「ツールをうまく使いこなせない」「DXを推進しているが効果を感じない」「データが合わない/古くて使えない」「ダッシュボードから何を得ればよいのかわからない」「ツールの利用者が増えない」——こうした悩みを抱えてはいないだろうか。ツールを導入したのにもかかわらず、なぜ成果が上がらないのか。上げるためには何が足りていないのか。6月23-24日に開催されたTECH+ EXPO 2022 Summer for データ活用「データから導く次の一手」で、マイクロストラテジー・ジャパン シニア アカウントエグゼクティブ 秋光茂行氏は、実際に企業価値を高めた事例を交えながら、あるべきデータ活用の姿について解説した。

「DX」「データドリブン経営」「BI」を正しく理解する

データ活用を成功に導くためには、まず「DX」「データドリブン経営」「BI」といったキーワードの本質について正しく理解する必要がある。

秋光氏によると、DXとは「変革」。DX推進と銘打って各社さまざまな取り組みを行っているが、「実際には変革が行われているわけではなく、オプティマイゼーションを進行しているだけ。投資や変革は進んでいない」と秋光氏。マサチューセッツ工科大学のジョージ・ウエスターマン氏が「DX = ビジョン + テクノロジー + ディスラプション」と定義しているように、ある種の破壊が必要であると指摘する。

さらに、DXにおけるデータドリブン経営とは、「経営ビジョンに基づき、テクノロジーを駆使し、従来型の業務フロー、考え方、組織の垣根を超えて行うデータ駆動型のプロセス変革」といえる。そして、データドリブン経営を推し進めるうえで重要な要素が、BIである。秋光氏は、「そもそも『インテリジェンス』とは、各国の情報機関の組織名に使用されている言葉であることからわかるとおり、『組織』と捉えることができる。企業活動のなかから収集したものをデータ化して、インテリジェンスに変えていくためには、なぜその分析が重要なのかを明確にして、組織として活動しなければ機能しない」と説明する。

BI導入に失敗する4つの理由

これを踏まえて、秋光氏は、企業がBI導入に失敗してしまう理由を4つあげる。

まずは、動機が弱いという点。特に日本企業の場合、「BI = 可視化ツール」と捉えて「とりあえずデータを可視化すれば、何かインサイトを得られるかもしれない」とボトムアップで考えていく傾向にあるが、秋光氏によると、これこそが失敗のもとになるという。まずビジョンを設定し、それを達成するためにデータをどのように分析していくか、なぜこのデータが重要なのか、という発想で考えていく必要がある。

2つめは、組織。米国と比べると、日本企業は経営層のデジタルリテラシーが低く、CIOやCDOに任せっきりなケースが多く見られる。また、組織を壊して新しい組織をつくりあげていく必要があるのにもかかわらず、専門の組織を編成していない、またはそうした発想がない、データリテラシーを高める教育体制がないといった課題もある。

3つめはプロセス。現状の業務フローを単にデジタル化するだけではうまくいかない。目的に合わせて、プロセスも変革していく必要がある。

4つめは、効果測定。ビジネス課題に対して定量的なゴールを設定しておくことが重要だが、秋光氏によると、BI導入のゴールが設定されていない企業は多いという。ボトムアップ方式のゴール設定になっていたり、そもそも効果測定していなかったりするケースもみられる。

秋光氏は「この4つの要素について変革を起こしていかなければ、BIを導入しても大きな効果が得られない」と忠告したうえで、成功事例におけるパターンについて紹介した。

「まずは、現在の状態、現状を維持した場合の負の結果について整理する。そのうえで、あるべき姿、目指す姿は何か、結果として得られるポジティブな成果とは何かについて社内で合意形成されている必要がある。このギャップを埋めることがチャレンジになるが、チャレンジ達成に求められる能力は何か、定量的な測定基準を設けたうえで、どのように取り組むのか検討し、より良い成果となるよう証明方法を整理していくことで大きな効果が得られる」(秋光氏)

データをもとにした迅速な意思決定と従業員・顧客満足度の向上を実現

秋光氏は、成功事例として製薬大手ファイザーの取り組みを紹介した。同社では、創薬にかかるコスト・期間が増大し、グローバルでの競争が激化するなかで、継続的に収益を上げて顧客や従業員の満足度を高めなければ勝ち残っていけないという危機感を感じていた。

もともと、基幹システムにはSAPを導入し、グローバルで単一のインスタンスで運用。財務分析基盤にはSpotfireを採用していた。しかし、経営層に求められる情報が得られず、社内には3万以上のExcelファイルが乱立。Spotfireのレスポンスが遅かったり、集計に手作業が多くデータが一元管理されていなかったり、使えるデバイスが限定的だったりという状況で、社員のモチベーションも低下してしまっていた。

そこで、データの透明性維持とチーム全員による迅速な意思決定を目指し、組織能力のスキル向上、正確なデータ利用に向け、情報アクセスに対する制限を撤廃してスムーズな意思決定の仕組みの構築を試みた。

「クラウド上に情報分析基盤を統合したことで、グローバルでのデータ共有のスピードが向上。従来データ集計には2カ月ほど掛かっていたが、MicroStrategyのソリューション導入によって、タブレットを使ってほぼリアルタイムで、デバイス・場所を問わず必要な情報が得られるようになった。また、お客様の社内に専門組織を構築し、エンドユーザーのサポートを行える体制を整えた。90%以上のアダブションで、7500名以上のユーザーが利用している」(秋光氏)

変革は、経営層を巻き込み、まずはデータの価値を理解するところからスタート。社内へ展開する際にはユーザーのペルソナを理解し寄り添った形で業務理解を進めた。データはクラウドに集約。チャットボットや音声アシスタントと連携して操作性を高めた。SNSなどで市場の声を受け入れて創薬につなげていく体制もつくっていった。結果として、従業員・患者・顧客の満足度向上にも大きく貢献した形となる。

 まずは現状把握とペルソナ設定から

BI導入をどこからはじめるべきかという問いに対し秋光氏は、「使うのは人なので、人がどのように使うかを理解することが重要」と語る。導入時のワークショップは、ユーザーのペルソナを理解したうえで、現状の業務内容やフロー、そこにおける課題をジャーニーマッピングで整理するところからスタートするという。

こうして現状(As-Is)を整理したうえで、あるべき姿(To-Be)を定義していく流れになる。秋光氏は、あるべき姿の考え方として「たとえば、手作業があることにより意思決定に時間が掛かっている、正確にできていないことが課題だとしたら、ソリューション導入によって必要な場所・必要なデバイスでリアルタイムにデータへアクセスして適切な意思決定ができるようにすることがあるべき姿となりえる」と説明する。マイクロストラテジー・ジャパンは、ここをベンダーとして支援しているという形だ。

「当社では、お客さまの現状を整理したうえで課題・優先順位を把握し、そこに必要なアウトプットをつくりあげていくためのご支援を行っている」(秋光氏)

BI導入や運用で悩みを抱えている場合は、ぜひ一度マイクロストラテジー・ジャパンへ相談してみてはいかがだろうか。