2023年2月21、22の両日、ニューノーマル時代に迫られるビジネス変革に向け、企業のリーダーがデジタルを活用して取り組むべき道筋を示す「ビジネス・フォーラム事務局×TECH+ EXPO 2023 DX Frontline for Leaders 〜変革の道標〜」が開催された。21日に講演のスピーカーとして登壇したDataikuのマーケット・デベロップメントディレクター、桂井良太氏は、ビジネスの最前線で活躍する現場社員にAI/機械学習(ML)活用を広げ、複数のモデルを本番稼働していくことが企業の成長につながると、グローバルの先進事例も交えて解説した。

  • Dataiku マーケット・デベロップメントディレクター 桂井 良太 氏

    Dataiku マーケット・デベロップメントディレクター 桂井 良太 氏

全世界で使われるAI/MLプラットフォーム・Dataikuの特徴とは

2013年パリで創業したDataikuは、同名のAI/MLプラットフォームを提供する企業だ。複雑なデータプロセスを俳句のようにシンプルにしたいという創業者の思いを受け、「Data」と「Haiku」を組み合わせたユニークなネーミングとなった。 Dataikuは「Everyday AI」というコンセプトを掲げたプラットフォームである。これは、AI/MLを社内のデータ活用に特化した限られた部門だけでなく、あらゆる部門で日常的に活用される状況、すなわち“AIの民主化”という世界観を表すコンセプトだ。同プラットフォームを採用する企業は、現在グローバルで500社を超えている。 桂井氏は、Dataikuの特徴として次の2点を挙げた。まず1つ目は「データ準備」「機械学習」「可視化」「デプロイ」「監視」という一連の基本プロセスを1プラットフォームでエンドツーエンドにサポートしていること。そしてもう1つは、難しい操作を必要とせずクリックでも完結するUIを採用していることだ。これらの特徴により、「初期のラーニングコストを抑えながら、AIに関する知識や経験がないビジネスメンバーでもAIプロジェクトに参画できるようになります」とそのメリットを強調した。

多くの企業でAIプロジェクトが実運用に至らない原因と、成功へのヒント

桂井氏は、現状、75〜85%の企業においてAIプロジェクトがPoCで止まってしまい、本番稼働には至っていないことを明らかにした。では、なぜ本番稼働にこぎつけられないのか。 ある調査会社のデータによると、その理由の上位4つには、

  • 企業文化がAIの必要性を認識していない
  • 適切なビジネスユースケースを特定することが困難
  • スキルのある人材の不足/必要な役割の採用が難しい
  • データ不足またはデータ品質の問題

が挙げられている。

  • AIプロジェクトが本番稼働に至らない理由

    AIプロジェクトが本番稼働に至らない理由

これについて桂井氏は「この4つを見ると、意外にもテクノロジーが(本番稼働に進めない)理由ではないことがわかります」と語り、多くの企業のAI活用をサポートしてきたDataikuがプロジェクト成功に必要と考える6つの要素を提示した。

  • AIプロジェクトを成功させるためには

    AIプロジェクトを成功させるためには

1つ目は「ビジネスバリューを念頭に」。これは、AIプロジェクト導入の目的が最終的にビジネスへ貢献することだと理解し、会社の戦略やゴールと常に一致させることだ。2つ目は「簡単に諦めない」。これについて桂井氏は「最初の段階では精度が上がらない、ビジネス担当からダメ出しされるといったこともありますが、すべては通らなければならないステップなので、簡単に諦めないでほしいと思います」と語った。

3つ目は「ムーンショットと一般的なユースケースの組み合わせ」。Dataikuでは革新的ユースケースをムーンショットと呼んでいるが、そこにこだわると本番稼働までに時間がかかってしまうため、短期でバリューを出せるユースケース、例えば需要予測やマーケットバスケット分析などと組み合わせて進め、成功体験を重ねることが大切だと指摘した。

4つ目は「AIやその他技術は手段」で、1点目ともつながるもの。AIプロジェクトはそれ自体が目的ではないため特定の技術にこだわらず、ビジネスバリューにつながる手段を使うべしという考え方だ。桂井氏は「技術は単なる手段。最終的にはビジネスバリューに関連付けることが重要です」と話し、バリューを出せる手段を使う必要性を強調した。

5つ目は「チェンジマネジメント」。AI/MLでは従来にない業務が発生するため、本番稼働後のモデルの監視や再構築、データリテラシーのための社員教育も重要になるという。そして6つ目は「レジリエンスを考慮する」。桂井氏は「AI/MLの技術や手法は日々変化するため、その変化に柔軟に対応できる仕組みとマインドセットを持ってください」と話した。

組織・人材・プロセスの観点から組織全体のAI/ML需要に応える仕組みを整備

この6つの要素をカバーしながらAIプロジェクトを本番稼働させ、さらに組織全体のAI/ML需要に応えるためには、「組織」「人材」「プロセス」の3つの側面 での改革が必要になると桂井氏は語る。

まずはじめの「組織」については、体制とインフラに分けられる。AI/MLの取り組みを推進する体制としては、ITチーム内に分析チームを配置したり、あるいは各事業部がそれぞれに分析チームを作ったりという形がよく見られるが、これでは技術や業務知識等の連携が課題になりやすい。そうではなく「全社向けの分析部門を新たに設置し、さらにこの分析部門から各事業部に分析担当者を派遣することで、ITと業務の現場が近くなり、横の連携や知識の共有も生まれてきます」と指摘した。一方のインフラにおいては、AI /MLの取り組みに関わる全ユーザーが簡単に使えること、そしてAI業務をエンドツーエンドでサポートする機能性を備えることが重要だと話した。

  • 組織全体のAI/ML需要に応えるための組織改革のイメージ

    組織全体のAI/ML需要に応えるための組織改革のイメージ

「人材」の面では、人材に求めるスキルと能力を明確にし、スキルアップを支援すること。データサイエンティストは世界的に不足しており、採用は難しい。そこで現場に近いビジネス担当者のナレッジワーカーが“シチズン(市民)データサイエンティスト”として参画することが求められ、そこに向けた教育とスキルアップの重要性も今後いっそう増していくことになる。

そして「プロセス」の面では、AI/MLの開発および運用に必要なプロセスを理解し、構築すること。「本番稼働するモデルが1つであればマニュアルで対応することも可能ですが、AIが社内で広がっていけば数十、数百、最終的には数千のモデルが運用されます。そこで全ユーザーがストレスなくAI/MLに携われるように、プロセスを整備することが必要です」(桂井氏)

現場社員のデータ人材活用に成功したグローバル企業の事例にフォーカス

続いて桂井氏は、現場社員のデータ人材としての活用に成功した企業事例を紹介した。教育とサポートを通じて社員のスキルアップを実現した大手グローバル銀行、セルフサービスアナリティクスを用いて社員が自主的な課題解決に取り組む大手半導体メーカー、データサイエンスチームとビジネス部門のコラボレーションに成功した大手製薬会社の3つだ。ここでは2つ目のNXPの事例を紹介しよう。 「NXPには、ビジネス課題を社員自身で解決できるようになってほしい、そのために社員が学習し成長できる文化を醸成したいという経営者の思いがありました」と桂井氏。それを実践するため同社はDataikuを導入した。

  • NXPの事例紹介

    NXPの事例紹介

ポイントは、課題意識を持った社員にAI/MLとデータ活用に関するスキルアップの機会を与えること。同社はDataikuの既存顧客で、Dataikuを活用したシチズンデータサイエンティストのトレーニングに全社員がアクセスできるインフラを整えた。すると早速、1人の社員が、自分で実施する需要予測の精度が低いという課題認識を持ち、マネージャーの承認のもとスキルアッププログラムに参加。結果、課題であった予測精度を高められただけでなく、この社員がサプライチェーン業務へのAI/ML導入で中心的役割を担い、ビジネス現場で予測精度向上やプロセス効率化を実現しているという。

このようにNXPは、個別のユーザーが課題を抽出・自己解決するセルフサービスアナリティクスの仕組みを構築。現在は多種多様なユースケースでDataikuを活用してプロジェクトを実行している。 事例の3社について、桂井氏は「3社とも組織横断でデータ活用推進部署を立ち上げ、技術的ハードルやデータ接続性の問題を取り除いたうえ、人材面では社員教育でセルフサービスアナリティクスの土台を構築。さらにプロセス面でも市民データサイエンティストを育成しやすいように整備しています」と語り、その取り組みにDataikuが果たす役割の大きさも示した。

  • NXPの課題解決までのステップ

    NXPの課題解決までのステップ

講演ではこの後、Dataikuの製品デモも行われ、データプロジェクトに関わったことのないビジネスユーザーにも使いやすいプラットフォームであることが紹介された。

関連リンク

● Dataikuについて:https://www.dataiku.com/ja/
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