2023年10月13日に開催されたセミナー「改めて考えるDXシステム開発 / 製造業DX World Conference 2023 秋」において、ヴイエムウェア株式会社 エンタープライズ SE 本部 製造 SE 部 部長 大迫 正史氏が登壇。「クラウドファーストは次のステージへ。 DXプラットフォームの課題とその解決策」と題して、クラウドにおける3つの課題とその解決策を提案した。

  • ヴイエムウェア株式会社 エンタープライズ SE 本部 製造 SE 部 部長 大迫 正史氏

    ヴイエムウェア株式会社
    エンタープライズ SE 本部 製造 SE 部 部長
    大迫 正史氏

クラウド活用のメリットを引き出すためのクラウドスマートアプローチとは

企業がビジネスを展開するうえで今や欠かせなくなったクラウド。特に近年はDXを推進するために、俊敏性や拡張性といったクラウドのメリットを引き出すことが重要になっている。しかし、企業のなかには、クラウドのメリットを引き出す以前に、クラウド特有の課題に直面しているケースも多い。そうしたなか、オンプレミス環境における仮想化基盤を提供してきたVMwareは独自のクラウド活用のアプローチを提案している。

1998年に米国で創業した VMwareはサーバ仮想化やデスクトップ仮想化をコア技術に、ネットワークやストレージの仮想化、モバイル管理のソリューションを提供し成長し続けてきた。現在はハイブリッドクラウドやアプリケーションのモダナイゼーションなどのソリューションプロバイダーとしても広く知られるようになった。顧客数は50万社、パートナー数は7万5000社を超え、2023年の売上高は133億ドルに達する。

「VMwareは、サーバ仮想化からスタートしさまざまなものを抽象化することでビジネスを進めてきました。今後、企業はビジネスを行うためのアプリケーションをクラウドや自社データセンター、工場や販売店などのいわゆるエッジ領域に最適に配置していくことが求められます。そこで最近では、クラウドを抽象化してユーザーに提供する取り組みに注力しています。また、社員が働く環境やAI環境を柔軟に整えていくという領域にも取り組んでいく予定です。このように、マルチクラウドを抽象化するクラウドスマート(Cloud Smart)アプローチを展開していきます」(大迫氏)

  • クラウド活用とカスタマージャーニー

クラウド移行やクラウド活用において企業が課題を抱え、複雑さが大幅に増大する状況をVMwareでは「クラウドカオス(Cloud Chaos)」と呼んでいる。これはクラウドの選択肢が増えたことで煩雑さやコストも増え、アプリケーションの移行スピードが遅くなったり、インフラ管理に一貫性がなくなったりと混乱している状態を指す。「クラウドスマート(Cloud Smart)」とは、こうしたカオスを乗り越え、クラウドのメリットを引き出せるような状態のことだ。

「DXを支えるクラウドに対して、計画的にアプローチを用意して実践していくことが必要です。VMwareはお客様と一緒にこの課題に取り組んでいきます」(大迫氏)

クラウド利用の際に課題となる「ロックイン」をどう解消すべきか

VMwareでは、クラウドをDXの基盤になる重要な要素だと認識している。実際、各種統計情報によると、クラウドへの支出は年1000億ドルを超えるペースで成長しており、国内においてもデータセンター関連の市場規模は右肩上がりだという。

「クラウドの成長とともに、利用コストも当然ながら増加していきます。2023年のクラウドベンダーへの支出額は6000億ドル(約90兆円)で、日本におけるクラウドへの支出も年間で6兆円とされます。AIやメタバース、Web3などの新しいテクノロジーやビジネスの創出にもクラウドは欠かせません。企業には、クラウドのコストへの対策はもちろん、クラウドカオスの課題を解消していくことが求められます」(大迫氏)

  • DX基盤となるクラウドの成長とメリット

大迫氏によると、クラウドにおける代表的な課題は大きく3つに集約できる。「ロックイン」「トータルコスト」「運用とセキュリティ」だ。

1つめの「ロックイン」とは、特定のクラウドに縛られることで、柔軟性が欠如し、事業の継続性にリスクが発生するという課題だ。

「ロックインは、お客様がある製品やサービスに依存する状態で、その製品やサービスの変更や置き換えが困難になる状況のことです。今使われているクラウドからほかに乗り換えようとするときに、時間や手間がかかります。このスイッチングコストが高ければ高いほど抜け出せなくなります。ロックインの問題・課題には、突然サービスが終了したり提供元が買収されたりするなどの『事業継続課題』、価格競争が発生しづらくなる『コスト増加課題』、環境移行を計画しても移行が難しい『出ることができない・出にくい課題』があります。これを回避するためには、当初からロックインに陥らないための対策をクラウド戦略に含めておくことが重要です」(大迫氏)

たとえば、移行コストの事前評価、データの移植性・可搬性の確保、標準化された技術の採用、アーキテクチャの抽象化、マルチクラウドの導入などを行うことで、ロックインを回避しやすくなる。

  • ロックインに対する戦略

定額型のクラウドサービスを利用し、長い目で見たときのトータルコストを削減

2つめの「トータルコスト」は、クラウドの利用が進み、依存度が高まるなかで、ビジネスのメリットをクラウドのコストが上回ってしまう問題だ。

「クラウドは非常に重要なインフラリソースで、まずは低コストで素早くビジネスを立ち上げたいというケースで使われはじめることが多いです。しかし、ビジネスが軌道に乗って安定期に入り成長率が鈍化するにつれて、クラウド利用のコストが利益に与える影響を見直すタイミングが出てきます。特に北米・ヨーロッパはこのようなクラウド利用におけるコスト意識が高まっていて、クラウドワークロードの一部を自社データセンターに戻す(Repatriation:本国[自社]送還)ケースも増えています」(大迫氏)

また、クラウドへの移行についても、移行コストを踏まえた検討が重要だ。

「オンプレミスからパブリッククラウドに移行することは最適なのかどうかということから検討する必要があります。検討のポイントとしては、初期移行コスト、運用コスト、維持・管理コスト、バックアップと災害復旧コスト、契約のコストなどです。これらコストからトータルコストを算出し、コスト効果を評価していきます。また、利用コストについても、可視化して未来のコスト増加や節約可能な領域を把握することが求められます」(大迫氏)

利用コストについては、一般的なパブリッククラウドが従量課金型であるところ、VMwareが提供するVMware Cloudでは、決まった範囲で定額課金するタイプのサービスを提供している。CPUやメモリ、ストレージなど動かすためのリソースに対して課金をすることになるので、そのリソースの範囲で使い倒すことができ、サーバ単位に対して課金をするよりもトータルのコストが下がる可能性がある。また、パブリッククラウドのIaaSを仮想化してVMware Cloudに移行することで集約率を高め、中長期的に見てコスト削減やコスト最適化を推進することもできる。

  • クラウドと利用コスト

マルチクラウド環境におけるサイロ化による複雑さを、一貫性のある運用とセキュリティで解消することが重要

3つめの運用とセキュリティは、マルチクラウド環境での一貫性をどう担保するかという課題だ。複数のパブリッククラウドを利用しているエンタープライズ企業は7割を超えるとの調査もあり、その傾向は今後さらに増えると予想されている。

「複数のクラウドを並行して使っていると運用管理ツールやセキュリティポリシー、プロセスのばらつきが発生することで、運用のコストが上がる、セキュリティホールができる、脆弱性が生じるなどのリスクが増加します。一貫性が欠如した状態でマルチクラウドの利用を進めると、それぞれがサイロ化しクラウドは複雑化します。クラウドやインフラ、アプリケーションが分散しいろいろなものが使われていくことで、それを利用する業務やユーザー・社員も分散してしまいます。こうした複雑化を解消し、一貫性のある管理を実現するためには、自動化、健全性把握・可視化、コスト管理、セキュリティ管理などがポイントになります」(大迫氏)

  • マルチクラウドの利用から生じる新たな複雑

VMwareでは、こうしたマルチクラウド環境で一貫性のある管理を実現するソリューションとしてVMware Ariaを提供している。

そのうえで大迫氏は、クラウドにおける3つの課題とその対策について次のようにまとめた。

「ロックイン対策は当初からクラウド戦略に含めておくこと、トータルコストについては従量課金と定額課金を上手に使い分けることが重要になります。さらに、運用とセキュリティについては、一貫性のある運用とセキュリティの仕組みを実装することが欠かせないでしょう」(大迫氏)

クラウドファーストでクラウド利用を進めていくと、クラウド特有の課題に直面する。新しいステージに移行する際には、VMwareが提唱するクラウドスマートのようなアプローチを意識してみてはいかがだろうか。

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