分析技術や基盤の進化により、地理データを総合的に管理・分析できるGIS(geographic information system:地理情報システム)と人流データを掛け合わせることで、人々の行動をピンポイントに把握・予測できるようになってきている。
12月9日-10日に開催されたTECH+ EXPO 2021 Winter for データ活用「データが裏づける変革の礎」では、NTTデータ デジタルビジネスソリューション事業部 地図情報ビジネス担当 課長 高木弘和氏と、ヤマト運輸 EC事業本部 ゼネラルマネージャー 秦野芳宏氏が、NTTデータの人流分析・予測技術を活用したDX事例について紹介した。
人流データ×GIS活用の最新動向
NTTデータが提供する「BizXaaS MaP」は、地図データをはじめとする豊富な位置情報コンテンツを活用できる地図配信サービス。実績豊富なAPIを用いたシステム連携が可能となっており、金融や不動産業界のエリアマーケティング、スマートシティでの人流可視化分析など、さまざまな業界・業種での利用が進む。
従来、物件管理、顧客管理といったフィールドサービスやエリアマーケティングなどで利用されるGISの地図データは、過去の情報に基づく静的データがメインだったが、データ処理技術が向上したことにより、近年では動的コンテンツも扱えるようになってきている。また、それをもとにした高度な分析も可能になりつつある。
NTTドコモが提供する人口統計データ「モバイル空間統計」が、そのわかりやすい例だ。NTTドコモと契約する約8000万台の端末によるリアルタイムの位置情報をもとに、人口分布やその増減、エリアの特徴などを分析することができる。
高木氏によると、こうしたGISを用いた人流分析における昨今の傾向としては、特に「ピンポイントであること」「リアルタイムであること」「予測可能であること」の3点が挙げられるという。
メッシュ単位でのマクロ分析や、相対的な数値、過去時点でのデータを用いた分析は従来より可能だったが、最新の人流分析では、建物単位や道路単位といったピンポイントでの分析ができるようになっている。
「スマートフォンや車両の位置情報など複数のインプットデータを横断的に収集・分析することで、対象が施設に滞在している人なのか、施設に向かって移動している人なのか、その人たちが道路上をどのような交通手段で移動しているかということまでわかる。さらに、モバイル空間統計と掛け合わせることで、建物単位や道路単位で人数の絶対数が把握できる」(高木氏)
また、これらのデータは基盤同士を連携することで、リアルタイムで取得・分析することも可能となってきている。高木氏は「ビッグデータ処理基盤や技術の向上によって、数分でデータ処理できるレベルに改善してきている。モバイル空間統計では現在、1時間前の現況を分析できるようにまでなっている」と説明する。
さらに、過去の人流データや個別施設の実績データをAIに学習させることで、高精度な人流予測モデルを構築し、将来予測に活用することも可能となっている。
人流データ×GIS活用の幅広いユースケース
続いて高木氏は、GISを用いた人流分析のユースケースを紹介した。
まずは、コンビニやドラックストアのような小売店における出店場所選びと店舗運営の最適化の例だ。ある地点に店舗を出す際、従来は500m単位のメッシュと、人手でカウントした通行量をもとに出店の可否を判断していたというが、GISに人流データを掛け合わせれば、候補物件の前にどれだけの人が通っているかを詳細に把握することができるため、より高精度かつ迅速な判断が可能になる。
また、商品の仕入れ量について、過去の実績に基づいた判断を行うと、イレギュラーな事態に対応できず、機会損失や廃棄につながってしまうケースも多い。データを活用して周辺の人流に応じた商品発注を行えば、こうした課題を解決できるだけでなく、フードロスなどの社会課題解決にも貢献できる。
また、GIS×人流データを活用すれば、どの場所にどのような属性の人がいるのかを時間帯ごとに把握できるため、たとえば大型ショッピングセンターでは、販促施策や実行タイミングの判断に、まちづくりでは、そのエリアに足りない施設が何かを分析し、魅力あるまちづくりに向けた施策につなげていくといったこともできる。このほかにも、混雑緩和や防災などといった多くのユースケースが考えられる。
高木氏は「我々NTTデータは、BizXaaS MaPを利用して、企業のDXを支援していきたい」と聴講者に対してメッセージを送り、講演を締めくくった。
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