時代は『遠隔監視』から『映像管理』へ― 次世代のクラウド映像管理システム「ActivNet」とそれを支えるIIJのサービスとは

DXや働き方改革の推進に伴い、現場の映像を遠隔地から確認できるネットワークカメラの需要は高まっている。建築・建設現場をはじめ、屋内・屋外の施設や高速道路・鉄道など、さまざまなシーンで映像監視のニーズが急増している。カメラやクラウドの技術が進化した近年では、SIMカードとカメラを組み合わせ、クラウド上で映像を管理するアプローチも一般的なものとなった。とはいえ、ネットワークカメラの用途は導入現場によって異なり、汎用的なパッケージではすべてのニーズに対応することは困難だ。また、複数の現場にネットワークカメラを導入した企業では、管理負荷の増大やセキュリティ上の問題も表面化してきている。

顧客目線で開発されたクラウド映像管理システム「ActivNet」

こうした状況のなか、高い技術力を軸に、あらゆる業種のニーズに対応するネットワークカメラ・映像監視ソリューションを展開しているのが株式会社Jシステムだ。2008年に石川県で設立し、日本全国から海外まで視野に入れてビジネスを展開する同社では、膨大な台数のネットワークカメラをクラウド上で一元管理できる、クラウド映像監視システム「ActivNet（アクティブネット）」を開発。単なるネットワークカメラシステムではなく、映像管理システムの構築・運用までを支援するトータルソリューションとして、2018年より提供を開始している。Jシステム代表取締役の後山潤一氏は、ActivNetを開発した経緯をこう語る。

「Jシステムでは、複数の現場を1人で見回る現場監督の負担を軽減したいといった顧客のニーズに対応するため、設立当初からカメラとSIMカードを組み合わせた『Activカメラ』という製品を提供してきました。当時は静止画を撮影してクラウド上に保存するものだったのですが、技術の進化により動画対応の製品が増加したことで、動画を管理できる製品の開発に着手しました。それに伴い、これまでカメラ1台ごとにID/パスワードを設定して管理していた仕組みを見直し、1つのID/パスワードで数十台・数百台のカメラを一元管理できる『ActivNet』を構築しました」

株式会社Jシステム
代表取締役後山潤一氏

現場の施工管理を楽にするソリューションとして開発されたActivNetは、現場の状況把握や防犯といった用途で数多くの建設・建築現場で活用されており、さらに近年では高速道路や鉄道といった交通インフラや屋内設備の監視、獣害対策などでの利用も拡大している。後山氏は、ActivNetがさまざまなシーンで活用されている要因として、カスタマイズ性の高さを挙げる。

「ActivNetは、各種センサーやAIを連動させることで、より多様な顧客のニーズに対応できます。たとえば温湿度センサーなどの気象観測システムと組み合わせて熱中症対策を行ったり、AIを活用し交通状況や積雪状況をリアルタイムで分析したりといったことも容易に実現できます。また、使用するカメラを限定していないのも特徴で、弊社が提供するActivカメラだけでなく、すでに導入している監視カメラもONVIFに対応していればActivNet上で一元管理できます。既存の環境を無駄にせず、効率的な映像管理・活用を行えるのは、他のソリューションにはない強みといえます」

さらにActivNetでは、企業ロゴやイメージカラーを取り入れた外観のカスタマイズや、完全オリジナルシステムとしての提供も可能だ。また、冒頭で述べたセキュリティ上の懸念を払拭する機能も備えており、セキュアな認証システムや、アカウントに紐付く閲覧権限の設定、さらにWAFやIDSといった不正アクセスを防ぐための機能も提供。Azure AD連携によるSSO（シングルサインオン）にも対応しており、企業のセキュリティ要件に合わせたカスタマイズが可能となっている。

ActiveNet画面イメージ（マルチビュアー）
同時にカメラ全台を１ページで表示可能

ActiveNet画面イメージ（シングル画面）
タイムラインで、見たいところを簡単に再生できる

IIJモバイルサービス＋IIJ GIOを採用し、セキュアで柔軟性の高いシステムを実現

高いカスタマイズ性を備え、AIなど最新の技術トレンドも容易に取り込めるクラウド映像監視システムとして注目されるActivNet。このシステムを支えているのがIIJの提供するモバイル通信サービスとクラウドサービス（IaaS）である。

リアルタイムの動画データをクラウド上にアップするためには、安定した通信環境は不可欠だ。特に建設現場や高速道路といった有線ネットワークの利用が困難な環境では、モバイル通信サービスの選択が重要な意味を持つ。そこでJシステムが採用したのは、IIJの法人向けモバイル通信サービス「IIJモバイルサービス/タイプI」。NTTドコモの回線を利用しており、用途に合わせたプランを選択できる柔軟性が採用の決め手になったと後山氏は語る。

「ActivNetのモバイル通信サービスを選択する際に重視したのは第一に『品質』、次に『コスト』です。5社のサービスを比較検討し、品質とコストのバランスに優れたIIJモバイルサービス/タイプIを採用しました。このサービスは高品質なNTTドコモの回線を利用できるだけでなく、多彩なプランを選択できるのが大きな魅力です。ネットワークカメラでは主に上り（アップロード）回線を利用するため、上り回線に特化したSIMを提供してもらうことでランニングコストを抑え、高品質と低価格を両立させることに成功しています。また、何千枚、何万枚のSIMを利用したいという大手企業のニーズに応えてくれる、IIJの企業としての実績と信頼性も採用を決めた要因です」

さらにActivNetのシステムを構築するクラウドサービスには、IIJの提供するオリジナルIaaSである「IIJ GIO インフラストラクチャーP2」を採用（AWSを選択することも可能）。モバイル通信とクラウド基盤をIIJのサービスに統一することで、コストをかけずに企業のニーズに合わせたカスタマイズを実現している。前述したAzure AD連携もJシステムとIIJの協業で開発されており、両社の密接な連携はサービス価値の向上に寄与しているという。

「大手企業の多くは自社システムを構築しており、そこからカメラの映像データを確認したいといった要望も少なくありません。これに対応するAzure AD Connect 連携機能は、弊社とIIJが協業開発したものです。閉域網接続やWAFなどセキュリティを担保する機能も豊富で、大規模運用にも対応する純国産のクラウドサービスであるIIJ GIOを採用したことで、全国の拠点や現場でActivNetを活用したいといったニーズに応えることができています」

カメラのラインナップを拡充し、映像データの利活用促進をグローバルに展開

現在は、約8,700台のカメラがActivNet上に登録されており、建築・建設現場の遠隔臨場だけでなく、高速道路における交通状況や積雪状況の監視や電力会社における設備稼働状況の監視など利用シーンは拡大している。小型カメラを搭載した自動車を走らせて積雪状況をリアルタイムに共有し、除雪車の稼働タイミングを判断するなど、常設カメラでは対応できない領域での活用も進んでいると後山氏。「ActivNetでは、エッジ（カメラ）側ではなく、クラウド上でAIによる分析が行えるため、AI活用のニーズに柔軟かつ迅速に対応できます。利用できるカメラも幅広く、企業からの『このような使い方がしたい』という相談に応えられます」と力を込める。

またJシステムでは、実績豊富で認知度も高く、全国の企業に信頼されているIIJのブランドと営業力にも期待している。実際、ネットワークカメラの導入を検討している企業にIIJがアプローチし、ActivNetの導入につながったという事例も増えており、IIJの実績・信頼性とJシステムの技術力による相乗効果が現れてきているという。

今後はActivカメラのバリエーションを増やし、より多様なシーンでActivNetを展開していく予定と後山氏。バッテリ駆動型のコンパクトなウェアラブルカメラや、実際の作業内容をリアルタイムで共有できるスマートグラスタイプのカメラなど、現場に常設するカメラ以外のラインナップも拡充していきたいと展望を語る。

「国土交通省を中心に建設現場の遠隔臨場が推進されている状況を鑑みても、ネットワークカメラの需要は今後も減ることはないはずです。単に取得した映像を確認するだけの『遠隔監視』から、AIなどを用いて映像データを管理・活用する『映像管理』へのシフトが加速していくなか、IIJのモバイル通信とクラウドサービスを活用したトータルサービスであるActivNetの価値も高まっていくと考えています。昨今では、海外からの問い合わせも増えてきており、日本国内のみならずグローバルでの展開も視野に入れています。その意味でも、IIJにはパートナーシップの強化と、高品質なサービス・技術の継続的な提供を期待しています」

創業以来、一貫して顧客の要望に応えるサービスを提供し続けているJシステムと、高品質で信頼性の高いモバイル通信／クラウドサービスを展開するIIJの連携により生まれるソリューションには、今後も注視していく必要がありそうだ。