッションに掲げ、これまでの「メーカー機能を持つ技術商社」から「技術商社機能を持つメーカーへ」の進化を目指している。

その取り組みの1つとして力を入れているのがプライベートブランド事業(PB事業)だ。PB事業では、二つの事業を展開している。ひとつが、商社としての技術力とマーケティング力をベースに、評価ボードやLSI、ソフトウェアなどの設計・量産に向けた顧客の開発を支援するデザイン&マニュファクチャリングサービス(DMS)事業。もうひとつが、自社の持つ情報や技術・サービスを商品化し、自社開発商品や他社協業における共同開発商品を提供するデジタルファクトリーソリューション(DFS)事業だ。そしてDFS事業で、画像処理やロボットを組み合わせた、これまでにないソリューションとして展開しているのが「TriMath」である。

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東京エレクトロン デバイス株式会社 デジタルファクトリー営業部 セールス&マーケティングプロフェッショナル 佐野俊介氏

東京エレクトロン デバイス株式会社
デジタルファクトリー営業部 セールス&マーケティングプロフェッショナル
佐野俊介氏

TriMathに関して、デジタルファクトリー営業部 セールス&マーケティングプロフェッショナル 佐野俊介氏はこう話す。

「自動車の量産工程や電気電子部品の製造工程、半導体搬送といった、単少品種で定形形状のモノを取り扱う領域では自動化がかなり進んでいます。一方、製造品の仕分けや部品ピッキング、物流現場など、多品種で不定形なモノを取り扱う領域では、多くの作業が自動化されないまま残されています。こうした作業は人手での対応も難しいこともあり、自動化へのニーズが高まっています」(佐野氏)






実際、仕分けやピッキングなどは、AIによる画像処理やロボット制御など研究開発と社会実装が急速に進んでいる分野であり、グローバルレベルで激しい競争が繰り広げられている。東京エレクトロンデバイスが挑むのは、そうした最新のロボットシステムが直面している課題の解消だ。

「多品種取り扱い現場のロボットシステムの多くは、導入時のコスト、ワークの認識、導入後のコストといった課題があります。それらを解消するために、成長型ビジョンオートメーションシステムという新たなコンセプトを作りました。そして実際にソリューションとして提供しているのがTriMathです」(佐野氏)

手順の変更や作業の追加も可能な「成長型」システム

多品種取り扱い現場のロボットシステムが直面する課題について、佐野氏はこう話す。

「物流現場や製造現場では、現場ごとに作業環境が変わり、取り扱うものが異なります。標準化されたシステムがないため、現場ごとに新規設計費が発生し、検討にも多くの時間がかかるのです。さらにシステムの導入にともなって、周辺のコンベアや設備との連携も必要となり、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)などの設計も求められます。また、不定形形状、多品種を正確に認識できるかというワークにおける認識の課題もありますね。導入後には、新しい製品が登場するたびに、新しいワークを登録する手間やコストもかかります。作業環境をよくするためにセンサーを追加したり、動作手順の変更をしたりする際にも外注費などがかかることになります」(佐野氏)

現場は環境に応じて常に変化し、その変化のたびに新しい対応が必要となる。そのための時間や外注費といったコスト、人的リソースの確保が必要になるのだ。そこでTriMathでは、システム全体を制御し導入プロセスを簡易化することで、こうした現場で生まれ続ける要望に現場で応えられるようにした。

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成長型ビジョンオートメーションシステム「TriMath」が持つ3つの特徴

佐野氏はここでTriMathが持つ3つの特徴についても話してくれた。

「TriMathは、ビジョンロボットシステムを構築するためのOSや操作盤、ビジョン機器を一体化した製品です。お客様の現場に合わせて、ビジョン機器の選定から、全体システムの構築、操作盤の設計・製作までトータルでサポートします。成長型のビジョンオートメーションシステムとして、3つの特徴があり、1つめは、現場で対応することができる成長型機能を提供すること。2つめは独自制御でロボットシステムを簡単にセットアップできること。3つめは、画像処理・AIでワークを器用に認識・識別することです」(佐野氏)

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ひとつ目の、現場で対応できる成長型機能は大きく2つの機能で構成される。ひとつは、ワークの追加登録・削除や認識精度を上げる追加学習が可能な「ワーク管理機能」。もうひとつは、動作シーケンスの順番を変更することや、動作や機能を追加・削除可能な「動作編集機能」だ。

「たとえば、最初に50種類のピッキングのワークがあった場合、現場でAI学習を行って、ワーク認識精度を向上させることができます。また、新しい製品がでてきたら対象ワークを現場で追加したり、使わなくなったワークを削除したりしたうえで、それらについてAI学習で認識精度を向上させることができます。さらに、動作手順の変更や追加もできるので、仕分け作業を変更したい、センサーを追加したいといった場合もシステム変更を内製で行なっていくことができます」(佐野氏)

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成長型ビジョンオートメーションシステムの2つ目の特徴としてあげた、独自制御でロボットシステムを簡単セットアップというのは、専用操作盤を中心にビジョンシステム、付帯設備、ロボットシステムをシームレスに制御することで実現する。

「一般的なビジョンシステムは、カメラからロボットを動かすことしかできず、センサーや付帯設備との連携はできません。そこでロボット以外と連携するには別にPLCを使うことになり、システムエンジニアリングが必要とされます。それに対し、TriMathは、操作盤に組み込まれたIPC(産業用PC)の独自アプリーションでセンサー、ロボットハンド、ビジョン機器、ロボットコントローラーなど、全体をまとめてコントロールできます。特にEtheNetだけでなくEtherCATにも対応しているため、同時並列処理を高速に実行できるのもポイントです。また、成長型機能を備えているため、設計も最小限で済みます」(佐野氏)

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3つめの画像処理・AIワークを器用に認識・識別するというのは、ワークに適したさまざまな画像処理技術を有するということだ。例えば、製品・廃材見分けのための特徴点マッチング、材料袋の荷姿見極めのためのAI学習・認識技術、マスターレスピッキングのための2.5D画像処理などがある。ルールーベースとAIを組み合わせて対象物を高精度で認識する。

「TriMathを一言に集約するとヒトのように現場で柔軟に対応できるシステムです。これまでロボットシステムは、導入当初に設定したことしかできず、改善のたびにコストをかけていくのが一般的でした。しかしTriMathは、成長型ビジョンオートメーションシステムとして、現場で働く方の考えによって、現場で自由にシステムを変更できるのです」(佐野氏)

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成長型システムのメリットを最大限引き出すためにインテル製CPUを採用した
IPCを選定

TriMathのこうした特徴を最大限に引き出すためにIPCのCPUとして採用されたのがインテル製CPUだ。IPCには、12M キャッシュ、最大 4.40 GHzの性能を持つ、インテル® Core™ i7-9700E プロセッサーが搭載されている。

IPC採用の理由について佐野氏は、「画像処理を含んだロボットシステムを構築しようとすると、画像処理用のPCに加えPLCが必要になること。また、処理する画像データの解像度やロボット台数によって必要なスペックも異なります。今回は、IPCとして画像処理やネットワーク処理にインテル製CPUを搭載した最適な【Beckhoff社製】IPCを選定し、システム全体をシームレスに制御できるようにしました。インテル製CPUのメリットは、EtherCATに対応し、3D画像の処理を同時に並列処理できること、付帯機器の制御を行なうアプリケーション開発をWindows環境で推められること、信頼性が高く15年以上動作するロボットシステムのライフサイクルに適していることなどです」と話してくれた。

インテル製CPUは大きな武器、現場のボトルネック自体を解消していきたい

TriMathは、2020年から東京エレクトロンデバイスの社内スタートアップとしてプロジェクトがスタートした。ロボットシステムに知見やノウハウを持つDFS事業グループの人材が集結し、グループ会社各社が持つ画像処理技術の知見やノウハウを活用して、成長型システムとしてのコンセプトや機能をつくりあげていった。

採用実績やユースケースとしてはすでに、洗濯機のピッキング・デパレタイズ(荷下ろし)、室外機のピッキング・仕分け、鉱石のピッキング・仕分け、袋のピッキング・デパレタイズなどがある。

「パレットに積み込まれた材料袋などをピッキング、デパレタイズする際には、袋の位置や形状が作業のたびに変わります。そのため画像処理技術とそれに連動したロボット制御が必要になりますが、東京エレクトロングループが持つさまざまな技術とノウハウを組み合わせることで、そうした作業を高度にこなすことができます。また、アプリケーション開発や製品への実装、現場での改善作業など、さまざまなシーンでインテル製CPUを採用したメリットを感じています」(佐野氏)

インテル製CPUの採用効果のひとつに、複数台のロボットを制御する際に高速に並行処理できる点があり、実際に複数台同時にロボットを制御しても問題なく立ち上がるなど、そのパフォーマンスの高さと効果を実感しているという。また、開発のしやすさという点では、制御アプリケーションを自社で独自開発しているが、C++やPythonといった使い慣れた言語を使って、効率良く開発することができたそうだ。

そして最も大きな効果は、今後のビジネスを大きく成長させるうえで信頼性の高さ、拡張性の高さを得られた点だと、佐野氏は話していた。

「不定形形状、多品種な工程の自動化はこれからです。現場にすばやく導入し、環境の変化に応じてすばやくシステムを成長させることが求められます。また、今後、現場に導入される設備やシステムが増えて複雑になると、複数台を協調動作させて人の作業を置き換えていったりする必要性もより高まっていきます。そのときに、高速処理や並列処理が可能でEtherCATに対応したインテル製CPUを採用していることは、大きな武器になると考えています」(佐野氏)

さらに佐野氏は次のように今後の展望を述べた。「画像処理だけでは人の自動化のボトルネックは解決できません。人だからできる器用さや速度感について、複合的な取り組みで投資対効果を出していくことが求められます。まずは現場のボトルネックになっている課題をひとつでも二つでも減らしながら世の中に貢献していきたい。そして将来的にはTriMathを現場のボトルネック自体を解消できるようなシステムに育てていきたいと思っています」(佐野氏)

製造現場に大きな変革をもたらす東京エレクトロンデバイスの取り組みを、インテルは今後も支援していく。

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