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テクノロジーの進化に合わせて市場のニーズが多様化したことで、現代の製品・サービスは複雑化を遂げている。製造業が、変化する顧客ニーズに応えるために、取り組むべきデジタルトランスフォーメーション(DX)とは何なのか。2022年4月27日に開催されたアラスジャパン合同会社主催のWebセミナー「新時代の顧客ロイヤリティ戦略 ~ 製品競争力の強化に導く3つの柱 ~」では、DX時代の製造業が抱える課題を洗い出し、「システム思考」「プラットフォーム戦略」「SaaS環境」といったキーワードから、顧客ロイヤリティを向上させるDXを実現するためのヒントを提供してくれた。本稿では、本セミナーで展開された2つのセッションについてレポートする。

国内・海外の先進事例から見えた、デジタル中心のビジネスを実践するための最適解

和泉氏

経済産業省 商務情報政策局・情報経済課
アーキテクチャ戦略企画室長 和泉 憲明氏

最初に登壇したのは、DXレポートの政策担当官でもある、経済産業省 商務情報政策局・情報経済課 アーキテクチャ戦略企画室長 和泉 憲明氏。「デジタル変革に向けた産業戦略とDX推進に関する政策展開」と題し、国内・海外におけるデジタル変革の最新動向について事例を交え解説した。

「日本におけるDX推進政策は新たなフェーズ、第2幕に入ったと考えています」と語る和泉氏。DXレポートにおいて「2025年の崖」というキーワードで危機感を醸成し、企業の内面と市場への圧力の両面から産業構造の変革を促したこれまでの取り組みを振り返り、国内産業でDX推進が進んでいない現状に改めて警鐘を鳴らす。

「DX推進指標やベンチマーキングで自己診断の仕組みを提供し、さらにデジタルガバナンスコードを策定してDX銘柄・DX認定といったDX推進の環境整備を進めてきました。ところが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、DXの推進がより一層強く求められるようになったにも関わらず、自己診断をしても次のアクションにつながらないなど、PoCだけで終わってしまうケースが多い」と現状を分析。(和泉氏)

こうした状況を受け、DX推進への具体的なアクションを起こさせるためには、デジタル産業の創出に向けた方向性を明確にすべきと考えた経済産業省では、「DX推進のための変革の仕組み」と「デジタル産業宣言とその運用」を中心としてDXレポート2.2をまとめているという。デジタル産業宣言は「ビジョン駆動」「価値重視」「オープンマインド」「継続的な挑戦」「経営者中心」の5つの柱で構成されると和泉氏。製造業の動向をメインに、DXの本質とソフトウェア技術者の関わり方について話を展開した。

「DX推進や、そのためのPoCで失敗しないためには、“デジタル中心”の基本コンセプトに基づいてデジタルインフラのアーキテクチャを設計していくことが重要です。たとえばフィジカルとサイバーを融合したSociety 5.0を社会実装する際、販売から製造・購買・決済など、さまざまなシステムが繋がり、データを交換する必要があります。そこをAPIで繋げればよいと考えるのは、単に紙ベースから電子媒体ベースへの移行にとどまり、システム思考にはほど遠い。ヒト・モノ・空間などをデータ化するための情報規格を統一して、サイバーとフィジカルの間をプラットフォームで繋げて連携させることが、システム思考、プラットフォーム戦略といえます」(和泉氏)

デジタル中心のビジネスを考えるうえで障害になるのは、“思い込みや過去の成功体験”と和泉氏。その一例としてカーシェアビジネスにおける事例を紹介する。「カーシェア分野で成功している企業によると、毎年の利用者の約半数が走行距離0kmで返却しているといいます。これは手元のデータや、これまでの経験では説明できない現象です。そこで、アンケート調査を実施したところ、深夜のホテル代わりやモバイルオフィス、コインロッカー的な使い方をしていることがわかり、サービス改善のインプットにしたそうです」と話した和泉氏は、事業者側が想定していない用途で利用されていることに着目。これからのサービスの作り方として、最終的なプロダクトを市場に投入するために何年も時間をかけるより、ニーズがあればすぐに提供し、最終サービスとして完成するまでに何度も市場と対話することが重要と解説する。

「これが成功企業のビジネスモデルであり、結果的にアジャイル開発と同じスキームになっています」(和泉氏)

セッションの後半では、データとデジタル技術が製造業に与えるインパクト、クラウド化とITインフラの変革を理解するための考え方について話が展開した。

「大量生産の孫請け企業だった町工場が、DXにより職人の作業をデータ化し、24時間無人加工で高品質・超短納期を実現。製作数1~2個の多品種単品生産へとシフトした結果、利益率は20%を超え、NASAからの発注を受けるようなグローバル企業に変革しました。この事例からもわかるように、製造業においては、市場のニーズに応じて迅速に新製品を開発・製造できることに競争力の源泉がシフトしています」(和泉氏)

和泉氏は、製造業をデジタル中心の産業構造へと変革するためには、経営者のIT投資に対するビジョンと、技術者の意識を変えていく必要があると話を展開。単に従来の業務をデジタルに置き換えるのではなく、デジタルを中心にプロセスを設計し、ヒトの役割を再定義していくことが重要と力を込める。

「製造業はデジタル中心のエコシステム型構造へと移行し、少ないパイを奪い合うのではなく、新たな体験・価値を創造してグローバルにスケールする世界を実現していく必要があります。コロナ禍への対応で自社が成長できたと錯覚している今こそ、デジタル中心企業への変革に向けてIT投資の見直しを図るときではないでしょうか」(和泉氏)

SaaS化=サービス化されたPLMが、デジタルエンジニアリングを成功へと導く

2つ目のセッションでは、アラスジャパン合同会社 社長 久次 昌彦氏が登壇。「なぜ今PLMにSaaS化の波が起こっているのか? ~これからのデジタルエンジニアリングを読み解く5つのポイント~」をテーマに、製造業におけるDXの最新動向と、そのなかで重要な役割を担うSaaS型PLMについて解説した。

「リモートワークの浸透によって経営者やIT管理者の意識も変わり、社内の基幹システムに社外からアクセスすることのハードルが低くなってきています。これにより、あらゆる業界にクラウド化の波が押し寄せており、最近では銀行の勘定系システムもクラウド化されるケースが出てきています」(久次氏)

久次氏

アラスジャパン合同会社 社長 久次 昌彦氏

クラウドサービスの1つの形態で、ソフトウェアをサービスとして利用する「SaaS(Software as a Service)」に注目する久次氏。DXを実現するうえでは、サービス化を見据えた「トランスフォーメーション」に重きを置いた取り組みが重要と話を展開する。 また、“モノづくり”におけるすべての工程をつなげるPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)にSaaS化の波が来ていることに言及。製造業におけるDXのアプローチの1つとなる「デジタルエンジニアリング」のポイントとして「システム思考」「スモールスタート」「持続的変革」「事業視点」「手の内化」の5つを挙げ、これらを実現することでPLMのSaaS化、すなわちサービス化の効果が享受できると語る。

「すべての問題はつながっているため、局所的な問題解決のアプローチではなく、大きなシステム全体の流れのなかで問題解決に取り組んでいく必要があり、これを「システム思考」と呼びます」(久次氏)

システム思考を意識しないままデジタルエンジニアリングを実践すると、部門内にデータがサイロ化された状態で管理され、情報の分断化が起こると久次氏。分断化を解消しない限り“モノづくり”の効率化は困難と指摘し、ライフサイクル全体のデータ、さらにヒトの流れも関連付けて管理する「デジタルスレッド」の考え方が重要と解説する。

「デジタルスレッドの実現には、“モノづくり”のすべての工程で利用できる共通のプラットフォームが必要で、この役割を担うのがPLMです。PLMがSaaS化することでスケーラビリティが向上し、スモールスタートが可能になります。特にコンテナ化して提供されるPLMならば開発した機能のCI/CDサイクルを早く回すことが可能になり、DevOpsを繰り返して適用範囲を広げていくのも容易になります」(久次氏)

さらに久次氏は、スモールスタートの実現にはローコードのツールだけでなくDevOpsを繰り返すシステム構築の方法論との両輪で取り組む必要があると語り、ローコード開発の仕組みとスモールスタートの手法を組み合わせて実現する方法論を解説。実現するソリューションとして、DevOps環境をSaaSサービスとして提供するアラスジャパンのマネージドクラウドサービス「Aras Enterprise SaaS」を挙げた。

3つ目のポイントとなる「持続的変革」については、“レガシー”の定義として、業務変革を妨げるITはたとえ新規に導入したシステムでもレガシーとして認識する必要があると警鐘を鳴らし、B2BのシステムにおいてもスマホアプリやWebアプリのように絶え間なく進化できるようにアップグレードが容易にできるシステムにする必要があることに言及。さらに4つ目のポイント「事業視点」では、SaaS化によって、PLMを設備投資という視点からサービスとして活用する事業運営の方向に変えられると説明し、5つ目の「手の内化」では重要な技術やノウハウを外部調達する際、発注元が内容を理解し主導権を持って企画・開発を行うことの重要性を訴えた。

「PLMのクラウド化を検討する場合、PLMシステムを単にクラウド上に構築するのではなく、コンテナ対応した形でシステムを構築しないとクラウド化するメリットを十分に享受できません。また、SaaS型のPLMでは、サブスクリプションにハードウェア費用、ソフトウェア費用、ITシステムの運用管理費用なども含まれており、運用・管理の負荷を大幅に軽減することが可能。従来のオンプレミスのシステムと比較し、約40%のコスト削減が期待でき、IT投資をビジネスの領域に注ぎ込むことができるようになります」(久次氏)

  • 事業視点:SaaS化によるコスト削減ポイント

講演の最後で久次氏は、製造業におけるDXの流れを象徴するキーワードとして「スマート&コネクティッドプロダクト」「マシンラーニングとAI」「クラウドとエッジテクノロジー」を提示。6月9日~10日にリアルイベントして開催する「ACE 2022 Japan」では、DX によってもたらされる持続的変革についての詳細を解説すると語り、本セミナーを締めくくった。


2日間渡り開催する「ACE 2022 Japan」は、“加速するデジタルスレッドの価値~Transform with SaaS~”をテーマとし、DX によってもたらされる持続的変革に、どのように PLM システムが対応できるのかを軸に、PLM の最新トレンドをご紹介する大型イベントだ。 6/10(金)10:35~11:20には和泉氏と久次氏による「SaaS 化がもたらす日本の製造業が取り組むべきデジタライゼーションとは」と題した特別対談が予定されている。今回のWebセミナーで語りきれなかった具体的なエピソードをはじめ、Webセミナーの参加者から寄せられた質問に回答する。ぜひ多くの方にご視聴いただきたい。

【第二部 6月9日、10日開催のアフターレポート公開!】和泉氏と久次氏による、本セミナーの講演をさらに深掘りした対談セッションを6月9日、10日の2日間にわたりANAインターコンチネンタルホテル東京にて開催。「PoC貧乏」や「DXレポート2.2」についての話をはじめ、DXで新しいビジネスを生み出すために企業がすべきことなど、事例を交えつつ語った。企業がDX推進へ向けさらなる一歩を踏み出すきっかけとなるだろう。
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[PR]提供:アラスジャパン