コロナ禍をきっかけにリモートワークの環境を導入したものの、回線の遅さ・管理の煩雑さ・セキュリティの不十分さなどの課題を抱える企業は多い。新たな働き方は、どのように高度化していけばいいのだろうか。 ヴイエムウェアのワークプレイスバリューパートナー*1であるアイネット、イデア・コンサルティング、NTTデータの3社が、その方策を語り合った。

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*1 2022年10月より、ヴイエムウェアはバリューパートナープログラムを実施。セキュリティ、ワークプレイス、オペレーション、アプリケーションの4つのカテゴリに分けて対象のヴイエムウェア製品を実装したサービスを提供している企業とパートナーシップを組みエンドユーザーに価値あるサービスを提供している。

リモートワークの新たな課題

──まずは日本のリモートワークの現状について、皆様がエンドユーザーと接するなかで感じていることを教えていただけますか。(モデレーター:神野氏)

  • ヴイエムウェア株式会社 クラウドサービス事業部 クラウドパートナー営業部 シニア ビジネス ディベロップメント マネージャー 神野 由紀子 氏

    ヴイエムウェア株式会社
    クラウドサービス事業部 クラウドパートナー営業部
    シニア ビジネス ディベロップメント
    マネージャー
    神野 由紀子 氏

羽石氏:新型コロナウイルス感染症との共存は3年目を迎えましたが、コロナ禍の当初にシステムを導入されたお客様から問い合わせをいただくようになりました。「VPN接続ではローカルにデータが残ってしまうのでどうにかしたい」「トラフィックが遅いのでもっと利便性を上げたい」といった課題が、新たに浮上しているようです。

それから「会社として出勤率を減らす目標を掲げているので、達成のための仕組みを入れたい」というケースもあります。また、文教のお客様では「学生向けにリモート学習機能を整備させたので、次は職員向けに事務作業を効率化していきたい」というケースが増えています。最近では、ローカルにデータを残さない仕組みとして、はじめからDaaS*2を検討されるお客様もいらっしゃいますね。

*2 DaaS(Desktop as a Service):自社内のサーバーではなく、クラウド上に仮想的なデスクトップ環境を構築するサービス

遠藤氏:我々NTTデータはエンタープライズ向けに働き方改革の支援をしておりますが、課題として顕著なのは「利便性とセキュリティの両立」です。どんなプロダクトを組み合わせて適用するか、皆さん悩んでいらっしゃいます。また、最近はデジタル庁がペーパーレス化等を積極的に推進しているので、公共分野からのお引合いが大きいように感じています。

──最近では通勤電車が普通に混んでいるように、コロナ前の働き方に戻っているような感触もあります。ハイブリッドワークをさらに高度化していく動きと、従来型の働き方に回帰しようとする動きと、どちらが多いように感じますか。(神野氏)

羽石氏:正直なところ、多くの企業が後者の方針だと感じますが、それでいいのだろうかと思うところがあります。

宮川氏:先日、お客様との勉強会のなかで、リモートワークのこれからについて話し合ったのですが、日本の企業における平均導入率の推移を見ると、現在はピークから下がりつつあるようです。ハイブリッドワークで効果を出している企業以外は、リモートワークの技術はそこまで必要ない、と考えられているような感覚があります。

遠藤氏:私もデータを調べたところ、同じような傾向が見られました。リモートワークを続けたことによって、新たな課題が浮かんできたことは確かだと思います。ですが、その課題に対して、かつての働き方に戻るだけという対処には違和感があります。「とりあえず出社させる」のではなく、会社制度をどう設計しなおすか、どのテクノロジーを使うべきなのか、「日本企業にとって理想の働き方とは何か」を考えていくタイミングだと思っています。

  • 株式会社NTTデータ ソリューション事業本部 デジタルビジネスソリューション事業部 デジタルワークスペース統括部 統括部長 遠藤 由則 氏

    株式会社NTTデータ
    ソリューション事業本部 デジタルビジネスソリューション事業部
    デジタルワークスペース統括部
    統括部長
    遠藤 由則 氏

なぜ高度化に取り組めるのか

──逆に、リモートワークのさらなる高度化に取り組めている企業は、何が要因で加速できているのでしょう。(神野氏)

羽石氏:経営者や決裁者がどれだけ真剣味を持って、社員の働く環境を守ろうとしているか。その違いではないでしょうか。

宮川氏:私どもアイネットのお客様においては、セキュリティ強化のニーズが背景にあり、取り組みの後押しをしているように思います。たとえば物理デバイスを持ち歩く、店舗に設置するといったケースにおけるリスクを減らしたいというご相談がよくあります。また、「コロナ禍をきっかけにDaaSを導入した結果、期待する効果が十分得られたのでもっと増やしたい」という中小企業のお客様もいらっしゃいます。

遠藤氏:ITにかけるコストをどう考えているかだと思います。「外部に払う支出額が大きい=負担が大きい」という視点だけでは、それこそ気合いで乗り切ってしまおうという発想も生まれます。しかし、業務効率化や保守・拡張のコスト、セキュリティリスクまで勘案して計算すれば、納得していただけるケースもあります。

もちろん、お客様毎にご予算確保のタイミングもありますから、ツールを導入していないお客様の意識が常に低いわけではありません。いずれにせよ、事情に応じたあるべき姿をご提案していくのが、我々ITベンダーの役割だと思っています。

羽石氏:「デスクトップ環境」は、日本企業にとって最も重要な仕事道具の1つです。ITをコストとして見るだけでなく、得られるプロフィットの比較も含めて判断していただければ、納得感が違うと思います。実際に定量化するのは難しいかもしれませんが……。

  • イデア・コンサルティング株式会社 クラウド・プラットフォーム・サービスグループ ディレクター 羽石 博之 氏

    イデア・コンサルティング株式会社
    クラウド・プラットフォーム・サービスグループ
    ディレクター
    羽石 博之 氏

──近年、「どんなに気をつけても事故は起きてしまう」という考えを前提にしたゼロトラストが発展しつつあります。セキュリティのために制限を重くするのではなく、「業務効率化のためにゼロトラスト化していこう」という視点があっても良いと考えているのですが、皆さんはどう思われますか。(神野氏)

遠藤氏:NTTデータでは、どこでも働ける環境を実現しています。資料作成の途中で帰宅し続きを自宅でおこなう場合も、自宅からVDI/DaaSへ接続すれば会社と同じデスクトップが表示され、即、作業を続けられます。ファイルはローカルPCへの保存は不要で、ファイルサーバー上のマスタファイルを編集することができるので、非常に効率的だと感じています。

弊社の場合は、東日本大震災の頃から「家でも働けるようにしたい」という声が大きくなり、2015年からVDI*3が国内5万人に展開されました。ネットワークに繋がっていないと作業ができないという課題もありますが、課題の克服も含めて今はゼロトラスト化を進めていく過渡期だと思っています。

*3 VDI(Virtual Desktop Infrastructure):サーバー上にあるデスクトップ環境を仮想化し、遠隔地にあるユーザーのクライアント端末に転送して利用する仕組み

宮川氏:「育児や病気療養で長期間休まざるを得ない。でも働きたい」という社員の希望を叶えるために、制度を変え、仕組みを入れて、リモートワークを可能にしたお客様がいらっしゃいます。社員の働く意欲に応え、幸福度を高める取り組みとして、素晴らしいと思っています。

また、業務効率化の対象は組織全体ですが、特に情シスの負担は甚大で、一人や少人数で管理と運用にたずさわっている担当者が多くいらっしゃいます。デスクトップ環境をDaaSに切り替えていくことは、「運用側の体力」を確保し、やるべき仕事に専念できるという効果もあると思います。

  • 株式会社アイネット ITMS本部 ITソリューション事業部 プロダクトマーケティング部 部長 宮川 佳子 氏

    株式会社アイネット
    ITMS本部 ITソリューション事業部 プロダクトマーケティング部
    部長
    宮川 佳子 氏

日本における仮想デスクトップのこれから

──VDIは日本ではメジャーですが、米国ではコールセンターや金融機関などで採用が進んでいるものの、日本と比較すると一般ユーザーでの利用はそれほど多くない感覚です。そもそも会社に居ることが前提ではなく、スマホやタブレットでブラウザからSaaSサービスを使えば働くことができるからです。日本の今後はどのようになるとお考えになりますか。仮想デスクトップが不必要となる日は来るのでしょうか。(神野氏)

遠藤氏:日本でもオンプレミスのアプリは減少傾向にあり、SaaSへの移行が進んでいます。企業システムは、企業規模によらず欧米のようにクラウド活用が中心となっていく可能性が高く、特に大企業においては、向こう数年はゼロトラスト化が進むでしょう。

一部バズワード化している「ゼロトラスト」ですが、国内においては定義や構成するテクノロジー要素などの認知、定着はまだまだです。単体導入ではその効果は限定的で、既存のVDI含めて自社にとってどのようなインフラロードマップを描けるかがポイントになると考えています。

羽石氏:物理的にせよ仮想的にせよ、デスクトップを使う文化はなかなかすぐには変えられないと思います。「デスクトップ環境をどうマネジメントしていくか」という視点は、日本での働き方を考えるうえで、今後も中心となるでしょう。

「人材確保」という付加価値

──最後に、これからのデジタルワークプレイスに対して、企業はどのような考えを持つべきなのか。読者の方に向けたメッセージをお願いします。(神野氏)

遠藤氏:コロナ禍をきっかけに、働き方がものすごく変わってきています。今後10年くらいでZ世代が社内のボリュームゾーンになると考えると、デジタルネイティブが会社の仕組みを変えていくことになるでしょう。そうすると、一般的に我々の世代が考えつかない、まったく別次元の働き方が現れてくるはずです。

それまでに我々世代が、優秀な人を確保し、離職を防ぐような仕組み作りをしなければなりません。つまり、「従業員目線での利便性とセキュリティの両立」を追求することが重要です。それは、自社のOA環境と世界標準の差を埋めていくことにつながるかもしれません。我々は、その実現のため試行錯誤しながらも推進していく役割を担っているものと思います。

宮川氏:ご利用される方々が、"幸せに働ける環境"を提供することが使命だと思っています。先日、面接官として学生の方々とお話しする機会があったのですが、「私が入ったらどんな働き方ができるんですか?」「どのようにリモートワークをやっているんですか?」と、多くの方からワークプレイスやワークスタイルに関するとても具体的な質問を受けました。これからの時代、働く環境づくりを軽視すると、人材確保で痛い目に遭うかもしれません。今後、働く環境について検討されるなかで、ITに関する部分は事業者目線の説明だと分かりにくいことも多いため、わかりやすく情報提供してお力添えできればと思います。

羽石氏:我々イデア・コンサルティングはDaaSを提供していますが、お客様の環境をすべてDaaSにすべきだとは思っていません。お客様のやりたいこと、課題に対して、どのようにサービスを使い分けていくか、考えて提案することをなによりも大切にします。そしてサービスは導入したら終わりではなく、管理者の運用が始まります。想定通り使えていないのはなぜか、外部変化にどう対応していくのか、お客様とともに悩みながら、並走していければと思っています。

また、皆さんがおっしゃるように、"人材確保"という観点に立てば、今後は情シスが人事と連携して「リモートワークの仕組みがあること」をもっと打ち出していくべきではないでしょうか。ITには優秀な人を獲得するという付加価値もあるという事実に、どうか気づいていただきたいです。

──ありがとうございました。様々な課題をお持ちのエンドユーザーの皆様に対して、親身にアドバイスしてくれるパートナーの皆様がいることを、我々としても発信していきたいと思います。(神野氏)

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株式会社アイネット、イデア・コンサルティング株式会社、株式会社NTTデータの提供するソリューションの詳細は、VMware Cloudナレッジ内バリューパートナー紹介ページをご確認ください。

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