テレワークの普及で社内ヘルプデスクの負担が増大する中、問い合わせ対応を手助けする「チャットボット」の重要性が高まっている。しかし、正答率を高めるために必要な量のQ&Aデータを用意することが課題となっていた。

そこでテラスカイが新たに開発したのが、ChatGPTを活用したQ&Aデータ自動生成機能だ。マニュアルを自動的に読み取り、高品質なQ&Aデータを大量生成することを可能にする。新たな働き方をサポートするチャットボット"mitoco アシスタント"について、株式会社テラスカイ(以下、テラスカイ) 取締役 専務執行役員 製品事業ユニット長 山田誠氏、 株式会社エノキ(以下、エノキ) CEO 伊藤純一氏の両名に話を伺った。

  • (写真)テラスカイ山田氏とエノキ伊藤氏

多様な働き方がもたらす、社内ヘルプデスクの負担増

2023年4月に内閣府が発表した『第6回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査』(※1)によれば、テレワーク実施率の全国平均は30.0%、東京23区は51.6%となっている。一定の水準で、通勤時間の削減や育児・介護などを抱える従業員への対応を目的とした、多様な働き方が定着しつつある。

※1 出典:内閣府『第6回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査』(令和5年4月19日発表)

しかし、テレワークは「気さくな会話・相談が困難」という課題も抱えている。不慣れなことに直面した際、隣に同僚がいれば、質問がちょっとした息抜きにさえなるかもしれないが、テレワークでは頼れる相手が見えない。

結果として負担が増大したのが、社内のヘルプデスク担当者である。多様な働き方の実現とともに、人材の流動性が増せば増すほど、社内規程や自社製品・サービスに関する質問数は増えていく。

社内外の問い合わせに対応するために、近年注目されているのが「チャットボット」である。あらかじめQ&Aデータを用意しておけば、人の代わりにAIが質問に答えてくれる。24時間365日いつでも、すぐに回答を返せるチャットボットを導入する企業や自治体は、年々増加している。"mitoco アシスタント"も、その一つだ。

"mitocoアシスタント"のさらなる進化

国内トップクラスのSalesforceコンサルティングパートナーであり、クラウド専業のシステムインテグレーターであるテラスカイが「社員一人ひとりの秘書」として提供しているチャットボットが、"mitoco アシスタント"だ。

mitocoは、カレンダーや承認ワークフロー、ToDo、文書管理機能などを備えたコミュニケーションツールである。「全従業員がアクセスする情報すべてを提供する」ことを目的に改良が続けられている。このmitocoのシリーズ製品としてリリースされたのが、チャットボットである“mitoco アシスタント”だ。

「PCが壊れたが、どうすればよいか」「健康診断の申し込み方法は?」「年末調整のやり方を教えて」などmitoco アシスタントに質問すれば、すぐさま答えが返ってくる。Q&AデータはExcel上で簡単に管理し、追加することができる。

「『レスポンスの速さ・的確さ』は、mitoco アシスタントを評価していただくポイントの一つです」と、テラスカイ 取締役 専務執行役員 製品事業ユニット長の山田誠氏は語る。

  • (写真)テラスカイ 山田氏

    株式会社テラスカイ 取締役 専務執行役員 製品事業ユニット長 山田 誠氏

チャットボットにはシナリオ型・FAQ型・機械学習型などさまざまなタイプがあるが、mitoco アシスタントは「オントロジー型」を採用している。これは、あいまいな質問に対して、「これで合っていますか?」と聞き返し、正答にナビゲートしていく高速な仕組みを持っている。

  • (図)チャットボットの種類

しかし、mitoco アシスタントを含め、従来のチャットボットには一つの「限界」があった。人間が用意できるQ&Aデータには限りがあるのだ。

「チャットボットに質問したとき、『分かりません』という回答が表示されてしまうと、繰り返し活用してもらいにくくなってしまいます。どのような質問が来ても返せるようにするには、10万件以上のQ&Aデータを用意したいところです。ところが、実際に弊社の新入社員教育で社内業務に関するQ&Aデータを作成させたところ、1年かけても人力で追加できたQ&Aデータは900件程度でした。大手企業でも、現状の登録数は2,000件前後が限界でしょう。この壁をいかに突破するかが、我々に課せられたミッションでした」(山田氏)

こうした課題感をきっかけに、mitoco アシスタントは、「Q&Aのデータの自動生成」へと進化していくことになる。

人間の数万倍のスピードでQ&Aのデータを自動生成

人間と自然に対話できるAIといえば、最近、非常に注目を集めているのが"ChatGPT"だ。その人間らしい受け答えや、生成される文章のクオリティから、史上最速でユーザー数1億人を突破したサービスと言われている。

チャットボットに関わる者ならば誰しも、「ChatGPTにヘルプデスク対応をさせれば良いのでは?」と考えるかもしれない。しかし、現状では3つの懸念があると、山田氏は指摘する。

「世間では情報漏洩がよく心配されていますが、ビジネス用のチャットボットとしての目線で考えた場合、ChatGPTにはさらに『正解率』と『ローカルルールの理解』における懸念があります。機械的に答えを返さない点は魅力ではあるのですが、100%同じ答えを言って欲しい場合には欠点となります。また、社内独自のルールや慣習に基づく回答もどこまでカバーしてくれるのか、不安が残ります」(山田氏)

mitoco アシスタントは速く確実だが、人力ではQ&Aデータを大量に用意することが難しい。ChatGPTは与えられたテキストを元に自然な文書を生成できるが、挙動制御ができない。一長一短だ。そこでテラスカイは、mitoco アシスタントとChatGPTの長所を掛け合わせ、「Q&Aデータ自動生成機能」を生み出した。自社マニュアルや製品カタログをChatGPTに読み込ませることで、mitoco アシスタント用のQ&Aデータを、高速かつ大量に作ることが可能になる。

  • (図)Q&Aの自動生成

開発を担当したエノキのCEO 伊藤純一氏は、言語解析技術に20年以上携わってきたベテランエンジニアだ。高精度なQ&AデータをChatGPT出力させるうえでも、その腕が活かされている。

  • (写真)エノキ 伊藤氏

    株式会社エノキ CEO&CTO 伊藤 純一氏

「人力の場合、150件のQ&Aデータを用意するのに1ヶ月くらいかかります。ところが、この機能を使えばわずか30分程度で済みます。多くのQ&Aデータを作成するには十分な量の情報を用意しておく必要がありますし、最終的には人間がチェックして手直しする必要もがあるのですが、機能を試したヘルプデスク担当者の方は、『自分たちが作るより、誤字脱字が少なくて自然な文書になっている』と驚かれていました。ChatGPTは正しい語句のつながりを学習しているため、おかしな表現が統計的に起きにくくなっているのです」(伊藤氏)

ChatGPTを活用したQ&Aデータ自動生成機能は、mitoco アシスタントを圧倒的に飛躍させると、山田氏は力をこめる。

「実際にmitocoのマニュアルを読ませてみたのですが、あっという間にQ&Aデータが大量に生成され、さらに一つ一つがそのまま使えるようなレベルで、思わず感激してしまったことを覚えています。このQ&Aデータを使えば、質問への網羅率を圧倒的に高めることができるでしょう。入社したばかりで分からないことが多い新卒・中途社員やテレワークで勤務をしている社員が先輩に聞きにくいことを、丁寧にケアできるようになります」(山田氏)

Q&Aデータの刷新を自動効率化し、業務の本質にフォーカスする

現状のChatGPTは画像を認識する機能に乏しいため、図表が多いマニュアルを使っている場合は、正しいQ&Aデータを生成できない場合がある。テラスカイはmitoco アシスタントのアカウントを月額20万円~ で提供するとともに、Q&Aデータの準備を含めた初期導入支援のコンサルティングサービスもおこなっている。

「バックオフィスに関わる法律の改正や、新たな製品・サービスの登場に伴ってQ&Aデータはどんどん陳腐化していくため、常に刷新していかなければなりません。せっかくヘルプデスク対応自動化のためにチャットボットを導入しても、メンテナンスに多大な時間がかかっていては、本末転倒です。2023年6月のアップデートでQ&Aデータ自動生成機能を身につけたmitoco アシスタントならば、より効率的なチャットボット運用を実現できるでしょう」(山田氏)

一方、伊藤氏は、今後について次のように意気込みを語る。

「ChatGPTのお問合せが増えていますが、どのように活用していけばよいかわからない、というお客様がまだまだ多いように感じています。ChatGPTは生成AIであり『作り出すこと』に長けています。我々はその特長を存分に活かせるよう、文章を作らせるという点を意識して、これからも活用の幅を広げられるよう模索していきたいと思います」(伊藤氏)

独自開発のグループウェアを提供するテラスカイと、言語解析技術に豊富な知見をもつエノキ。両社のシナジーがチャットボットの飛躍的な進化を強力に後押しするだろう。

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