HPEは2022年11月、ハイブリッドIT環境やデータファースト実現のために設計された次世代サーバー製品として、AMD EPYC™ 9004 シリーズ サーバー・プロセッサーを搭載するHPE ProLiant Gen11サーバー4製品を発表した。同シリーズの最大の特長は最適化されたワークロード性能であるが、具体的になにができるようになったのか―― 日本ヒューレット・パッカード合同会社 プリセールスエンジニアリング統括本部 コンピュート技術部 シニアソリューションアーキテクトの小森博之氏と、日本AMD株式会社 コマーシャル営業本部 セールスエンジニアリング担当 マネージャーの関根正人氏にお話をお伺いした。

1U 1プロセッサ~2U 2プロセッサーまで、ラインナップに隙なし

HPEのメインストリーム向けサーバー製品であるProLiantの最新モデルが、昨年11月に発表されたHPE ProLiant Gen11サーバー(以下、ProLiant Gen11)である。ラインナップとしては以下の通りだ。

・HPE ProLiant DL325 Gen11 : 1Uサイズ、1プロセッサー
・HPE ProLiant DL345 Gen11 : 2Uサイズ、1プロセッサー
・HPE ProLiant DL365 Gen11 : 1Uサイズ、2プロセッサー
・HPE ProLiant DL385 Gen11 : 2Uサイズ、2プロセッサー
  • 図1:4製品のラインナップは、エッジ/ストレージ/コンピュート密度/アクセラレーターのそれぞれに最適化された形である。

このラインナップは、AMD EPYC™ 7002/7003 シリーズ・プロセッサーを搭載したHPE ProLiant Gen10 Plusサーバー(以下、ProLiant Gen10 Plus)のラインナップを継続している。よって、最新のProLiant Gen11サーバーで検討することも可能だが、これまで利用してきたユーザーからのスムーズなアップグレードも可能である。

従来からProLiantは、単なるハードウェアスペックの訴求に留まらず、お客様にとっての価値を提供することを重視して開発されてきた。最新のProLiant Gen11サーバーは、時代やお客様のご期待の“一歩先行くサーバー”として、「直感的なクラウド型の運用管理」「安心のセキュリティ・バイ・デザイン」「ワークロード性能の最適化」を三大特長としている。

「ワークロード性能の最適化」について、今回の第4世代のAMD EPYC™ 9004 シリーズ サーバー・プロセッサー(以下、第4世代EPYC)を搭載したサーバーが大きな役割を果たしていると言える。

日本ヒューレット・パッカード合同会社
プリセールスエンジニアリング統括本部コンピュート技術部 シニアソリューションアーキテクト
小森 博之 氏

「それほどのコア数を必要としないお客様は、96コアまである第4世代EPYCなら1プロセッサーの製品でも十分です。1プロセッサーでも十分な数のPCI Expressのレーンが提供されるため、多くのストレージを搭載する場合でも1プロセッサーでカバーできるという部分が、従来からの大きな違いです」と小森氏。

このような特長は ProLiant Gen10 Plusにもあったものの、第4世代EPYCを搭載したことでコア数は最大96になり大幅に性能が向上、メモリはDDR5-4800を12チャネル利用可能になったことで、メモリ帯域が倍以上に増えた。またPCI ExpressもGen 5対応になったことで、倍のスループットが確保されている。要するに、ProLiant Gen 10 Plusまでの2 プロセッサー製品とProLiant Gen11の1プロセッサー製品がほぼ同等の性能を発揮するようになり、ユーザーにとってはより選択の幅が広がり、かつ最適な構成を選びやすくなったわけだ。加えて、「CXL 1.1という新しいソリューションが今後広く利用されていくと思われるが、ProLiant Gen11ではもうこのCXL 1.1に対応している(小森氏)」のも新しい特長である。

また最適化において、もう一つ注目すべき点がある。第4世代EPYCでは2ソケット構成の場合、2つのCPUを接続するInfinity Fabricが標準では3レーンだが、オプションで4レーンにすることも可能である。つまり計算処理を中心とする処理では、4レーン構成の方が最適(よりCPU間の通信スループットを向上できる)な一方、I/O処理を中心とする処理では3レーンの方が適切(より多くの拡張カードやNVMeストレージを接続できる)である(図2)。

  • 図2:Infinity Fabricが3レーンの場合、外部にはPCI Expressをトータル160レーン出力できる。対して4レーンにするとPCI Expressはトータル128レーンに減るが、その分プロセッサー間の通信は広帯域化される。

日本AMD株式会社 コマーシャル営業本部
セールスエンジニアリング担当 マネージャー 関根 正人 氏

ProLiant Gen11では、2ソケット構成のDL365/385については、オーダー時にInfinity Fabricを3レーンにするか4レーンにするか選択できるようになった。より用途に応じてシステムを最適化しやすくなったわけだ。

こうした機能を実現できた最大のポイントは、EPYC 9004シリーズの搭載である。Zen4ベースの製品で、Zen 3と比較してIPCが14%程度向上しており、さらに動作周波数そのものも上がっているため、同じコア数で30%程度性能が向上している。またTSMCのN5プロセスの採用で、コアそのものは複雑化しているにも関わらず、サイズは小さく抑えることが可能になっており、その分CPUのコア数を増やす事に成功している。さらにコアあたりの消費電力は大幅に低下している。

加えて関根氏は言う。「2017年に最初のEPYCシリーズが発表されてから既に6年になり、最近はソフトウェアパートナー様によるEPYC向けの最適化なども随分進んできています」

HPEとAMDの長きにわたる協業で蓄積された知見

サーバーである以上、運用管理やセキュリティ対策も重要である。まず運用管理に関しては、GreenLake for Compute Ops Managementと呼ばれるクラウドベースの管理システムの提供を開始しており、ProLiant Gen11における目玉機能となっている(図3)。一定の台数を管理・運用するための手間やコストは、オンプレミスサーバーを運用する際には常に念頭に置いておくべき事柄であり、これらを大きく減らせることは管理者にとって大きなメリットである。

また「異なる世代を混在させた環境でも、後方互換性があるので古い製品でも問題なく管理可能です」と小森氏。いきなり既存のサーバーを全部置き換えるのではなく、少しずつProLiant Gen11を追加する形で徐々にマイグレーションを行っていける。

  • 図3:SDGsに絡み、企業が自社のカーボンニュートラルに向けた取り組みを求められることが増えて来た。こうした一環で、サーバーに起因するカーボンフットプリントのレポートの要求も増えてきており、新機能のカーボンフットプリントレポートはこの一助となる。

インフラにおけるセキュリティ対策も、すべての企業・管理者にとってますます重要になってきている。セキュリティ・バイ・デザインを開発方針に掲げるProLiantでは、ProLiant Gen10から世代ごとにセキュリティ機能が強化されており(図4)、より安全性が高まっている。特にProLiant Gen11では、サーバーだけでなくオプションで提供される拡張カードに対してもSilicon Root of Trustの対象に含まれるようになった点は大きな違いだ。またProLiant Gen11世代からTrusted Supply Chainの対象に日本が含まれるようになったことも、安全性の向上に繋がると言える。他にも正規品であることを認証してからでないと接続できないセキュアゼロタッチオンボーディングや、輸送中の物理的な攻撃からサーバーを守るデバイス証明(プラットフォーム証明書)などの対策も、ProLiant Gen11では標準となっていることは、ユーザーにとって負担をかけずに安全性を確保できるという、大きな安心材料・選定理由となるだろう。

  • 図4:セキュリティ機能もGreenLake for Compute Ops Managementで管理できるようになったことも、管理性のさらなる向上に繋がっている。

こうした優れた運用管理やセキュリティ機能を、AMDのプロセッサー上で実現できているというのも一つのポイントである。HPE(とその前身であるHP)とAMDとの関係は長く深い。AMDがOpteronを発表した2003年に、HPはOpteronを搭載したProLiant DL145を市場投入しており、そこから常にAMDのサーバー向けプロセッサーを搭載した製品をラインナップしてきていた。

「EPYCの最初の製品であるNaplesの時は、開発の段階からHPE様にも参加していただいておりました」と関根氏。優れた運用管理やセキュリティ機能を担保するため、AMDのプロセッサーをどう使うべきかという知見はHPEに十分に蓄積されており、それがProLiant Gen11にも生かされている。1U 1プロセッサモデルのDL325 Gen11で採用されているスマートクーリングソリューション(図5)などもその一例と言える。

  • 図5:1Uサーバーの場合は、空冷だと十分な冷却能力の確保が難しいケースがある。そうした場合でも確実に冷却を行えるソリューションとなる。

最大約2倍の性能向上を実現

前述した通り、第4世代EPYCを搭載したことで、ProLiant Gen11は大きく性能を向上させた。それが、今回の最大のポイントである。実際、第3世代EPYC搭載サーバーとProLiant Gen11でアプリケーション性能を比較した結果が図6であり、1.7~2倍の性能向上が実現していることがわかる。CPU性能だけで比較すれば、ほぼ2倍の性能向上が実現できているのがわかる(図7)。HPEより既にProLiant DL380 Gen11(Xeon Platinum 8480+)の結果がSPECのサイトに登録されているが、SPECint rate 2017 baseの結果が930、SPECfp rate 2017 baseの結果が937となっており、改めて第4世代EPYCの性能の高さが伺える。

  • 図6:SAPやSPECjbb2015はProLiant同士での比較である。これは要するに同じ台数のサーバーなら性能が大きく向上するし、性能が同じでよければ台数を大幅に減らせることになる。

  • 図7:第3世代EPYCから第4世代EPYCで約2倍のCPU性能向上を実現

HPEとAMDのさらなる協業に期待

HPEはAMDと協業でProLiantの製品ラインナップだけでなく、HPC分野でも多くのシステムを提供している。ここ2回連続してスーパーコンピューターランキングTOP500の1位となった米オークリッジ国立研究所のFrontierはまさにHPEとAMDの協業で生まれたシステムであり、最新のTOP500の上位100システムのなかで、HPEとAMDの協業によるものは25システムにも及ぶ。

今後もHPEはAMDと共に、より良いシステムを提供していきたいと説明する。一方のAMDは「弊社はこれまでロードマップを提示し、そのロードマップ通りに製品を出す事でお客様の信頼を獲得してまいりました。今後もロードマップに沿ってさらに良い製品を提供することで、より広くお客様のニーズに応えていきたいと考えております」(関根氏)と意欲的である。

既存のシステムのアップグレードだけでなく、新規のサーバーを検討している場合にも、EPYC 9004シリーズ搭載のProLiant Gen11を検討候補に入れてみるべきであろう。


Gen 11

HPE campaign

Information

HPE ProLiant Gen11の詳細・お問い合わせは、HPE DirectPlusほか、各種窓口にて承っております。

Web HPE DirectPlus
 
電話 0120-215-542
フリーダイヤルをご利用できない場合 03-6743-6355
受付時間:月曜日~金曜日 9:00~19:00(土曜日、日曜日、祝日、年末年始、および5月1日お休み)
 
メール Webフォーム
お見積もり・ご購入のご相談・製品に関するご質問などにEメールでご返答いたします。

[PR]提供:日本ヒューレット・パッカード